霊魔盗争 ー後ー
村に押し寄せたゴーストの群れが俺たちせいだと悟った俺はその場で土下座を……。
「ごめんなさい!! うわ……ッ!?」
……しようとして片腕がなくてバランス崩して転んだ。
傍から見ればさぞ滑稽であろうが、今俺にそれを気にする精神的余裕はない。
(ゴロゴロ!!)
「うわっ!? 大丈夫なの!」
「大丈夫、ありがとう……」
「えーと、ごめんなさい……どういうことですか?」
「実は……」
イセットとイブンに助け起こされながらとくとくと、半端犬ゴブリンと戦った時にした状況や戦法について話す。
皆は話を聞き終えるとミーチェは顔に手をついて空を仰ぎ、イブンは微妙な顔で苦笑し、何故かメジャトは大爆笑していた。
「あれ、あの猪の時にだけした訳じゃなかったんですね……はぁ」
「まぁ、その……世の中そんなこともあるよ! 今挽回すればいいんだしね」
「はははあああははー!!ごふッ ふひー……。くく、本当に……ご、豪快ですねあなたって人は」
(ゴロゴロ~?)
なお、イセットは何が何だかさっぱりな様子で俺とミーチェたちの間オロオロ、ゴロゴロとしている。
多分俺がよく分からない理由で謝っているので一緒に謝ればいいのか、どうか迷ってるんだろう。
とにかくイセットを宥めて、片手で身体を支えて頭を下げ続ける。これで謝罪なるか分からないがそれでも精一杯続ける。
「本当にすみませんでした……イセットは大丈夫だからじっとてて俺が悪いんだし」
「……もういいですから頭を上げてください」
「でもあれらは俺たちは追って来た訳で。それにこんな……あれに襲われて間もない時期に」
「アベルが気にすることはないでしょ? 僕はあなたに恩返しもまだ出来てませんしね」
「ええ、私にもあなたは命の恩人ですから……お気になさらず」
……と、二人は言ってくれるもののそれでこの村全体掛かった迷惑が帳消しなるのでもない。
でもこのまま地に頭着いていても困らせるだけになりそうだ、だからって「はい、ありがとう」ってのもなぁ……うーむ、どうすれば。
「ふむ……。あなたがどーうしても、気になると言うのでしたら。まずこれとこれを……」
「……ん?」
「メジャト、また何を!」
そんな風に内心葛藤しているとメジャトが芝居かかった所作で大きめで袋と魔術陣びっしり大きな魔晶を取り出し手渡してくる。
言われるがままにそれらを受け取り、手元で凝視してもなんか魔力たっぷりなの以外には何なのさっぱりだ。
「えっと、これは?」
「それはですね……」
……そこでメジャトが手した物の説明は、俺たちが思わず顔を引き摺らせるに十二分なものだった。
♢ ♦ ♢
「よし、イセット準備はいいか?」
(ゴロゴロ~!)
手足を伸ばしたり、軽く振ったり回したりして身体を解し、これから行う激戦に備える。
「本当にやるの、正直、無茶だからやめた方が……」
「ありかとうイブン。でも、そういう訳にはいかない」
「村の皆に悪いんだったら。後でごめんなさいしたらいいじゃん私も付き合う……」
「それは当然やるし、他じゃなくて俺が自分でなにかしたいんだ。……気使ってもらったのに、ごめん」
「そっか……なら仕方ないね。よーし、お姉さんも人肌脱ぐとしますか!」
袖を捲り、ふんすと気合を入れるイブンだが……そういやば俺は彼女については未だ全然分かってない。
イセットとは仲良かったし悪い人ではないと思うけど、こんな華奢で女性がちゃんと戦えるんだろうか?
