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36話 VSバルロス 逆転

視界に光が宿る。


暗闇から目覚めた私は刀を支えにしつつ嘲笑気味に笑った。



「あっははは……。なぁんだ……簡単な話じゃんか」


「あ?どうしたボソボソと気持ち悪ぃ。とうとうイカれちまったか?」


「どうだろうね。私としては寧ろ、さっきまでがイカれてて、今ようやく目が覚めたって感じかな」


呟いた私を気味悪そうに眺めるバルロス。


意識が戻ったはいいものの、奴の攻撃を二度もモロに喰らったので私の全身はズタボロだ。血が滴り、脈がドクドクと鳴っている。でもまぁ、不思議と気分は悪くない。どころか、絶好調まであるね。今なら何でも出来る気がする。


頭の中は雲一つない快晴。

悩みが晴れた状態のなんと心地良いことか。このまま空にだって羽ばたけそうですわ。肉体は疲労が蓄積してるというのに、開戦時より遥かに身軽だ。


私は自身の足で立ち上がり、胸を張って言い放った。


「まぁ簡単に言うとさ、『答えを見つけた』ってワケ」


「あん?答えだぁ?」


「そう、答え。アンタにも伝わるよう噛み砕くと――――今からアンタをボコすから、耐えられるだけ耐えろよ。だな」


「ハッ!!その傷でよく吠えんじゃねぇか。立つだけでやっとの死に体が。ならこいつを避けれんのかぁ?……黒灰螺牙ァ!!!!」


放たれたバルロスの牙。

先程は回避すらも叶わなかった悪夢の攻撃。

奴にとっては決着をつけるための最後の工程。だが……


「オォォラァァァッッ!!!!!!」


私はその場から一歩も動かず、正面からそれを叩き切った。


「なっ!?」


驚愕するバルロス。流石に真っ向から砕かれるのは予想外だったのだろう。その表情が揺らいだ。


だがこれは現実である。

いやまぁ、私もちょっとびっくりしたけどね。「なんか斬れる気がする」と思って試してみればこれだもん。さっきは競り合うコトすらできなかったのに。


なんだろう、この全能感。

アスリートでいうゾーンってやつだろうか? 


眼の内側から溢れる大量の魔力、その全てを掌握できている。瞳に浮かぶ歯車の紋様の駆動率も以前より良い。


認識力が上がったような、余分なモノが消えてより鮮明になったような。これまでスイッチの切り替えしか出来なかったというのに、今では出力する魔力量の調整すらも意のままだ。


「いや、もっとだ……もっと引き出せる…。確証はないけどそんな気がする……!!より集中すればさらに……ッ!!!!」


私は興奮を抑えきれず、その場で自身の内側へと意識を向けた。


教官が言っていたこの眼に宿る無尽蔵の力。その膨大な魔力を一度に解放したらどれだけの威力になるかなぁ……!?見たこともないい威力なんだろうなぁ……。


それとも暴発して私ごと消し飛ぶのかなぁ…!!

あぁ駄目だワクワクが抑えられない!!!早速試して


「余所見してんじゃねぇッ!!!!」


バルロスによる妨害。

魔力を練っている私の元に突っ込んできやがった。


「アンタ本当にタイミング悪いなぁ!!今良い所だったのにさ!!!!」


仕方がないので一度中断、バルロスへ応戦。

黒灰を纏った貫手を捌きながら次の動きを予測。防御を繰り返すたびに感覚が研ぎ澄まされていった。


にしても、今やろうと考えてた大技……多分溜めがデカ過ぎるよな。そりゃあ内に眠っている魔力を一気に引き出そうなんて時間がかかるだろうけど……。予備動作が隙でしかないから実戦だとただの的になる。


とはいえ中途半端な溜めでやっても大した出力にはならないだろうし………よし、まずは崩しからだ。


そう決めた私は反撃へとシフトチェンジ。

バルロスの周囲を高速移動し、四方八方から斬りつける。


「オラオラどうした傭兵さん!!そんなヌルい攻撃じゃあ今の私には届かねぇぞ!!!!」


「チッ……!!」


口撃も絶好調だ。

貫手を回避した私は次々にバルロスへ居合を浴びせる。浅い傷だが奴の体力をジワジワと削った。


「劣等種のくせに生意気な……!!」


「ンなもん知るか馬ァ鹿!!!!!性別なんざどうだっていいわ!!!!アンタの前に立ってんのは、シャロンっつーただの人間なんだよ!!!!」


もはやバルロスが何を言おうと私には響かない。


こちとら既にフルスロットル。議論のテーブルに着く気は皆無なのでそのテーブルごとぶち壊す所存。口論における最強の選択肢は『相手を物理的に黙らせる』だからね。


『………………………』


何やら影の中でハンゾウが微笑んだ気がしたが気のせいだろう。


どうせいつも通りゲスな笑みを浮かべているだけだ。気が散ってはいけないし今は無視。けれどまぁ……今回は結果的に助けられた形なので感謝の念は伝えておく。


「黒灰壁……ッ!!!」


それよりバルロスだ。

よく見てみると黒灰が壁のように連なっているではないか。


つい先刻私の刀を見事に弾いた壁。なんだっけ?何かに比例してうんたらだったか?頭がハイになっててあまり思い出せないな。まぁいいや。


「立ち塞がるってんなら斬り砕くのみ!せっかくだ、その灰壁の強度テストといこうか!!歯ァ食いしばれよ傭兵ッ!!!!!」


ブワリとなびくブロンドの長髪。魔力の雷風を纏った私は地面を深く蹴り、


―――一閃。

渾身の一刀は溜めが足りなかったか惜しくもバルロス本体には届かなかったものの、展開された灰壁を真っ二つに斬り裂いた。


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