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閑話:とあるゲームメディアの特集記事③

【特集】競走軍馬育成から大陸統一!『プラチナ・レガリア』の異色なミニゲーム「バービー・スタリオン」を振り返る


◯/◯(火) 20:30配信


 発売からかなりの時が経っているにもかかわらず、未だ人気が衰えない帝国再建RPG『プラチナ・レガリア』。腐敗した宮廷を立て直しつつ皇子の一人に『帝国の未来(プラチナ・レガリア)』を託し、戦争、同盟、婚姻、交易を経てヨーラルシア大陸の統一を目指す。大筋のゲーム内容はそうなのだが、このゲームの魅力はその重厚なストーリーだけではない。


 このゲームには一部プレイヤーの時間を無限に溶かす悪魔のような寄り道が存在する。それが競走軍馬育成ミニゲーム『バービー・スタリオン』、通称『バビスタ』である。


 名前だけ見ると、のどかな牧場経営ゲームのようだ。だが実際にプレイしてみると、その奥の深さに舌を巻く。飼葉の配合や蹄鉄の種類、厩舎環境、調教師との相性、血統、遠征地の気候まで、事細かな調整項目が存在する。往年の競馬育成シミュレーションゲームを彷彿とさせる本格シミュレーションで、なぜRPGをプレイ中に馬の便通を気にしなければいけないのか、プレイ中に何度か我に返る瞬間がある。


 だが、これが面白いのだ。「バビスタ」は、第一皇子ルドルフの軍馬イベントから派生する。鍵になるのは、ルドルフの愛馬カスケード号だ。


 通常の進行では、カスケード号は馬疫疑いで処分されたものとして扱われる。北方戦線のイベントでは、第一皇子が愛馬を失った過去が短く語られ、それが彼の厳格な性格形成に影響したとも言われている。


 だが一部の派生イベントでは、その処分記録に別の可能性が示される。カスケード号は本当に死んだのか。もし死んでいないとしたら、その血統はどこへ行ったのか。このイベントを追わずに進めると、カスケード号は別名で種馬として利用される。数年後、その産駒の一頭がプレイヤーの牧場に流れてくる。それがバービー号である。


 可愛らしい名前をしているが、まったく可愛げのない馬だ。気性が荒い割に脚が繊細、序盤の調教で無理をさせるとすぐに体調を崩す。速度だけ伸ばすと長距離で沈み、持久力ばかり鍛えると模擬突破戦で伸びない。初見プレイヤーの厩舎では、だいたい月に三回くらい拗ねる。それでも育成に成功すると、バービー号は化ける。


 カスケード号の血を引くためか、北方の雪道に強く、砲声や魔術光にも怯みにくい。短距離の速度競走では西方馬に負けることもあるが、荷馬車牽引や長距離走破、騎士を乗せた模擬突破戦では目に見えて強い。


 ここで効いてくるのが、『プラチナ・レガリア』における軍馬の扱いである。軍馬に求められるのは速度だけではない。雪道を進む持久力、砲声に怯えない胆力、荷を引く筋力、騎士の指示を聞く従順さ、負傷兵を乗せても潰れない体格。速いだけの馬は、戦場では案外すぐ困る。


 そして「バービー・スタリオン」が本格的な育成ゲームだった理由は、このヴェルグガルド帝国だけで軍馬文化が完結していないところにもある。


 ヨーラルシア大陸の中央にあるヴェルグガルド帝国は、重装騎兵と補給用軍馬に強い。北のノースヘイムは雪原を走る寒冷地適性の高い馬を育て、西のアウウェスタ王国は騎士競技と魔術騎乗に優れた戦場で重宝される血統を持つ。


 東のルーシエイスト王国は湖と湿地を越える軽快な馬が多く、南のサウサニア公国連合は長距離移動に強い遊牧系の馬が多い。南西のカルカウディア商業連邦は競売、保険、血統証明などが細かく様々な能力の継承が可能で、北東のグラナルディス教国は儀礼馬と巡礼路を進む耐久馬が多い。


 カルカウディアの勢力圏にある小国アニャスタは、小柄だが扱いやすい街道馬がメイン。東方海上の島国ジパングから届く馬はさらに小型だが、悪路と夜間行軍に向いているなど特殊能力を持つ。ステータス値だけ見るとぱっとしないが、環境スキルが発動すると実戦イベントで急に重宝するタイプだ。


 このように、各国の馬には、個別のはっきりとした癖が存在している。北方馬は寒さに強いが暑さに弱い。西方馬は見栄えと瞬発力に優れるが、維持費が高い。南方馬は長距離に強いが、厩舎に閉じ込めすぎると調子を落とす。カルカウディア産は血統証明が細かい分、買値も保険料も高い。


 バービー号とどの国の牝馬を掛け合わせるかによって、生まれてくる産駒の初期ステータスが大幅に変わる。ルーシエイストの牝馬と掛け合わせれば軽快な足に、サウサニアの馬と掛け合わせれば長距離が得意に、といった具合だ。


