発熱外来にて。うん、黙って待とうか。
本日は後でもう一話、投稿します。
解熱した夫が車で病院に送ってくれました。
受付に声をかけます。ボタンを押して呼び出すのです。
「外で待っていて下さいね。通常の診察が終わり次第お呼びします。」
「ハイ…」
ああ、前の人たちが押してるのか。病院あるあるです。
エレベーターホールに丸椅子が二つ置いてありました。
エレベーターを挟んでひとつずつ。
一回に2人なのね。
あとは午後の分の枠かあ。
お、入り口に近い方に1人年配のご婦人が座っておられます。
(推定七十歳以上。)
この人も発熱外来なのね。私はこの人の次か。
ふうっ。椅子に座って壁にもたれかかります。
ツライぜ。
そこに看護師さんが出てきました。
「お熱、測って下さい。」
まず先に来ていたおばさまからですね。
熱を測るおばさま。
「36・5度ですね。症状はお咳とかお鼻の風邪の症状ですね?」
「ええ。」
へえ。熱無いのか。熱が無くても風邪の症状があると外で待つのだな。
ダラリとしている私。
「では、雷鳥文庫さん。お熱測って下さい。」
「ハイ…」
「38・5度。あらー、高いですね。」
「これでも今朝ロキソニンを飲んでますけどね…昨夜は38度でした。朝は38・2度で…」
「症状は。」
「喉が痛いです。あとだるくて関節痛で。咳をすると胸から背中まで痛いです。後は頭が割れるように痛いです。」
それで夫は肺炎だと思ったのですね。
「それから、鼻水が止まりません。水っぽい鼻が花粉症の様に出ます。鼻が詰まってニオイがわかりません。」
「なるほど。ではもうしばらくお待ちください。」
中の待合室にはまだ何人かいます。お会計待ちの人や多分これから診察の人もいるみたいですね。
一緒に待っているおばさま。イライラしています。かなり待っているのでしょうか。私より早い時間を指定されたのでしょうか。
おや?入ろうとしている??
「あ、ダメですよ。お外で待っていて下さい。」
受付の人に阻止されています。
「だって席、空いてるじゃない。」
「風邪の症状がある方は、他の人の診察が終わるまでエレベーターホールでお待ちください。」
だよねえ。
熱でくらくらしながら、ぼーっとやりとりを聞いています。
エレベーターの隣には階段もあります。ごねるおばさまは、階段のところに行って電話をかけております。
「…もしもし。まだ呼ばれないの。ずっと待ってるのに。私だけ中に入れても貰えないの、ひどい仕打ちよ。ええ。」
おや、涙声で訴えておられます。ご家族でしょうか。
…もしかして、この方は発熱外来を理解していないのか?
ん?んんん?
また待合室に入ろうとしているぞ?
「あ、お外にいて下さいねー!」
受付の人は丁寧です。
「…私、熱なかったでしょ。中にはいってもいいでしょ。」
おや、そう言う理屈ですか。
「いえ、先程も申しましたが、風邪の症状で来られてますよね?」
「だって。私より後から来た方がどんどん入っていくのよ。ひどいじゃない。」
「…あれは、予約の方でして。」
繰り返しますが、この病院は完全予約制なんです。
「予約って。いつまで待てばいいの?全然わからない。」
「とにかく、あらかじめ予約されてる方が終わり次第、お呼びしますから。」
中に入るのを阻止されるおばさま。
怒りに震えています。
…最近の病院はわりと完全予約制なんですよ。コロナ禍以降は特にね。久しぶりに病院に来たのかしら。
(それは素晴らしい。ご健康なのですね。)
ウロウロと檻の中のクマのように歩きまわるおばさま。
やはり動物園のクマは本当にそんな動きをするのだろうか。
いかん。熱でぼーっとしている。
おや?おやおや?おばさまこっちに来る?
ロックオンされた?
ええ?何で?
来んで良かとけ。
(※訳。来なくいいのに。何故こちらに来ようとしているのか。)
「ねえ、アナタも中に入らないでと言われたの?」
げ。話しかけて来やがった。
「ハイ…熱ありますし。」
(来るなよ。私は多分何かの感染症だぞ。熱があると言う時点で察しろ。私は動けないんだから。)
「私、熱ないのに入れてもらえないの。」
ぐすっ。
涙ぐむおばさま。
自分が可哀想でたまらないみたいです。
…勘弁してよ。
「…この時間に来いと言われたんですよね?発熱外来に。」
「そんなこと言われてないわ。」
はあ?ではこの人は予約も無しで、風邪だからとノーアポで来たのか。発熱外来も申しこまずに。
それで追い返す訳にいかない病院側が、
「風邪の症状がお有りでしたら、お外でお待ちください。」
となったのだな。
…確かに。この近くには予約制でなくて先着順の内科もある。
それと同じ感覚か。
「後から来た人に抜かされて…ひどいじゃない。」
はあ。このおばさまは私に一緒に文句を言って欲しいのか。
ノー!!
無理を言うなよ。
「…ここは予約制ですからね。ホラ、あの待合室に人がいるのが見えますよね。」
エレベーターホールからでもすりガラス越しに人影が見えます。
「多分、あの人たちがいなくなったら、診てもらえますよ。」
おばさま早速、覗きにいく。
そして私に向かって、指を三本立てた。
…そうですか。




