海王の試練
「私は一体…」
ベッドの上でパチリと目を開け目覚める海王。
「お目覚めですか」
リッチーが書類を見ているのを中断して声をかける。
「貴様、確かリッチーという名だったか?」
海王も上半身を起き上がらせる。
「はい、ともかく魔王様を呼んできます。少々お待ちを」
「お、おい!」
パタパタと出ていく。
1分後、リッチーに呼ばれて私はゆっくりとドアを開けた。
「あの…私…」
「ほら、魔王様」
リッチーに押され、おずおずと部屋の中に入りながらどう謝ろうかと考えていると、
「貴様が新しい魔王か。まずは世話になったようですまなかった」
「えっ?」
「まだ頭がぼんやりしていてな、顔の知らない者を置くのは躊躇しただろう」
おっとぉ?
「しかしそれはそれ。まだ貴様を信用していない。貴様が魔族を引っ張っていくのにふさわしい魔王かテストしてやる」
つまり私がいきなり先制攻撃したことを忘れている…?
「どうした?何か言ってみろ」
私とリッチーは顔を見合わせ、ゆっくりとうなずいた。
「テ、テスト!?どういうこと!?」
少し大げさに返答する。
「なんだ、急にどうした?まさか私がここで寝ていた理由は貴様の…」
やばい、不自然すぎたか。
「いやいやいや全然違うよ!私が通りがかったら倒れている海王さんを見つけたの!」
「…そうか、そうだったのか。すまなかった」
頭を下げる海王。
ふぅ…ゴリ押せば何とかなるもんだね。
「あぁ、まずは自己紹介をするべきであったな」
ベッドから降りて立ち上がった。
「私は海王。そこのリッチーから聞いていると思うが、この魔境の海をまとめる王だ」
「うん、海王さんだね。私は魔王エルクル1か月前から魔王をやってます」
手を出して握手をする。
「えーっと、それでテストって?」
何か面倒な案件な気がするね。
「そうだな、私は貴様が魔王として信頼できるか、部下を無下にする者ではないかを確認しに来た。そのためのテストだ」
「待ってください。魔王様は10日も経たずに魔族の皆様の心を掌握されたお方です。それだけで信頼に足るかと」
「リッチーさん!?」
そんな大層なものじゃないって!9割はアーサーちゃんのおかげだし。
「噂では聞いたが宣誓式だったか…?うまくやったものだ」
「であれば」
「しかしそれはそれ、安心して任せられるかの見極めは同じ王として大事であろう」
うーん、まぁ確かに一理あるか。
ポッと出の私がいきなり魔王とか言われても普通は待ったがかかる。
そう考えたら10日で信頼を得たのわけわからないね。
うちの子達大丈夫なのかな…?いや今それはいいか。
「わかった、テストを受けるよ」
「魔王様!…いえ、そうおっしゃるのであれば協力いたします」
「ごめんねリッチーさん」
協力してくれるのはありがたい。
正直自身とか全くないから。
「よかろう、まずは貴様が悪か否かを見る予定だったが…見ず知らずの私を介抱したのだ。第一の試練はクリアとしてやる」
「はぁ…ありがとう」
なんか知らないけど第一の試練クリアしたらしい。
攻撃したの私なのに。
「では第二の試練だ」
「うん」
自然と背筋が伸びていく。
「強さ、私と模擬戦で勝負しろ」
「魔王業はここでおしまいとなります」
私は即答した。
「は?」
「魔王様!?」
二人が驚いている。
あぁ、これで終わりか。
正直向いてなかったんだよ魔王なんて。
バトルなんて初めてだし私はできないよ。
宣誓式のくだりについてはエピソード0の方でやっているのでよければ見てください。




