神様デザートと、MOBの理想郷
いつもお読みいただきありがとうございます!
ついに本作も、この第8話にて【完結】となります。
チートを没収されて異世界に放り出された大輔ですが、地味スキルだけでとんでもない居場所を作り上げてしまいました。
神様が見守る大輔の異世界スローライフ、その結末をぜひ最後まで見届けていただけると嬉しいです!
「よし、新メニュー、できたぞ」
おひさま食堂の厨房で、高坂大輔は満足げに腕を組んだ。
カウンターの上には、小さなガラスの器に入った、怪しく黄金色に発光するぷるぷるとした物体――プリンが並んでいる。
「し、師匠……! これはもしや、魔の森の最深部にしか生息しないという、幻の果実『ドクドク・ベリー』の果汁を使った……」
「そう、ドクドク・ベリー. 生で食べると内臓がドロドロに溶けるやつな」
皿洗いの手を止めたジュリアンが、戦慄しながらプリンを見つめる。
だが、大輔の【頑丈な胃袋】のパッシブ効果により、その毒素はすでに「脳がとろけるほどの極上の甘みとコク」へと100%変換されていた。
「ジュリアン、ちょっと試食してみて」
「師匠の作った料理なら、たとえ地獄の業火でも喜んで!」
ジュリアンはスプーンを取り、黄金のプリンを口に運んだ。
――瞬間。王都の天才シェフは、その場にガタガタと崩れ落ち、天を仰いで大号泣し始めた。
「うまああぁぁぁぁい!!! なんというクリーミーな口溶け! 甘美な香りが鼻腔を突き抜け、魂が浄化されていくようだ! これぞ、これぞ本物の『神のデザート』だ――!!」
「あ、泣くほど美味かったなら良かった。ミリアさん、これ明日からデザートメニューに追加ね」
「うん! 絶対に大ヒットするよ、大輔さん!」
ミリアが満面の笑みで頷く。
大輔はそんな賑やかな二人を見つめながら、ふと、異世界に落とされた初日のことを思い出していた。
(そういえばあのクソ神、プリンがどうのこうのって言ってたな……)
大輔は出来立てのプリンを一つ手に取ると、店の裏手にある、小さな神棚(大輔の手作り)へと向かった。
チートを没収されて放り出された時は恨みもしたが、結果的に、この地味で、でも温かい居場所を手に入れられたのだ。
「まぁ……なんだ。このスキルのおかげで、今は結構楽しくやれてるよ。ありがとな、クソ神様」
大輔はニカッと笑い、神棚にプリンをそっとお供えした。
◇
――その頃、神界のモニター前。
「う、嘘でしょ……大輔のやつ、私にお供え物してくれたの……?」
私はベッドの上で、感動のあまりシーツをぎゅっと握りしめていた。
画面の中の大輔がプリンを置いた瞬間、私の手元の神様用端末に、ぽこんと本物のプリンが転送されてきたのだ。
私は震える手でスプーンを持ち、その黄金のプリンを一口、口に含んだ。
――ッ!!!!
「お、おいうまぁぁぁぁぁぁい!!! なにこれ、ポテチもコーラも全部ゴミよ!! 大輔大好きーーーっ!!」
私はベッドの上をごろごろとローリングしながら、大号泣と大爆笑を同時に炸裂させた。
口いっぱいに広がる神の如き甘み。生意気だったあの転生者が、自分の力で居場所を見つけ、私を喜ばせるほどの料理人になったのだ。
「……あはは。プリンの賭け、私の大勝ちね」
私は涙を拭い、幸せな余韻に浸りながら、端末の画面を見つめた。
画面の向こうでは、ギルバート男爵が「今日も仕入れてきたぞ!」と最高級の食材を馬車から降ろし、天才シェフのジュリアンが嬉々として皿を洗い、ミリアが笑顔でお客さんを迎え入れている。
そしてその中心で、地味な麻の服を着た大輔が、楽しそうにフライパンを振っていた。
「チートなんかなくても、あいつはもう、世界で一番無敵のMOB(料理人)ね」
私は満足げに微笑むと、そっと端末の画面を閉じた。
神様の退屈しのぎ(観察日記)は、これ以上ない最高のハッピーエンドで幕を閉じたのだった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
チートを没収されてMOBとして放り出された大輔ですが、まさか初期スキルのバグで「食べた人間を毒無効にするバフ料理」を生み出し、王都の天才シェフまで皿洗いとして囲い込むことになるとは、神様も予想外だったようです。
改めて、最後までお付き合いいただきありがとうございました!




