33話 VSバルロス 舐めてただろ?
「ハァッ!!」
「フッ!!」
ドゴォン!!という強烈な衝撃音。交差する刀と拳。火花が飛び散り、地上には亀裂が走った。
初撃から魔力全開で激突した私とバルロスによるせめぎ合い。その余波である。
「へぇ、一撃で終わらせるつもりだったが……これに耐えやがるか」
「それはこっちのセリフだっての!!」
刃の方向を空へと変更し斬り上げ、バルロスの拳を弾く。
相手の情報が無いなら、開幕から全力を出して何かされる前に決着をつける。それが私の作戦だったのだが……そう簡単にはいかないか。仕方ない、切り替えて次だ。
「セャァ!!」
「ッ!」
さらに打ち合う私達。
右から迫る正拳を防ぎ、返す刀で斬りつけようとするも、逆手によって阻まれる。
「オラァァ!!」
「ハァッ!!」
ぶつかり合う魔力の奔流。
もはや地響きに等しいそれは、刀と拳が打ち合う度に衝撃の威力を増していく。
(思ってた以上にやり辛ぇな……!けど、こちとら筋肉だるまのザッパ教官に鍛えられてんだ。徒手空拳が相手なら負けねぇよ―――ッ!!!)
身を翻して下段蹴りを回避、強烈な風切り音を聞きながら刀を振るう。
一つ一つに必殺の威力が込められており、互いに僅かなミスが命取りとなる状況。少しでも集中が途切れればそこから一息にもっていかれるだろう。
そんなギリギリの綱渡りの中、バルロスの防御が―――一瞬綻んだ。
(今ッッ!!!)
その隙を私は見逃さない。
守りが手薄になった腹部目掛けて糸に針を通すように刺突……チッ、浅いな。
「くっ!?」
直ぐに飛び退くバルロス。流石にリカバリーが速い。
あそこから一気に攻め込みたかったのだが……まぁいい。先制点は私のものってことで。
「どう?少しは見直したんじゃない?」
「ハッ!掠り傷を与えたくれーでイキがってんじゃねぇよ。それに、どうやらテメェの状況を理解してねぇみたいだな」
「え……?」
ズキン、と痛みが走った。
バルロスがコケにするように指を差した先、私の右太腿による痛み。咄嗟に視線を向けると、スカートから覗く肌色に紫の痣が浮かんでいた。
まじかよコイツ……。飛び退くと同時に反撃してやがったのか。
「……手癖が悪いね。変態」
「知るか。勝つためなら手段なんぞどうだっていい」
「あらま、効率的だこと」
ここまでの技量は互角………魔力量の多さで私に分があるといったところか。
先程はその差で隙を作れた。女の私が魔力量で勝っているのは、奴にとってかなりの想定外だっただろう。だがそれでも反撃を合わされたし、次は通用しないとみていいな。
バルロスを崩すには初見かつ練度の高い術が必要だ。
(なら―――)
チャキン、と刀身を納刀。
全身を脱力させながら、次なる動作を鮮明にイメージ。よし、行ける!
腰を落とし、眼の駆動率を上げる。
途端に昂る魔力を下半身へとを集中。
右手を柄に添えながら、大きく踏み込む右足に重心を預けた。
暴発させぬよう慎重に、繊細なコントロールで魔力を溜める。
溜めて、溜めて、溜めて……。
決壊寸前となったその瞬間―――一気に力を解放ッッ!!!
「オォォォラァァァッッ!!!」
ズパァンッッ!!と。
稲妻の如き素早さで刀を抜き放った。
「チッ!!?」
苛立ちの声を漏らすバルロス。その目は私を捉えきれておらず、上体に血の線が走った。
……やっぱりそうか。剣術が見切られても、居合術であれば通用すると。
さしもの元傭兵さんもどうやら居合相手は慣れていないようだ。
それもそのハズ。
転生して以降それなりの人数と出会ってきたけど、私以外の刀使いって見たこと無いしな。
仮に剣で居合をする者がいたとして、鞘走りによる斬撃の加速は刀特有のもの。そのスピードは易易と再現できるものではない。
しかも、私の場合は更にそこへ溢れんばかりの魔力を加えているのだから、捉える捉えない以前の問題だ。豪速で迫る刃を認識できても、対処する身体が追いつかなければ無意味なのである。
とはいえ、だ。決して油断は許されない。
そう兜の緒を締め直した時……
「『黒灰域』」
バルロスが自身のスキルを発動させた―――。




