閑話:とあるゲームメディアの特集記事④
【特集】頭数でバランスを取るか、一匹のバケモノを取るか……帝国再建RPG『プラチナ・レガリア』の「護衛騎士」システムを振り返る
◯/◯(日) 20:30配信
発売から長い年月が経っているにも関わらず、今なおSNSや掲示板で語られ続けている帝国再建RPG『プラチナ・レガリア』。腐敗しきった帝国宮廷を立て直し、他国との交渉や侵略を繰り返しながら大陸統一を目指す、本格国造りRPGである。
このゲームの醍醐味は、帝国内での政治的な駆け引きと他国攻略のバランスにある。そのため、プレイヤーのスキルに応じた皇子選びが肝になる。だが、実際に遊んだプレイヤーに「このゲームで一番悩んだ場面は?」と尋ねると、返ってくる答えは皇子選びではない。
護衛騎士である。
本作には皇族それぞれに付き従う専属の騎士『護衛騎士』が実装されている。彼らは単なるモブキャラクターではない。それぞれの皇子とともに生き、会話し、戦闘に加わり、様々な固有スキルを持ち、自分好みに育成でき、そして戦いに敗れると死ぬ。都合のいい復活の呪文はなく、一度死ぬと現実世界と同じく退場する。しかも死亡時にオートセーブが走るため、やり直しが利かない(ただ、一周に一人だけ生き返らせるレアアイテムは存在するが、取得効率が悪く大抵のプレイヤーは周回を選ぶ)。プレイヤーは自陣のキャラが死なないよう細心の注意を払いながらゲームを進めることになるのだが、これもまたこのゲームの醍醐味の一つといえるだろう。
何より重要なのは、どの皇子と手を組むかによって、使える護衛騎士が全く変わることだ。プレイヤーが操る主人公は皇族ではない。士官学校上がりの若い参謀候補の一人にすぎない。だから自前の部隊を持っていない。プレイヤーが率いることができるのは士官学校の先輩、後輩、同級生と、選択した皇子が抱える護衛騎士たちのみである。
つまり、本作においてどの皇子を選ぶかとどの護衛騎士を選ぶかは同義なのだ。
◇ ◇ ◇
<人数が違う>
まず、この数字を見てほしい。
皇帝付き護衛騎士 /十人
第一皇子ルドルフ /七人
第二皇子ユリウス /五人
第三皇子ヴィルヘルム/三人
第四皇子ルーカス /一人
第五皇子レオン /一人
露骨な人数差である。皇位継承順位が高い皇子ほど護衛騎士の人数は多い。この帝国において、護衛の人数はそのまま宮廷内の序列を表すとともに、生存確率にも直結する。プレイヤーは第一章の編成画面を開いた瞬間、この帝国の力関係を数字で思い知らされることになる。
なお、第三皇子の三人については最後に触れる。また、皇帝付きの十人については、二周目以降の特殊ルートで一部がプレイアブル化するという仕掛けがあるのだが、その条件はとてつもなく厳しく内容もネタバレの塊であるため、今回は触れない。この記事で扱うのは皇子付きの護衛騎士たちについてである。
◇ ◇ ◇
<第一皇子ルドルフ/護衛騎士:七人>
軍と秩序のルート。彼が率いるのは護衛騎士というよりも、小規模な軍隊である。
隊の長はハンス・ドブラッツ。大槍剣士で、別名『不可侵のハンス』。その槍の間合いがとてつもなく広く、敵が近づく前にその全てを串刺しにしてしまう。
ペネロペ・ロッテは長刀使いの女剣士。自身の身長よりも長い『名刀釣竿』から繰り出す居合斬りは周囲の敵を一掃する破壊力を持つ。
ヨハン・ゼブブは弩剣士。中距離、長距離を得意とし、一人で戦況を大幅に変える。時には火薬を仕込んだ特殊弾を放ち、敵軍に致命的な大ダメージを与える。
ドーガ・グッドマンは大盾剣士。移動が遅いのがネックだが、彼が纏う鎧と盾は暗黒竜の加護を受けているため、並の斬撃や魔法でのダメージは受け付けない優秀なタンクである。
