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おまけ(34) 【村長視点】転機

本日はコミカライズの更新日ですね!


前回、お弁当を盗んだ不届き者をヒイロコガシおにぎりで始末(語弊あり)したユウさん。

さて今回は…?

是非ご覧ください!


…というわけで今回は、ロセフラーヴァの街の南にある村の村長視点。

魔物の討伐をロセフラーヴァ支部の冒険者に頼っている、その現状が垣間見えます。

※結構エグい描写が出てきますので、苦手な方はご注意ください。





 村の近くの丘陵地にソルジャーアントの巣ができた、という知らせは、村人たちの間に速やかに広がった。

 発見したのは村の若者の一人──孫のロニー。畑仕事に出た先で、徘徊するソルジャーアントを発見した。


 幸いその時は、向こうに見つかることなく村に戻ってきた。だがその後、ちゃんと様子を見てくると出ていったきり、翌日になっても帰ってこない。


 村はロセフラーヴァという大きな街の近くに立地しているが、この辺りは魔物も多く、その被害も多い。

 農作物の被害だけだったら、まだいい。荒らされた畑を耕し直し、みんなで協力して種をまけばいい。

 家畜だって、心は痛むし時間はかかるが、頑張ってまた増やしてやればいい。


 だが、村の者がやられるのは、話が別だ。


 どれだけ願おうと、死んだ者は蘇らない。自分たちにできるのは、死体すら帰ってこない中で死んだという事実を受け止め、嘆き、悲しみ、これ以上の被害を出さないために冒険者ギルドに金を積んで頭を下げ、助けを求めることだけ。


 うちの村が魔物の討伐を依頼するのは、ロセフラーヴァの街にある支部だ。この辺りでは一番大きく、冒険者の数も多い。

 だが、金を積まないと、そもそも依頼を受けてもらえない。


 少し前、依頼料が払えないなら自分たちで倒せばいいと、村の若者たちがアーマーボアという魔物の討伐に挑んだことがある。

 その結末は、ひどいものだった。


 挑んだ6名のうち、生き残ったのはたった1人。

 それも、生きたままアーマーボアに左腕を食われ、救出された時には──いや、魔物が飽きて去って行った時には、半死半生の有り様だった。

 他の者は、牙に貫かれ、噛み砕かれ、踏み潰され、誰のものかも分からぬ肉片となって散らばっていた。

 辛うじて犠牲者が5人だと分かったのは、下顎骨が5人分、あったからだ。


 アーマーボアは雑食、それも肉を好んで食う、肉食寄りの雑食だった。しかも、最低でも3頭以上の群れで行動する。

 ろくに武器も扱えない素人が6人束になったところで、敵う相手ではなかったのだ。


 素人では魔物には敵わない。だが、冒険者ギルドに躊躇なく依頼を出せるほどの蓄えは、村にはない。

 正直、現状に対する諦めのようなものが、ある。


 だが、今回のソルジャーアントは、諦めたら大変なことになると分かっていた。


 ソルジャーアントは数十匹から数百匹の群れで行動する魔物だ。巨大なアリのような姿をしているが、外殻はアリよりはるかに硬く、普通の剣では刃が立たないらしい。

 そして、アリらしく、女王アリを頂点として組織立って動く。獰猛な肉食で、牙から分泌される毒で獲物を麻痺させ、巣に運び込んで幼虫のエサにする。アーマーボア以上に、素人が手を出していい相手ではない。


 心配する村の皆をなだめ、わしは家の財をかき集めて自らロセフラーヴァの街へ向かった。

 依頼料には足りない。それは分かっている。だが、事情を聞いた誰かが、手を貸してくれたら──そんな身勝手な望みを抱いて、冒険者ギルドへ。


 ──だが。


「だから、無理だっつってんだろ!」


 見るからに筋骨隆々とした冒険者は、わしが提示した金額を見てそう吐き捨てた。

 分かっている。分かっているが、


「そこを何とか…!」


 必死に(すが)ると、冒険者はうるさげに腕を振った。わしは大きくよろめいて、尻餅をつく。

 冷笑が注がれる。手を差し伸べてくれる者などいない。だが、諦めるわけには──


「大丈夫ですか?」


 力強い、だが予想外に小さな手が、わしを助け起こしてくれた。


 そちらを見ると、孫より若いのではないかという娘っ子が、厳しい表情で大柄な冒険者を睨みつけていた。

 背中に、冗談のように大きな(つち)を背負っている。確か、ウォーハンマーというのだったか。

 服装からして冒険者だろう。他に、杖を持った少女が2人。1人は心配そうにこちらを見て、もう1人は厳しい目で、だが冷静に周囲を観察している。


 そして、


「ガルシア、どうしたんだ」


 赤毛の冒険者が、わしを振り払った大男に足音を立てて歩み寄った。

 大男は舌打ちして、


「何だよジャスパー、邪魔すんな」

「こんなところで騒ぎを起こしたら、そりゃあ声も掛けるさ」


 赤毛の冒険者を睨みつけるが、その視線を向けられた方はどこ吹く風。平然と肩を竦めている。


「──なら、お優しい筆頭冒険者殿がそいつの『お願い』を聞いてやるんだな!」


 大男は嫌な笑みとともに捨て台詞を吐き、仲間を引き連れ去って行った。


 そうしてわしは、赤毛の冒険者に先導され、冒険者ギルドの中にあるテーブルにつく。

 依頼をしに来たことはあるが、こうして席に着き、直接冒険者とやり取りするのは初めてだ。受付の若いギルド職員や他の冒険者たちが眉を寄せてこちらを見ていて、居心地が悪い。

