第5話:開拓作業員と至高の聖具
「ほらほら、そこの元・悪徳冒険者諸君! 手を休めないで掘ってちょうだいね〜」
ダンジョン1階層の安全エリア。
ツルハシを手に岩肌を打ち鳴らしているのは、先日仕掛けた過剰防衛トラップにかかった4人の男たちだった。
「ひいぃぃっ! す、すぐに掘ります! 掘らせていただきますぅぅ!」
「だ、誰もこのダンジョンのマスターがこんな化け物だなんて聞いてねぇよ……!」
涙目になりながら岩石を掘り起こす男たち。
彼らが採掘した高品質な石材や鉱石は、すぐさまタクミの『神級クラフト』によってダンジョン改築の資材へと変換されていく。
「ふむ……彼らのおかげで資材の調達スピードが劇的に上がったな」
タクミは手元で光るクラフトパネルを操作しながら満足そうに頷いた。
「でしょう? 命を奪わずに労働力として有効活用する……たくみちゃんは本当に賢いわねぇ」
コアがタクミの二の腕に豊満な胸を押し当てながら、うっとりと微笑む。
ちなみに、捕まった男たちには「一日三食の温かい食事(タクミが錬金した現代風クオリティ)」と「清潔な寝床」が与えられている。最初は怯えていた彼らも、最近では「……あれ? 下級冒険者をやってた頃より飯が爆美味いし、生活水準が高くね?」と、半分自発的に労働へ精を出し始めていたりするのだった。
◇
「さて……資材も溜まったことだし、そろそろ『住環境の劇的な改善』に着手するとしよう!」
タクミは腕を捲り上げた。
「住環境の改善……ですか、主よ? 既にあの檜風呂と極上のベッドがございますが……」
白銀の聖騎士装に身を包んだエレノアが、不思議そうに首を傾げる。
「エレノア、文明人の快適な暮らしには、まだまだ足りないものが多すぎるんだよ。まずはこれだ! 『神級クラフト』発動——全自動温水洗浄トイレ&魔導エアコン!」
バチンッ!
タクミが空間を書き換えると、プライベートエリアの一角に、真っ白でピカピカに輝く陶器の衛生空間が出現した。さらに室内の壁には、魔導石の力で常時『最適温度・湿度』を保ち、空気清浄機能まで付与されたエアコンが設置される。
「あ、主よ……! この真っ白で光り輝く陶器の腰掛けは一体……? まさか、何らかの聖なる儀式に用いる祭壇でしょうか?」
見たこともない現代の衛生器具を前に、エレノアは背筋を伸ばして首を傾げていた。
「いや、これはトイレだよ、エレノア。現代日本の知恵が詰まった衛生空間だ。使い方はだな……服を脱いでここにこうやって腰掛けて、用を足した後に横のパネルにあるこのボタンを押すと——」
「お、お召し物を脱いでここに……!? は、ははっ! 主のお言いつけとあれば!」
タクミが丁寧に使用方法とボタン操作をレクチャーすると、エレノアは照れて顔を真っ赤にしながらも、意を決してそっと便座に腰を下ろした。
その瞬間——。
「ふぁわぁぁぁぁ……っ!?」
エレノアの口から、見たこともない情けない感嘆の声が漏れた。
「な、なんですかこの優しい温もりは……!? び、便座が……便座がほんのりと温かいです主よ……っ!?」
さらに、レクチャー通りに横の壁パネルにある『おしり洗浄』のボタンを恐る恐る押してみると——
ピッ、ピシャァァァ……!
「ふぁあんっ……!? き、清らかな水が……温かい聖水がピンポイントでお尻を優しく洗って……っ!?」
絶妙な水圧と温度で噴き出した温水洗浄の直撃を受け、エレノアは白銀の髪を揺らしながら背筋をピンと伸ばし、悶絶するように目を見開いた。
「す、スゴイです主よ……! 不快な汚れを一切残さず、完璧に清めてくださるなんて……! このトイレはまさに至宝! 天界の宝具にすら匹敵いたします! さすが主様です!!」
生まれて初めて体験する未知の快適さに、エレノアは真っ赤な顔で涙目になりながら、温水洗浄便座をまるで伝説の聖具か何かのように熱烈に崇め奉るのだった。
「ふふ、喜んでもらえてよかったよ(まあ、ただのウォシュレットなんだけどな……)」
タクミは苦笑しながら、更なる『快適空間』への扉を創り出すのだった。