まぁ、VRだし外見も性別も強さには関係ないだろうが……それでもイブンが強いようには見えない。
「えっと……」
「ん? ああ、大丈夫大丈夫。これでも結構やる方だよ、私。証拠に道は作ってやるから突っ走って来なさい!」
が、そんな不安はイブンが自信満々にそう叫んだあとに霧散した。
頬を撫ぜる風が吹き細い糸が何か白い粉をばら撒きながら、味方を退かせたゴーストの群れに一直線に飛ぶ。
それはレールを敷くように等間隔に距離を置き、群れ中心まで伸び続ける漸く止まる。
糸を中心で風が吹き荒れて粉が更に拡散し、程良く広まったかと思えば――。
「弾けなさい!」
―― イブンが宣言すると同時に爆発した。
「す、ご……」
(ゴロゴロー!!)
気が緩んいたから足が震える、奥底から恐怖心がせり出そうとしたが何とか嚥下する。
そうしなきゃいけないほど、凄まじい威力と絶技。
糸の動きからして『操糸』じゃない感じた魔力からして使ったのは『風魔法』のみ、最後の火付けに関してはまるで原理が分からなかった。
もしかすると糸に何か細工があるかもだが、どっちしても凄い技なのは変わりない。
「もし、イブンと戦ってたら相当やばかったな……」
(ゴロゴロ……)
「なかなかやるでしょ、私。こういう範囲技は私の種族、灰人族の十八番だからね!」
灰人族……初期種族にあったなそういうの、確か灰で身体構成された火属性に適性が高いというかなり癖のありそうな……ぶっちゃけ色物種族だったはずだ。
それはいいとして、俺はともかくあんの爆炎の奇襲を受けたらイセットは……。
……いやいや、今はこんなこと考えると場合じゃないな。このまま考え込んでいたら折角イブンが開けた道が閉じてしまう。
「見通しよく道も開けたってことで。行くとするか、イセット!」
(ゴロゴロ~!)
イセットに一言掛けてから、地を思いっきり踏みしめゴーストの群れ中に駆け出す。
今俺が使えるスキルはMPに頼らないものだけで、状況的に使えそうなのは『素手』『走行』『抗魔』『抗魔』ぐらいなもの。
「次こそ統合や上位化に使いたかったけどなぁ……」
今丁度俺のSPは5ある。もったいないが逃げ道を断つという意味でそのスキルをリストから習得する。
《スキル『掏摸LV1』を習得しました》
……正直、文面からの印象とかもあってほんととりたくはなかったが、俺がこれからする事と『密偵』の補正から考えるとこれが最善手だ。
そうなくても欠けてるのに、これ以上に手を抜く余裕はないのだ。
「まずは、もらーい!」
「――――……ォ!?」
「はーい、もういっちょうッ!」
「――……ゥォ!?!」
遠目では靄で分かったなかった半端犬ゴブリンの姿をしたゴーストから米粒サイズのマナクリスタルを次々と抜き取っていく。
そのマナクリスタルをメジャトから貸し出された魔法の対しる耐久性、遮断性高い『隔魔袋』へと詰めて、また右手一杯なるまでゴーストのマナクリスタルを掻っ払い袋に詰めるを繰り返す。
「くぅッ?!」
(ゴロゴロ!?)