 …いや、そんなことを言っている場合ではないのだ。


「さっきは大変だったな。──俺はこの冒険者ギルドロセフラーヴァ支部所属の冒険者、ジャスパーだ。あいつらとは無関係だから安心してくれ」


 対面に座った赤毛の冒険者が、さらりと名乗る。先ほどの大男ほど筋骨隆々とはしていないが、鍛えていると分かるしっかりとした体格だ。だが、粗暴な雰囲気はない。

 わしは慌てて頭を下げる。


「…は、はい。ご丁寧にありがとうございます。あっしは、南の農村で村長をしております、テッドと申します」


 続けて、若い女性冒険者たちも名乗ってくれた。一番背の低い、ウォーハンマーを背負った女性がユウ。緊張気味の少女がシャノン、淡々と冷静に見えるのがユリシーズ。


「ははあ…こんな若いお嬢さん方も冒険者とは…」


 わしは感心して呟いた。

 しかしどうやら、ユウは見た目より年上のようだ。新人冒険者だと言っていたが、肝の据わった雰囲気がある。

 一番分からないのはユリシーズだ。見た目はシャノンと同年代に見えるが、その目は妙に冷静で、感情らしい感情が読み取れない。


「それで、一体何があったんだ? 奴らに何か頼もうとしていたようだが…」


 ジャスパーに問われ、わしは我に返った。それが本題なのだ。


 先ほどの大男は、ジャスパーのことを「筆頭冒険者」と呼んでいた。そんな相手が、わしの話を聞こうとしてくれている。これ以上の幸運はないだろう。

 どうか──と願いながら、膝の上で手を握りしめ、視線を落とす。


「…実は、うちの村の近くに、ソルジャーアントが巣を作ったようで…」

「何だと!?」


 ジャスパーの反応は早かった。


「確かなのか…?」

「…はい。村の畑がある丘の向こう側の窪地に巣があるようです。発見者はうちの村の若者ですが…もう一度様子を見て来ると言って出て行ったきり、帰って来ませんでした…」


 絞り出すように呻く。


 様子を見て来ると村を出た、その背中が鮮明に脳裏に浮かぶ。

 あの時、何としてでも止めればよかった。大事な村の仲間、大事な孫だったというのに。


 ジャスパーは深刻な顔をしている。ソルジャーアントがどういう魔物か、当然知っているのだろう。

 だが──やはり、問題になったのは依頼料だった。


 とてもではないが、払える金額ではない。だから、ギルドへの正式な依頼にはできない。誰かの善意に縋るしか。

 …そう思っていたのだが。


「──ソルジャーアントの討伐…明日の実地研修のテーマにしたらどうでしょうか?」


 ユリシーズが言った途端、空気が変わった。


 驚くジャスパーとシャノンの一方、にやりと笑うユウ。

 研修のテーマにしてしまえば依頼料は要らない。その言葉に光明が見えた気がした。



 ──そうして、その日。


 確かに、今までの流れは変わったのだった。








小王国の魔物に比べると弱いですが、ユライト王国に出没する『普通の』魔物も一般人にとっては脅威です。

なお、地の文では一人称が『わし』、会話文では『あっし』になっていますが、この村長さん(テッド)、普通にしゃべる時は『わし』でちょっと改まった場所では『あっし』になります。ビジネスの場における『おれ』と『わたし』の使い分けみたいなもんですね。

以上、蛇足でした!


…さて。


改めまして、本日はコミカライズ第14話その②の更新でしたね!

みなさま、もうご覧いただけましたでしょうか?

そしてコミック2巻はお手に取っていただけましたでしょうか…!


今回更新分の原作者的イチオシポイントは、


・ぷよぷよしているスライム(半透明の不定形! この質感が素敵!)

・とりあえず潰そうとするユウさん(短絡的…w)

・スライム退治で勢いをつけすぎたユウさん(そもそもポーズが(笑))

・冷静なユリシーズ(しれっとスライム退治一発OK、そして色々見てますねぇ…)

・釣れちゃったジャスパー(呆然(笑))

・「あの馬鹿講師シバいていい?」のユウさん(今回の顔芸枠)

・「私が行く」のユウさん(格好良いのに…横のアオリ文との落差よ…!)


…です!


今回も安定のガルシア。不良もいいところのガルシア。講師だろお前(←書いた人)

村長のテッドさんもね、本当に不遇な感じで…そりゃあ手も差し伸べたくなるってもんです。

そして最後のコマ!

表情とポーズは最高に格好良いのに横のアオリ文に書かれた内心がアレすぎるユウさん。いいぞもっとやれ。


…というわけで、やっちまいなー!! と叫んだところで、次回更新はちょっと間があきまして、4月14日(火)の予定です。



好評発売中の小説1巻&コミック1巻・2巻、

そして絶賛Web連載中のコミカライズ!

みなさま、引き続き応援よろしくお願いします!



追伸:別途連載中の『定時上がりの複業文官』、第2章がそろそろ佳境を迎えます。

多分再来週末(4月5日(日))あたりで第2章が終わりますので、お時間ある方、よろしければそちらもどうぞ。

恋愛要素ありのお仕事系(?)転生モノ。第2章は結構重たい話も入ってますが、その部分は既に通過済みです(笑)

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