閑話:とあるゲームメディアの特集記事②
【特集】皇子選びだけじゃない! 帝国再建RPG『プラチナ・レガリア』の「皇女活用」システムを振り返る
◯/◯(月) 20:30配信
『プラチナ・レガリア』は、どの皇子に帝国の未来を託すかを選ぶゲームとして知られている。
第一皇子ルドルフなら軍と秩序、第二皇子ユリウスなら魔術と外交、第四皇子ルーカスなら法と貴族院、第五皇子レオンなら交易と通貨……それぞれの皇子ルートごとに帝国再建の方針が変わるため、このゲームの攻略記事ではまず皇子選びから語られることが多い。
だが、やり込んだプレイヤーほど別の要素がこのゲームの醍醐味だと語る。
『皇女』である。
皇子が帝国の進む方向を定める存在だとすれば、皇女はその進路を広げる存在だ。婚姻外交で国境の火種を消し、孤児院や学校を整え、救貧院、保育施設、看護施設、退役兵家族の支援事業などなど、幅広い活用の場がある。戦場で剣を振るわずとも、皇女の使い方次第で帝国の人口や支持率、はては外交関係や内政効率まで大きく変えることが可能だ。
この「皇女活用」システムは、初見では地味に見えやすい。派手なアクションや討伐ではなく、茶会、婚約交渉、施設運営、慰問といった細かな任務の積み重ねだからだ。だが高難度でトロフィーコンプを狙う頃には、その評価は一変する。皇子ルートが帝国の大きな方針を決める縦軸だとするならば、皇女活用は帝国の細部を変えていく横軸のイベントだ。自由度が高く、やり込み要素として本作の真価が発揮される部分でもある。
まず、帝室の顔ぶれを整理しよう。
ヴェルグガルド皇帝には正妃セイラ、第二妃ミディール、第三妃ルナフレア、第四妃アルテアと四人の妻がいる。正妃セイラはすでに故人で、第一皇子ルドルフ、アイラ第一皇女、フローラ第二皇女の母である。
第二妃ミディールの子は、第二皇子ユリウス、マチルダ第三皇女、カティナ第四皇女、レイチェル第五皇女。魔術院、茶会、書簡外交に絡むイベントが多く、ユリウスルートを選ばなくても皇女たちの顔を見る機会は多い。
第三妃ルナフレアの子は、第三皇子ヴィルヘルムとエリーゼ第六皇女である。ここは多くのプレイヤーにとってはただの情報でしかない。原作では第三章冒頭で第三皇子が処刑事件によって消え、ヴィルヘルム、ルナフレア、エリーゼは盤面から退場する。第三皇子宮ごと無くなってしまうのだ。つまり、エリーゼ第六皇女だけは通常プレイで育成できない。
第四妃アルテアの子は、第四皇子ルーカス、第五皇子レオン、リネア第七皇女、ユリア第八皇女となる。双子の皇子に加えて皇女二人を抱えるため、第四妃側は内政イベントの幅が広い。なお、皇女たちに独立した皇女宮はない。皇子皇女は基本的に母妃の宮に属し、そこに置かれた侍女室が内廷実務を支える。第四妃アルテアの宮は、双子皇子と皇女二人をまとめて抱えるため、管理する予定も物資も多い。
また、身支度や来客、贈答品対応などの内廷実務は、帝室侍女局と各侍女室が支える。そう、この侍女局の設定もまたこのゲームの醍醐味である。侍女局についてはまた別の記事で解説する。
皇女イベントの成否は、皇女本人の能力だけでなくこの侍女室や所属派閥、使える人脈が影響する。どの皇子を選ぶかとは別に、どの皇女にどのような任務を与えるかで、帝国の未来が細かく変化していく。
また、ゲーム内の皇女も育成可能だ。品格、美貌、交渉力、教養、実務、慈愛、民衆支持といった能力値がある。中でも「女子力」という少し時代を感じる名前のパラメータは、単なる可愛らしさではなく、礼装や振る舞い、贈答のセンス、会話の受け流し、相手の母后や王妃との相性まで含んだ便利な総合値だった。
この数値が高いと、より大きな国の王太子や有力貴族との婚約交渉が成立しやすくなる。逆に交渉力や教養を伸ばすと、婚姻ではなく外交使節や文化交流の任務で成果を出せる。慈愛と実務を伸ばせば、孤児院や保育施設、看護施設の運営で国民支持が上がる。美貌だけ伸ばしても最初の評判は取れるが、後半の管理イベントで失敗しやすいあたりが、いかにも本作らしい。婚約までこぎつけても、能力値が低ければ普通に婚約破棄イベントが発生してしまう。
アイラ第一皇女は格式と儀礼の皇女。
フローラ第二皇女は婚姻外交の象徴。
マチルダ第三皇女は華やかな対貴族イベントに強い。
カティナ第四皇女は礼儀と契約に明るく、検分で安定した能力を発揮。
レイチェル第五皇女は柔らかな口調で本質を突くタイプで、交渉に強い。
リネア第七皇女は教育、保育、孤児院、地方学校の整備に向いている。
ユリア第八皇女は救貧、老人福祉、看護、衛生事業に長けている。
皇子選びは大きな分岐である。だが皇女活用は、毎月の小さな選択の積み重ねだった。
誰を茶会に出すか、誰を慰問に出すか、誰に孤児院を任せるか。誰を隣国王家との婚約候補として温存するか。プレイヤーは剣や魔術だけでは国を救えないことを、嫌というほど思い知らされる。戦争に勝っても子どもが飢え、老人が放置され、学校が荒れれば帝国は長くはもたない。
『プラチナ・レガリア』が帝国再建シミュレーションとして評価された理由は、まさにここにある。
皇女たちは攻略対象の添え物ではない。婚約先を選ぶための駒でもない。国を戦わずに広げ、戦った後の国を壊さないための、もう一つの主役だ。
だからこそ、今でも『プラチナ・レガリア』フリークに語られ続ける皇女がいる。
エリーゼ第六皇女である。
彼女は通常プレイでは育成できない。前出の通り、第三皇子ヴィルヘルム、第三妃ルナフレアと共に、第三章冒頭で問答無用に処刑されてしまうからである。幼い皇女として名前は残っているものの、固有ミッションは存在しない。能力値も成長イベントも、婚約候補すらいない。
それでもプレイヤーたちの間には、長く語られてきた一つの問いがあった。
エリーゼが生きていたら、どんな皇女であっただろうか、と。
孤児院を任せたのなら、子ども特有の目線で不備を見つけたのではないか。
保育施設を任せたのなら、大人が見落とす小さな危険に気づいたのではないか。
あるいは第三皇子宮の記録を通じ、帝国の腐敗を無邪気に指摘する存在たりえたのではないか。
だが、このゲームはその答えを用意しなかった。
だから今も、攻略サイトの掲示板には、時々こんな書き込みが見受けられる。
エリーゼ第六皇女が生き残るルートがあったとしたら、『プラチナ・レガリア』の皇女活用は、まったく別物になったのではないか、と。