カジマジ・タスカルは双剣剣士。魔力を巧みに使いこなし身体能力を向上させることで、常人では考えられない速度と精度の斬撃で敵を屠る。
ウルフ・ドン・ヴァルクスは大剣剣士。とてつもない怪力で、『巨人殺し』と呼ばれる巨剣を振るう。大振りながらその一撃は鋭く、対峙した相手を高確率で真っ二つにする。
マナ・ブライトンは魔術剣士。剣士でありながら同時に帝国でも一、二を争うほどの魔術の使い手で、瀕死の重傷すら一瞬で治す回復魔法と一個小隊を壊滅に追い込む爆発魔法が得意。
見事に役割が分かれており、七人が揃った時の安定感は全ルートで最も高く、また自由度も高い。反面、登場キャラが多いため育成に苦労する。
◇ ◇ ◇
<第二皇子ユリウス/護衛騎士:五人>
魔術と外交のルート。こちらは魔術と暗器に特化した、癖の強い編成である。
隊長はノア・キサラギ。魔術と剣術の使い手で、ステータスをどちらに寄せるか悩むプレイヤーが多いが、剣術を伸ばし、暗殺術を覚えさせるのがおすすめ。
アンナ・デ・フェミニーは女性結界術師。『歩く結界石』と呼ばれ、攻守ともにバランスよく使える。高レベルになれば隠密にも使え、国境越えが格段に楽になる。
ルナ・ブライトンは第一皇子護衛騎士マナ・ブライトンの妹で、こちらも高魔術師。だが攻撃魔法は使えず、回復・補助魔法で後衛からパーティを支える。
ハルヴィン・タルカンとシヴァ・クルマダは忍者とくの一。隠密、暗殺、毒と薬の扱いに長け、夜戦や交渉で重宝する。
こちらの五人は戦闘そのものよりも、交渉や工作を有利に進めるための手駒としての価値の方が高い。まともな殴り合いだと他皇子や他国戦力に劣るため、戦闘を避けるためにいかに陰で暗躍させるかが攻略の鍵になる。
◇ ◇ ◇
<第四皇子ルーカス/護衛騎士:一人>
<第五皇子レオン /護衛騎士:一人>
第四皇子と第五皇子には、護衛騎士が一人ずつしかいない。二人は第四妃アルテアの双子の息子で宮廷の序列では下位にあたるため、人員も予算も多くない。まず、多くの初見ユーザーはこの二人の皇子を選ばない。だが、選んでみるとこれが悪くない。それぞれ護衛騎士が一人しかいないのだが、その一人がまた強力なのだ。
ルーカスの護衛騎士はグレゴリオス・ヨア。先々代の将軍であり、かつて剣聖と呼ばれた帝国一の剣士。作中年齢は七十八歳、身長は低く、常に杖をついている。一騎討ちでの勝率は99.9パーセントで、どんな攻撃も戦闘中一度だけ完全に受け流せるスキルを持つ。時折発動し行動不能になる『腰痛』がネックだが、必ず先制攻撃ができる『先手の指輪』を装備すれば、まず負けることはない。
レオンの護衛騎士はヒビキ・ヤオトメ。遥か東方の島国ジパングから渡来してきた剣の達人で、居合いの名手。こちらも小柄な老女で、七十八歳。過去には処刑人を務めており、全キャラ中唯一の即死スキルを持つ。集団戦で効果を発揮し、条件が噛み合えばバタバタと敵キャラを一掃できる。ただ、大事な場面で『物忘れ』が発動するとしばらくの間行動不能になってしまうのが玉に瑕。
この二人の護衛騎士は先に挙げた七人、五人の護衛騎士に勝るとも劣らぬステータスで、攻略掲示板では長らくの間、『頭数でバランスを取るか、一匹のバケモノを取るか』と議論が交わされていた。
結論から言えば初心者は第一皇子、慣れたら双子、戦闘回避なら第二皇子というのが定番の答えになった。また、双子ルートは時間との戦いでもある。どちらも高齢な分、攻略が長引くと寿命で亡くなるというイベントが発生してしまうためだ(長命のレアアイテム『人魚の肉』を入手できれば回避可能)。