 ただのミニゲームなのにこのあたりまで作り込んであるから、ハマってしまうのである。余談だがこのミニゲームがヒットしたため、「バービー・スタリオン」はスマートフォン用ゲームに移植された。「バビスタSP」は、現在でも根強い人気を誇っている。


 もう一つ、プレイヤーがバビスタにハマる理由がある。それは、育てた軍馬が本編に持ち込めるということだ。


 第一皇子ルドルフのルートなら、北方軍の機動力と士気が上がる。第二皇子ユリウスのルートでは、魔術伝令や結界資材の輸送成功率が上がる。第四皇子ルーカスのルートでは、地方巡察や治安維持の移動日数が短縮される。第五皇子レオンのルートでは、交易護衛と馬匹取引の利益率に効いてくる。


 馬は、帝国再建の足でもある。


 その最終目標になるのが、四年に一度開かれる大陸最大の軍馬祭典、ヨーラルシア・ワールドカップ。通称YWCだ。


 YWCでは短距離の速度競走、山道と雪道を含む長距離走破、荷馬車牽引、砲声と魔術光の中を走る胆力試験、騎士を乗せた模擬突破戦など、複数の競技で軍馬の総合力が試される。単に速い、丈夫なだけでは勝てない。戦場で本当に役に立つ馬かどうかを、大陸中に誇示する大会なのだ。


 優勝すれば、莫大な賞金と名誉を得ることができる。だが、このゲームはそれだけでは終わらない。


 血統評価が上がる。騎兵部隊の士気が上がる。軍馬購入の交渉で有利になる。周辺国との同盟や通商交渉で、こちらの軍事力を無言で示せる。ルートによっては、国境紛争の発生率まで下がる。


 馬一頭で、大陸統一がかなり近づくのだ。


 こう書くと大げさに見えるが、『プラチナ・レガリア』では本当にそういうことが起こる。剣や魔術で勝つ前に、そもそも戦場に辿りつける馬がいるか、補給を運ぶ足があるのか、伝令は雪道を越えられるのか。このゲームは、そういった地味なイベントを何度も突きつけてくる。もちろん、戦場に辿り着けなくても、補給が間に合わなくても、伝令が雪道を越えられなくてもこのゲームは進行する。だが、それら地味なイベントをクリアすると、攻略が格段に楽になる。


 バービー号は、その象徴のような馬だった。扱いづらいし金もかかる。だが鍛えれば、帝国の未来を変えることができる。


 プレイヤーの采配次第で、育て上げたバービー号を第一皇子ルドルフの愛馬にすることも可能だ。はじめてバービー号と対峙するルドルフの反応を見るだけでも、このイベントをこなす意義があるので、未見のユーザーは是非チャレンジして欲しい。


 ここであえてネタバレを書くが、実はカスケード号を救うルートも存在する。ただ、これがかなり難易度が高く、さまざまな分岐条件をクリアする必要がある。


 具体的には序盤で第一皇子ルドルフと第二皇子ユリウスの信頼度を最大まで上げなければ発生しないイベントをクリアする必要があるのだ。軍馬の処分記録のイベントにはルドルフの信頼が、小型結界石のイベントにはユリウスの協力が必要になる。片方だけ発生しても、カスケード号まで辿り着けないのだ。


 そのため初見でこのルートに入るのは、まず不可能だと断言していい。攻略情報なしで序盤に両方の信頼度を最大にするには、会話選択、軍務イベント、魔術院イベントをかなり細かく噛み合わせ、実行する必要がある。当時の攻略掲示板では、しばらくの間バグ扱い、チート扱いされていたほどだ。


 だが、成功した時の見返りは大きい。カスケード号を生きたまま取り戻せれば、序盤から種牡馬として登録でき、他国の牝馬との掛け合わせも早い段階で可能になる。普通ならバービー号が牧場に流れて来てから発生する「バビスタ」が、自分の手で血統を組める、わかりやすく言えば自分好みの「バービー号」を作ることが可能なのだ。


 前言を撤回することになるが、「バビスタ」はただの寄り道ではない。救えなかったカスケード号の血を育てるのか、それともカスケード号を救い、自らの手で新しい血統を作るのか。その選択だけでも、この帝国の歴史を変える一つのピースになり得るのだ。


 たった一頭の馬の運命が、帝国の未来を変える可能性を秘めている。それを本気で実感させてくれるのが、『プラチナ・レガリア』というゲームの恐ろしさだ。

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― 新着の感想 ―
他王子、姫等の閑話は性格付けで良いのですが、今回の話は本編からしますと蛇足感が強いので読まなくても問題ない等の出だし書付あったら助かりました。 それとも本編に関わってきますでしょうか。
次はカスケード号とバービー号の話になるんですかね。そしてルドルフとユリウスの信頼度を最大にまであげたヴィルヘルムにはさすが黒幕!と言っておきます。
つまり、現時点で既に第一皇子ルドルフと第二皇子ユリウスの信頼度が最大まで上がっているということかなw
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