第7話:レベルアップ! 空間歪曲トラップの完成
長いので2話に分けます。
【ピコン! 採掘資材の消費とクラフト経験値が一定値に達しました】
【『神級クラフト』のスキルレベルがアップ! 新たな属性術式『空間操作(初級)』『概念干渉(極小)』が解放されました】
翌朝。プライベートルームで目覚めたタクミの脳内に、心地よいアナウンスが響き渡った。
「おお……! 作業員たちが鉱石をいっぱい掘ってくれたおかげで、クラフトレベルが上がったぞ!」
「レベルアップ……? たくみちゃん、また新しいものが作れるようになったの?」
隣で絹のシーツに包まれていたコアが、眠たげな目をこすりながら豊満な身を起こす。
「ああ! これで念願だった『第二段階の防衛構造』に着手できる!」
タクミの過剰防衛センサーが再び激しく作動し始めた。
「100メートルのマグマ大穴と足止め泥沼は強力だけど、万が一『高速飛行できる魔物』や『落とし穴を跳び越える超身体能力の冒険者』が来たら突入を許してしまう。だから今回は……空間そのものを歪める!」
「く、空間を……歪めるの……!?」
タクミは早速1階層のエントランス通路へ向かい、手に入れた希少鉱石と魔力を注ぎ込んだ。
「『神級クラフト』——【空間歪曲・無限回廊トラップ】展開!!」
ズズズ……空間が歪む重低音……ッ!
タクミが両手を突き出すと、ダンジョンの直線通路が視覚的には変わらないまま、幾重にも空間が折り畳まれ、円環状のループ空間へと書き換えられていった。
どれだけ前に進んでも、100メートル進んだ瞬間に空間が繋がり、元の入口へと戻ってしまう『無限回廊』。しかも、進めば進むほど空間の摩擦で体内の魔力が削られていくという、初見殺しの極悪ギミックだ。
「あぐっ……!? んんあぁぁっ……♡」
直後、ダンジョンの地殻と空間を丸ごと捻じ曲げられたコアが、背中を反らせて甘い悲鳴を上げた。
「た、たくみちゃん……っ! 空間ごと……私のお腹の奥を捏ね繰り回さないでぇ……っ! 身体が……空間の歪みで変になっちゃう……っ♡」
「ご、ごめんコア! でもこれで、侵入者は物理的に奥へ進めなくなるはずだ!」
改築を終えたタクミは、過剰な防衛網の完成に満足の溜息をついた。
◇
その日の昼下がり。
過酷な採掘作業を終えた4人の元・悪徳冒険者たちの前に、タクミは大きな鍋を運んできた。
「ご苦労様。今日の昼飯はこれだ」
「な、なんだこの香ばしくてスパイシーな香りは……!?」
「黄色くてドロッとした汁に、肉と野菜が煮込まれて……飯の上にかかってる……?」
タクミが錬金で作ったのは、現代日本人の国民食『特製カレーライス』だ。
おそるおそるスプーンで口へ運んだ作業員の一人が、突如目を見開いた。
「な、なんだこれはぁぁぁぁっ!!?? 甘くて辛くて、旨味が口の中で爆発しやがる!! こんな美味い食い物、王様の宮殿でも食えねぇぞ!!」
「ううっ……涙が出てきた……! 俺たち、今までろくなもん食わずに悪事働いてたのがバカみたいだ……っ!」
「マスター! 俺たち、一生ここで採掘します! だから明日もこのカレーを食わせてくださいいぃぃ!」
すっかりカレーの味に胃袋を掴まれ、涙を流してタクミに忠誠を誓う元悪徳冒険者たち。
「ふふ、みんな素直で良い労働者になってくれたな」
「ええ……主の慈悲深さには感服いたします」
エレノアも感心したように頷いている。
だが、そんな穏やかなダンジョン内に、コアが神妙な面持ちで水晶のモニターを投影した。
「たくみちゃん……外界で動きがあったわ。近隣の『ルクス王国・辺境都市』の領主……バロア子爵の動きよ」
モニターには、豪華な屋敷で不機嫌そうにワイングラスを煽る肥満体の男が映し出されていた。
「戻らない悪徳冒険者たちを不審に思った領主が、この廃ダンジョンに何か利権(宝)があると踏んだみたい。私兵である『Bランク精鋭騎士団』50名を、ダンジョン接収のために派遣したわ」
「Bランク騎士団……50名……」
タクミはゴクリと唾を呑み込んだ。
「ふふ、大丈夫よたくみちゃん。今の私たちのダンジョンには、あなたが作った過剰なトラップと、最強の聖騎士エレノアがいるんだから」
「勿論です主よ。虫ケラどもが何十人来ようと、返り討ちにして見せます!」
「よし……! 帰ってこない冒険者の調査に来た騎士団か。新しく作った『無限回廊トラップ』の実戦テストと行こうか!」
外界の脅威がすぐそこまで迫る中、タクミは新たな過剰防衛の仕掛けに思いを馳せ、不敵に微笑むのだった。




