↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステラリリィに願いを込めて〜転生したら元に戻ってと悲しまれています〜  作者: みさくらみかん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/44

13話 新たな試練

 翌日、私は痛む足でよたよたと舞踏室に来た。動けないことはないけれど、ふくらはぎも太ももも足の先も全部少し動かすだけで痛む。

 

 メアリが今日はダンスレッスンをお休みされては、と気遣ってくれたけれど、休んでこれ以上ミリアーナさんを失望させてしまうのは怖かった。ミリアーナさんの期待よりも私の出来が悪いならせめて、出来ないなりに真面目に頑張っていると思われたかった。

 

「あ、あれ? おかあさま、がいらっしゃらない……」

「後ほど様子を見にいらっしゃるそうですよ」


 なるほどね……? まだ昨日のステップができてないだろうってことね。そのとおりです。

 

 昨日はメアリにおやすみを伝えてから寝室でこっそり練習する気だったけれど、疲れ果てていたせいか気がついたら寝てしまっていた。

 

 よく考えると、いつもはメアリとは寝室の扉の前でおやすみと言って別れるのに、昨日はベッドまでついてきて子供相手みたいに掛け布団をかけてくれた。メアリに全部ばれていて寝かしつけられたっぽい。メアリが部屋から出ていった記憶もないし、たぶんあっという間に眠りに落ちてしまったんだと思う……。


 ステップを踏んでいる間ずっと腕を上げているので、足ほどではないけれど腕も筋肉痛だ。

 足が痛くて思うように動かず、昨日よりもゆっくりとした速度でステップを踏む。優雅さを意識して、流れるように、波のように……。


 メアリにお昼にしましょうと告げられて、私は目をぱちくりさせた。ずいぶんと集中していたらしい。柔らかなタオルで汗を拭かれ、差し出された冷たい果実水でのどを潤す。そこではたと気づいて、メアリに話しかけた。

 

「おかあさま、いらっしゃらなかったわね……」

「あら。少し前に扉を開けてご覧になられていましたよ。お嬢様、集中なされていましたものねぇ」

「え!? そうだったん……そうだったの。努力は認めていただけたら嬉しいけれど……」

「きっと大丈夫ですよ」


 不安がる私に、メアリは優しく微笑んで励ましてくれた。

 

* * * * * * *

 

 

 自室に戻って昼食を食べていると、また多忙の合間を縫ってクロードさんが訪ねてきた。なにかやたらと大きくて辞書のように分厚い本を抱えた侍従さんも一緒だ。嫌な予感がするな……。

 

「食事中にすまないね。どうしてもこの時間帯にしか時間が作れなくてね……」

「いえ、おかまいなく。いつでも大丈夫です」

「ミリアーナから聞いたが、ダンスも頑張っているようだね。そんな中すまないけれど、これも覚えてくれるかい」

 

 侍従さんによって分厚い本が机の上にそっと置かれる。深い赤の革で装丁され、側面が金色に輝く、とても威圧感のある本だ。表紙には、二人の妖精とステラリリィの花が描かれた紋章と、『セスタリア王国貴族名鑑』というタイトルが金の線で書かれていた。

 

「我が国の貴族の名簿のようなものだよ。デビュタントの際にアンジーは王族席で貴族達から挨拶を受ける必要があるからね。セドリック殿下が手助けしてくれるだろうけれど、事前に彼らのことは知っていないとね」

「かしこまりました……。しっかり覚えますわ」

「じゃあ、よろしくね」

 

 クロードさんは疲れた顔に笑みを浮かべて立ち去っていった。

 

 扉が閉まった後、思わずため息をついてしまう。

 ダンスもまだまだでできるだけ時間を割いて練習しないといけないのに、こんな分厚い本の内容を覚える時間があるのかな……。寝る時間ないんじゃない……?

 

 実は中の字がめちゃくちゃ大きいとか! なんてほんのわずかな希望を持って本をめくってみたけれど、びっちりと小さな文字が隙間なく並んでいて、余計に絶望感が増すだけだった。

 

 その後再開した食事は、いつも通り豪華なはずなのに全然味がしなかった。


* * * * * * * 

 

 午後は貴族名鑑を覚えることになった。

 今日はシェリルちゃんがミリアーナさんに連れられてお出かけするらしく、私とのお茶会はなくなったので時間はたっぷりある。だから私はダンスの続きをしようと思っていたんだけど、メアリに足を少し休ませましょうと止められてしまったのだ。

 

 メアリが後ろで監視している中、書き物机に向かって貴族名鑑と対峙する。震える手で私は表紙を開いた。

 

 まず最初に乗っていたのは表紙と同じ、二人の妖精とステラリリィの花が描かれた紋章だ。セドリック殿下が見せてくれた紋章と同じ。妖精は母のセスタリアと娘のステラリリィかな。

 

 そして王様のお名前と即位した日。そして――建国から連なる王家の家系図に私はくらくらした。

 もうダメだ……。これを、何人分も覚える?? そんな無茶な……。

 

 アンジーちゃんなら図書室がお気に入りなくらいだし、難しい歴史書なんかも読んでたみたいだし、こんなのも楽しくするする覚えたのかもしれない。けれど私は遠野莉愛だ。アンジーちゃんの体を借りているけれど、中身は本なんてろくに読まない遠野莉愛なのだ。アンジーちゃんの脳みそを借りているはずなので私の体よりは物覚えがいいかもしれないけれど、それでも、拒否感嫌悪感が消えない……。


 メアリの視線を感じる。私がこの本に拒絶反応を示しているのを察されている気がする。いつもより視線が怖い。

 

 私は渋々ながら、覚えるために書き写すことにした。残念ながら一読するだけで覚えられる天才じゃないから、書いて書いて書いて覚えるしかないのだ……。これを全ページ? そんなぁ……。

とりあえず日曜日までは21時頃更新にします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。