「いや、まだ平気だ……作戦を続行する」
その度に『呪詛』の状態異常が蓄積されていくがまだ耐えれる程度だ。
こんぐらい、イセットが『蛹化』したあの夜に比べたらどうってことない。
メジャト提案した作戦は今みたく”ゴーストの懐飛び込み無傷のマナクリスタルを回収する”と言うものであった。
実体が無い体にふわふわとマナクリスタルが浮いてあるゴーストならでは戦法……というより採取法である。
ゴーストの成功法は魔法での攻撃、だがそれだと魔力の影響を受けやすいマナクリスタルは変形してしまう可能性が高い……実体という防壁がないゴーストは特に。
こうすれば魔石は傷付かず、おまけにゴーストも弱体化して一石二鳥なのだが……ゴーストそれ自体が呪いの塊、そんなものを直接触れる当然『呪詛』の状態異常に陥る。
『呪詛』とは蓄積型の状態異常であり、一定以上の『呪詛』を受けると即死亡だ。
だから、その回復担当で俺との連携が一番なっているイセットが魔法薬っての糸でぶら下げて追従している。
それから暫くして前回の『呪詛』受けた感覚を反芻し、そろそろ危険域だと判断してイセットにポーションをかけてもらう。
体の奥から不快感がすぅ、と消え失せて解呪効果のある液体が皮膚に染みる。
「ふぅ、ありかと……今の状態で耐えれるのは、大体10体ぐらいが限界か」
(ゴロゴロ……)
「そうだな……俺も早く終わらせたいしノルマ達成したらさっさと死に戻ろう」
これだけ呟いた後に只管盗り盗り、盗り、盗り、盗り、また盗り続け……回復も間に合わずにHPが半分までいったところで遂にノルマである『隔魔袋』が満タンなった。
「よし、後は……あいつだけだ」
これを出来るだけ肌に密着する形で懐に仕舞い込み、一番威圧感を醸し出しているゴースト……多分俺が倒した半端犬ゴブリンのボスのゴーストへと急行する。
俺が内側で引っ掻き回しているのが聞いてるのかは知らないが、戦況は膠着状態から徐々に敵を押してきている。ここで頭役を潰せば一気に流れはこっちに傾く。
「ここが正念場だな。イセットも頼んだ!」
(ゴロゴロ!)
予め決めて合言葉に合わせてイセットが全力疾走している俺を勢い保ったまま糸で持ち上げて犬ゴブリンのゴーストに向かって投げ飛ばし至近距離に着地する。
「――――……グォォ!?!」
「うっぷ……おえェ……こい、つッ!!?」
「「「「――――――……オォ!」」」」
「「「――……ォ」」」「「――――……オァ?」」
それで懐に潜りこんだのは良かったが、やつもこれは流石にまずい思ったか近くあった仲間を呼び寄せて濃霧の壁を作る。くっそ、『呪詛』が一気に流れて来て……ここからもうちょっとで、届くのに。
えずき過ぎて裂けた食道から血が吐く、ゴーストの身体を成す白い靄から何とか見えたマナクリスタルに手を伸ばす。
「なめてんじゃ、ねぇ……ッ!!」
「「「「――――……ォ!?!?」」」」
得も言えない不快感と幻痛で今にも意識が飛びそうだが……まだ、まだこんなのじゃ俺は。
一歩進む。足の力が抜ける。よろける。その勢いも利用して更に踏み込む!
何度かよろよろと呪詛渦巻く霧中をつき進み、右手を伸ばし……。
「とっ……たッッ!!」
「――――――……ッッ?!?!!」
その小石サイズのマナクリスタルを素早く仕舞いながら、『隔魔袋』最初から入っていた最も大きな物体……魔術陣書かれた拳大の火属性マナクリスタルを取り出す。
腕を口元に持ってきて袖に仕込んだ専用の彫刻刀を咥えて、一直線にスクラッチした。
魔力が膨れ上がるのが掌から伝わる。
あまりの膨大な量に一瞬作戦も忘れ、偶然にも作戦通り本能に従って後方にそれを投げる放つ……
「――――――ッ!?!」
……即後、一瞬の爆発音を残し身体の感覚は消え失せた。
《魔装・闇猪影帳纏の効果が自動発動しました》
《一定以上の魔力吸収により封印された能力が一部開放されます》
《現在能力は『影纏』『影潜』『影操』の3つまで開放されました》
《未開放能力『**』はまだ開放するための魔力が足りません》
《未開放能力『****』はまだ開放するための条件を満たしておりません》
《緊急の上位命令コードを確認、認証します…………完了しました》
《上位命令コードの指示により魔装・闇猪影帳纏に関するログは削除されます》
《ブルゥゥー……》
スリが漢字なのは特に意味はないです。
……だって漢字がほうがカッコよく見えたんです。




