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天才料理人、毒耐性に目覚める

神界のモニター前で、今度はポテトフライ(塩味)を食べています、神様です。

王都の天才料理人ジュリアンを料理で圧倒した大輔。

弟子入りを断られても諦めないジュリアンですが、どうやら大輔くんの料理(特級呪物)を食べたことで、彼の体に『ある異変』が起きてしまったようです。


「お願いです師匠! 一生のお願いです! 私をここで働かせてください!」

「だから嫌だって言ってるだろ。あと師匠って呼ぶな」


翌朝、おひさま食堂の入り口には、王都の超高級コックコートを着たまま地面に額を擦りつけるジュリアンの姿があった。

もちろん、大輔は冷たくあしらっている。ただでさえ男爵が常連になって大忙しなのに、これ以上面倒な人間を店に入れたくない。


「あの、ジュリアンさん……王都の高級店のお仕事は大丈夫なんですか?」

ミリアが心配そうに尋ねると、ジュリアンはキリッとした顔で立ち上がった。


「ミリア殿、あのような泥水を出す店など、今の私にはどうでもいいのです! 私は師匠の『魔界の出汁』の秘密を解き明かすまでは、一歩もここを動くつもりは――」


その時、ジュリアンの顔面に、どこからか飛んできた不気味な黒い羽虫が飛び込んだ。

それは辺境の森の近くにたまに湧く『ディザスター・モスキート』。刺されれば大の大人が一週間は高熱で寝込むという、地味に凶悪な毒虫である。


「キャッ!? ジュリアンさん、それ毒虫よ! 早く潰して――」

ミリアが悲鳴をあげるのと同時に、虫はジュリアンの首筋をチクリと刺した。


「あ」と大輔が声を漏らす。チートのない一般人のジュリアンだ。今すぐ医者を呼ばないと大変なことに――。


「ん? 何か今、首筋に痒みを感じたが……。いや、それより師匠! 私は皿洗いからでも――」

「え? お前、体調悪くないの?」

大輔が驚いてジュリアンの顔を覗き込む。


普通なら今頃、顔を真っ青にして泡を吹いて倒れているはずだ。しかし、ジュリアンは顔色一つ変えず、むしろいつもより肌にツヤがあるようにすら見える。


「体調? むしろ最高に良いですが……。そういえば、今朝からなんだか、妙に体が軽くて、世界がクリアに見えるというか……」


大輔はハッと気づき、じっとジュリアンの手元を見た。

彼が持っているのは、昨日大輔が作ったパスタの残りが入ったタッパー。そう、ジュリアンは昨日、大輔の作った『マギ・マッシュルーム(猛毒)』の料理を汁まで完食していた。


大輔の【頑丈な胃袋】によって、毒素は100%「極上の栄養と免疫成分」に変換されている。

それを食べた一般人は――大輔ほどではないにしろ、一時的に凄まじい『毒耐性(強)』と『自己治癒力』を付与されてしまうのだ。


「……なぁ、ジュリアン。お前、ちょっとその辺の怪しい草、齧ってみて」

「師匠の命令とあれば、喜んで!」

ジュリアンは道端に生えていた、家畜すら避ける激ニガの雑草をむしり取って口に入れた。


「――っ!? う、美味い! 苦味の奥にある大地の滋養を感じる! 素晴らしい食材だ!」

「マジかよ……。俺の料理、他人が食ったらバフがかかる仕様だったのか……」


大輔は自分のスキルの「隠されたバグ」に、今更ながらドン引きするのだった。



ーーその頃、神界のモニター前。


「いや、私の作ったスキル、そんな効果あったっけ!?」


私はポテトフライを詰まらせそうになりながら、自分のタブレットを激しくタップした。

システムログを確認すると、確かに【頑丈な胃袋】で完全無毒化・超栄養化された料理を他人が摂取した場合、数日間の『状態異常無効バフ』が付与されると書いてある。


「完全に忘れてたわ……。まさか、生意気な転生者をMOBとして放り出した結果、その料理を食べた一般人が『最強の毒耐性人間』に進化し始めるなんて、誰が想像するのよ!」


画面の中では、大輔の料理の隠された効果(=万病に効く奇跡の健康食)に気づいた大輔が、「これ、絶対に他人にバレたらヤバい奴だ。ジュリアン、お前今日からうちの試食係(兼皿洗い)な。絶対に口外するなよ」と、ジュリアンを秘密保持のために囲い込んでいる。


「……あはは、結局ジュリアンを雇っちゃった。でもこれで、食堂のメンバーは『大輔、ミリア、ジュリアン』の3人ね。これ以上変な奴を増やさずに、この3人のドタバタ劇を見てるのが、神様的にも一番落ち着くわ!」


私はコーラを飲み干し、少し手狭になった厨房で、3人があーだこーだと言い合いながら仕込みをする姿を、とても満足そうな目で見つめていた。


ご覧いただきありがとうございました!

大輔の料理の隠されたバグ(?)により、ジュリアンがまさかの「毒無効の超健康ボディ」へと進化してしまいました。秘密を守るため、大輔はジュリアンを皿洗いとして正式に(?)雇うことに。


これで『おひさま食堂』のレギュラーメンバーが固定されました。大輔、ミリア、そして新入りのジュリアン。この3人で、辺境のまったりスローライフ料理が本格始動です。


次回、新体制となった食堂で、大輔が次なる「魔界の食材」を使った新メニュー開発に挑む!?

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