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ステラリリィに願いを込めて〜転生したら元に戻ってと悲しまれています〜  作者: みさくらみかん


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6話 お庭探検とルバスベリー

本日2話目です

 夜までかかってシェリルちゃんが貸してくれた子供向けのお作法教本を何とか頭に詰め込んだ、次の日の朝。 

 

 すこしぼんやりする頭でメアリたちが用意してくれた朝食をいただく。メニューは鳥と野菜がくたくたに煮込まれたスープと何も塗っていないパン、飾り切りされたフルーツだった。

 お、お肉だ……おいしそう……。

 

「ええっと、スープは……具を一口大にスプーンで切って、手前から奥にすくう……」

 

 いやこれ難しいな? 音を立てずにって難易度高くない?

 

 スープにしばらく四苦八苦していると、見かねたようでメアリがそっと声をかけてきた。

 

「アンジェリカお嬢様、今は誰も見ておりませんから、お作法の練習はこれくらいにしてご自由にお召し上がりになられてもよろしいかと」

 

「あはは……ありがとう、メアリ。でも大丈夫、シェリルちゃんに頑張るって約束したからね。たくさん練習しないとうまくなれないし。ちょっとみっともないと思うけど、見守っていてくれると嬉しいな」

「かしこまりました。差し出がましいことを申しました」

 

 それからメアリは、私が時間をかけて食事するのを優しく見守っていてくれた。

 とはいえ、パンは柔らかいから一口大にちぎるのもそんなに難しくないし、フルーツはナイフとフォークで切るからスープよりは難易度が低い。スープだけが特別難しいのだ……。


 お作法の練習をしながらだから味に集中できなかったけど、スープは特に体に栄養が染み渡る感じがして本当に美味しかった。ほろほろの柔らかいお肉……甘さが最大限に引き出された野菜たち……。お鍋ごと抱え込んで食べたいくらいだ。そんなことしたらシェリルちゃんにみっともないって怒られちゃうかな? いや、お行儀悪すぎて倒れちゃうかも。


 食後にメアリが淹れてくれる紅茶も絶品だ。今日もまた、シェリルちゃんに分けてもらったフラガリアの紅茶を淹れてもらった。

 さっき食べたフルーツの中に赤いベリーがあったんだけど、それがフラガリアらしい。だからまた飲みたくなったんだよね。


 おいしい紅茶でほっこりしていると、誰かが訪ねてきたようだ。メアリが扉の外に出て、少しすると花を抱えて帰ってきた。黄色のふわふわがたくさんついたかわいい花だ。ミモザ的な花かな?

 

「昨日お嬢様がお花をお気に召されたということで、庭師長が今日咲いた花を届けに来ました」

「わあ、すてき! ありがとうって伝えて……ん? お礼は言わないほうがいい……のかな?」

「そうですねぇ、わざわざお礼を伝えるとなると庭師長も驚いてしまうかもしれませんね。それでしたら、私の方からお嬢様は今日のお花も気に入ったと伝えておきますね。――もしお庭を散策されている時に庭師長に会ったら、その時にひと言ねぎらうと庭師長も喜ぶかと」

 

 うんうん。そうしよう。会えるといいな。

 メアリは昨日の淡いピンクと白のフィーリアの花と一緒に黄色いお花も花瓶に挿してくれた。なんだか春っぽさが増していい感じだ。

 外からは春の柔らかな光が差している。今日もお散歩日和だね。

 

「シェリル様は本日も14時頃にお会いできたらとのことですが、いかがいたしましょう?」

「うん、それで大丈夫。それまではまた今日もお散歩かな。お庭、もう少し見てみたいんだよね」

「かしこまりました。準備いたしますね」


 

* * * * * * *

 

 

 メアリが日傘を差してくれて、ゆっくりとお庭を散策する。

 昨日見た公爵領のお花畑の先はほとんど見えない。お花畑の背後に背の高い生け垣があるのだ。その中央はトンネルのようになっていて、そこから奥に進むのだろう。

 お花畑をぐるっと囲うように小道が作られているので、ゆっくりと花を楽しみながらトンネルへと向かう。

 

 トンネルを抜けると中央には噴水があった。噴き上がった水が春の光を反射してきらきら輝いている。その周りを幾何学模様に刈り込まれた生け垣が囲っていた。


「この生け垣のお花は夏近くになると咲くのですよ。もう少し先のお楽しみですねぇ」

「生け垣だけでも、丁寧に刈り込まれていて綺麗だけど……花も咲いたらもっと綺麗だろうねぇ」


 噴水の奥にもまだアーチがある。うーん、体力的に行けるかな? ちょっと頑張って行ってみよう。

 アーチに近づくと、見覚えのある植物だった。懐かしいような、なんだか胸がざわめく。

 

「ねぇ、メアリ。これってルバスベリーじゃない?」

「ええ、よくご存じですね。ここで鑑賞も兼ねて栽培しているのだそうですよ。毎年たくさん採れるので使用人にも分けていただけて、楽しみにしている人も多いのです」


 おいしいもんねぇ。昔、手と口を真っ赤にしながらおなかいっぱい食べたな……。

 思わずそう返しそうになったけれど、今私はアンジーちゃんなのだと思い出して口をつぐんだ。

 

 今はまだようやく固い蕾ができた頃だ。

 このアーチいっぱいに実がなるところを見てみたいな。でも、その頃にはこの体はアンジーちゃんに戻っているかな……?

 

 ルバスベリーのアーチをくぐると、その先はキッチンガーデンだった。お野菜たちが花壇に見栄え良く並べられて育てられている。今はまだ芽が出たくらいの物も多いけれど、葉物野菜やハーブたちは元気に葉を茂らせている。

 

「わあ、お野菜がいっぱいだ」

「今日のスープのお野菜もここで育てられた物ですよ」

「え、そうなんだ。とってもおいしかったよ」

「そう言っていただけると、庭師も料理人も喜ぶでしょう」

 

 キッチンガーデンはそこまで大きくないので、出される野菜全部をここで育てているわけではないのだろう。でも、おいしかったあの野菜たちを思い出すと、みずみずしい葉っぱがなんだか可愛く思えてきた。


 しばらく休憩がてら野菜を眺めていたけれど、ふと庭のさらに奥を見ると、木々に隠れるように小さな家がちらりと見えた。

 

「ねぇ、メアリ。あの家は?」

「ああ、あれは庭師長の家ですね。ここからは見えませんが小さな温室もございまして、そこでコンサバトリーに飾る前の貴重な植物の管理をしているのです。なのでここに特別に家が与えられているのですよ」

「へぇ、そうなんだ」

「コンサバトリーにも今度ご案内しますね。南の暖かい国のお花など、珍しいものがたくさんあるのですよ」

 

 コンサバトリーって聞いたことなかったけど、多分温室みたいな感じ? 明日のお散歩先はそこかな。


 それにしても、貴重な植物の管理をしてたり、お庭に特別にお家を作ってもらったり、庭師長ってすごいんだなぁ。どんな人なんだろう。私がお花を気に入ったのを知って次の日にも届けてくれるんだから、きっと優しい人なんだろうな。

 

 メアリにお庭の解説を受けながら少し休憩して回復した私は、またゆっくりと庭を散策して帰った。

 

 午後からはシェリル先生によるお作法のテストだ! がんばろう!

リアクション、ブクマ等ありがとうございます。

大変励みになります!

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