また、特定のイベントを発生させ、ある条件をクリアできていれば、双子のうちどちらかが先に死亡した場合、片方の護衛騎士を抱えることが可能。一騎当千の騎士二人を同時に運用でき、攻略を有利に進めることができる。
余談だが、ある特殊イベントの条件を満たすとグレゴリオスとヒビキの恋愛イベントが発動する。これは二人の因縁深い過去を知ることができるため、未見のプレイヤーは是非チャレンジして欲しい。
◇ ◇ ◇
<第三皇子ヴィルヘルム/護衛騎士:三人>
そして最後が、処刑される第三皇子だ。プロローグの皇族一覧にはこう記載されている。
第三皇子ヴィルヘルム/護衛騎士:三人
処刑される第三皇子には、護衛騎士が三人もついていた。だが、それ以上の情報はない。他の皇子の護衛騎士には、必ず騎士別のプロフィール情報がある。名前、顔、年齢、出身、固有スキル、初期ステータスなどが事細かに記載されている。だが第三皇子の護衛騎士三人には、そのどの情報も記載されていない。プロフィール自体が存在していないのだ。固有スキルはおろか、名前すらない。ただ、三人いたという事実だけが記されている。
本作には第三皇子ルートは存在しない。第三皇子が、帝国の宮廷腐敗の演出として処刑されるからだ。したがってこの護衛騎士三人がプレイヤーの編成に入ることも、戦うことも、喋ることもない。第三章の冒頭で処刑台のムービーが流れ、第三皇子とその妹の第六皇女、彼らの母である第三妃が処刑される。第三皇子にまつわる物語は、それで終了である。三人の護衛騎士はそのムービーには出てこない。彼らが抵抗したのか、その後どうなったのかを語るストーリーは、どこにも用意されていない。
だからこそ、プレイヤーは考えてしまう。名もない護衛騎士がいたとして、主君が殺される際、彼らはどう動いたのだろうか、と。
命令に従い、その場から一歩も動かなかったのか。それとも、第三皇子が処刑台に上げられた際に抵抗し、そして彼らもまた殺されてしまったのだろうか、と。
いや、『彼ら』と決めつけるのはよくない。三人とも女性の騎士だった可能性だってありうる。そう、第三皇子の護衛騎士は、性別すら不明なのだ。
本作のフリークたちは、今でも掲示板でこの三人の護衛騎士について語り合っている。どんな騎士だったのか。武器は剣か刀か槍か斧か。魔法使いだったらどのレベルだったのか。三人とも同じ日に殺されたのか、はたまた生き残っているのか。主人である第三皇子とは仲が良かったか、それとも反目していたのか。DLCのリリースや設定資料の再販時に何か要素が追加されるのではないか、という願望混じりの憶測が、発売から数年経っても定期的に話題に上がる。
『プラチナ・レガリア』の続編を望む声が絶えない理由の一つに、間違いなくこの第三皇子の護衛騎士の存在が挙げられるだろう。第三皇子以外の四人の皇子のルートは全て遊べる、皇帝ルートも条件を満たせばプレイ可能だ。だが、第三皇子の三人の護衛騎士だけは、何があってもプレイできない。
本作では、複雑な条件をクリアすれば最終的にはプレイアブルな護衛騎士を全て従えることも可能だった。誰と誰を隣に配置するかでも微妙にステータスが変わる。相性があるのだ。様々な護衛騎士の相性や組み合わせを試せるゲームだからこそ、唯一選択できない第三皇子の護衛騎士についても妄想が膨らんでしまう。
もし第三皇子ルートが存在し、彼らが生き延びていたのなら、何らかのイベントで合流する展開だってありえたはずだ。そういった設定資料にすら載っていない物語の続きを、今も望むプレイヤーが多数存在する。それがこのゲームの魅力でもある。




