表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/50

46:拝啓、愛しい人へ


『 愛するヒルデガルド・デイビア様へ


 昨日はお見舞いに来てくれてありがとう。

顔が見れただけでも嬉しいのに、驚く程たくさんの幸せを運んでくれたヒルデガルドが大好きだよ。

文字で書いても好きだと伝わる気がしないし、ただただ更に好きが募るものなんだね。

それでも今は此処に記すしか伝える術がないのが悔しい。好きだよ、ヒルデガルド。会いたい。


 真摯な手紙もありがとう。

読んで、まず、どんな気持ちでキミが筆を握っていたのかと考えた。会いたいよ。抱き締めたい。

凄く感情を抑えて書いてくれた手紙の返しが、こんなにもとっ散らかっていて情けない。ごめんね。

会いたい。なんで今僕は動けないんだろう。ヒルデガルド、会いたいよ。

キミが泣いていないか心配です。

真面目で強がりなの知ってるけど、文面からも伝わる程なのは大概にして欲しいと思いました。

純粋に心配をしたいのに、ヒルデガルドが可愛くて愛しくて、結局好きだって気持ちで一杯になるので。

怪我の事はちゃんと心配出来たのに、本当、自分でも良く分かりません。好きです。大好き。


取り留めなく書き殴って、今読み返して自分で唖然とした。知能低い。

でも何となく、ヒルデガルドが笑って読んでくれそうなのでそのままにします。

笑ってくれるといいな。次会った時に、どうか笑って感想を教えてね。



 実は僕もヒルデガルドに伝えられていない事があります。


セシーがキミに婚約を申し込んでいると知ったのは、魔導祭が始まる約一か月前。

階段で気を失ったあの恥ずかしい放課後の後日、休んで早馬でキミへの領地に行っていました。


ヒルデガルドへの気持ちを自覚してすぐ、ご家族に直接「結婚を前提とした交際のためにお嬢さんを口説かせてください」と申し込ませてもらった。

邸を出る前に父上に結婚したい人が居る話をして、釣書を送る手配もしていたのだけど、先に本人が現地到着してしまい、キミのご家族を困らせてしまったのを改めて此処でお詫びしておきます。

流石にもうキミのご実家に釣書が届いている事は、魔導祭でお兄さんに確認をしてあります。


ご実家で、レミック侯爵家からも婚約打診が入っている事を聞いた時は吃驚した。悔しかった。

恋に後先なんて関係無いのにね、怒りすらあったよ。

ただ、僕が後手に回ったのは事実で、だからこそプロムは勝ち取ると息巻いた。

ヒルデガルドは在学中学業に専念したいだろうと思ったし、邪魔したくなかった。

でもそれはただ自分の臆病さから出た言い訳だったんだろうね。


それでもセシーは、魔導祭の当日にキミへ婚約を申し込んだ旨を明かしたと聞かされた。

好意を意識してもらって、アプローチをして、プロムで踊る。誰が見たって正統派だ。

キミが惹かれてしまうのだって悔しくも、本当に嫌だけれども、分かる。


比べて僕は、と情けなくて自分が腹立たしくて、セシーの正しさが妬ましくて。

感情に振り回されて抑えられず、魔導祭を楽しめなくなりそうだった。


でも観戦席でキミが笑ってるのを見て、全部そんなの、吹き飛んだよ。笑顔のキミは本当可愛い、好き。

応援してもらえるセルゲイ君が羨ましい。僕を一度でも応援してくれた瞬間、あった?

僕に惹かれてくれていたのなら、あったと信じたいです。僕はキミの雄姿をずっと応援してたよ。

これは後日確認させてもらいます。事と次第によっては慰めを要求します。



 話が逸れてしまったけれど何が言いたいかっていえば、僕はヒルデガルドを愛しています。


モーリス・ラゲールはヒルデガルド・デイビアを愛しています。


一緒に居よう、一緒に居てください。

僕もキミとの未来を希う一人です。

僕を選んで、僕の婚約打診を受けてください。


愛しています。キミが大好きです。好きだよ、ヒルデガルド。

早く会いたい、会ってもっとちゃんと伝えたい。



キミからの手紙が届く前、丁度午前中にセシーがウチに来ていました。

物凄い剣幕で罵られ激昂されました。

昨日ヒルデガルドがお見舞いに来てくれるよう誘ってくれた恩を仇で返してしまったけれど、その誠実さの分だけヒルデガルドを大事にするって言ったら大泣きされた。

セシーが泣くと分かっていても言った僕は性格が悪いと反省しています。


どうやらセシーは今週いっぱい休むそうですが、休日の午後、時間をもらえるようお願いしました。


ところで、僕とキミが揃ってセシーに引導を渡すのは過剰でしょうか?

キミからの手紙を見てセシーを誘った自分を褒める一方、自分の身に置き換えては容赦の無さに震えました。


その件も話し合いたいので、ヒルデガルドの休日を僕にください。

以前の休日、迎えに行った時間に馬車を手配しておきます。

服装は制服でお願い。休日の可愛いキミをセシーに見せるのは嫌です。

一か月近く学校に行けない僕の心労を慮ってください。

自分で書いている癖に、キミの名前とセシーの名前が並ぶのすら腹立たしい。嫌だ。


次は先にクッションを自ら乗せておきます。

見せないから、気にさせないから、今度はもっと抱き締めさせて。もっとキスをしよう。


愛しているよ。ヒルデガルド。



 モーリス・ラゲール 』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