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王都の天才料理人と魔界の出汁

神界のモニター前で特大のコーラを用意した、神様です。

ギルバート男爵をパトロンに迎え、名実ともに辺境一の有名店となった『おひさま食堂』。

ですが、その噂はついに王都にまで届いてしまったようです。

本日やってきたのは、数々の料理コンテストを総なめにしてきたという、プライドの塊のような天才料理人。何やら大輔に勝負を挑むようですが……?


「ふん、ここが噂の『おひさま食堂』か。辺境の貧民どもが群がる店など、見る影もないな」


お昼時の大盛況が落ち着いた頃、まばゆい白のコックコートに身を包んだ、いかにもキザな金髪の男が店内に足を踏み入れた。

男の名はジュリアン。王都の超高級料理店で最年少シェフを務め、『神の舌を持つ天才』と自称する有名料理人だった。


「あ、あの……本日分のパスタはもう売り切れてしまいまして……」

ミリアが申し訳なさそうに声をかけるが、ジュリアンは冷酷な目で彼女を見下ろした。


「勘違いするな、私はそんな俗悪な麺類を食べに来たのではない。この店を仕切る『謎の天才シェフ』に料理勝負を挑みに来たのだ。王都の料理界を騒がせる不届き者を、この私が直々に格付けしてやろうと思ってね」


ジュリアンがパチンと指を鳴らすと、後ろに控えていた弟子たちが、王都から馬車で運んできた最高級の霜降り肉や、金箔のように輝く香辛料をテーブルに並べ始めた。


「さあ、シェフを呼べ! 私の究極の宮廷料理と、どちらが上か白黒つけようではないか!」

あまりの威圧感に身をすくめるミリア。そこへ、奥の厨房から、ヨレヨレの麻の服を着て首にタオルを巻いた大輔が、だるそうに顔を出した。


「あのー、俺がシェフなんですけど。勝負とか面倒くさいんで、王都に帰ってもらっていいですか?」


ジュリアンは大輔の【一目で一般人だとわかる服装】に完璧に騙され、鼻で笑った。

「はっ! 冗談だろう? そんな畑仕事の帰りのようなガキが天才シェフだと? 逃げるなら今のうちだぞ、平民」


「……あー、もう、分かったよ。じゃあサクッと終わらせましょう。そっちの高級食材、使っていいんですよね?」

大輔はため息をつき、ジュリアンが持ってきた最高級の霜降り肉を手に取った。

さらに、自分の懐から、あのいつもの紫に光るトゲトゲの『マギ・マッシュルーム(猛毒)』をドサッとまな板に並べる。


「き、貴様ぁ! それは伝説の即死キノコではないか! 宮廷でも毒殺用にしか使われない禁忌の食材を、料理に使う気か!?」

ジュリアンが驚愕して叫ぶ。


「いや、これが一番良い出汁(ダシ)になるんですよ」

大輔は気にせず、キノコを細かく刻んでいく。【頑丈な胃袋】のパッシブ効果により、大輔が触れている包丁とまな板の上で、猛毒はまたたく間に「異次元の旨味成分」へと100%分解されていく。


大輔はその極上出汁を、ジュリアンの持ってきた最高級霜降り肉にたっぷりと吸わせ、トゲ草のソースでじっくりと煮込んだ。

厨房から立ち上る香りは、ジュリアンが王都で使ってきたどんな最高級香辛料よりも、深く、甘く、凶暴なまでに食欲をそそるものだった。


「な……なんだこの匂いは……!? 私の『神の舌』が、嗅いだだけで美味いと確信している……だと……!?」

ジュリアンは冷や汗を流し、プライドがみしみしと音を立てて崩れていくのを感じていた。


「はい、お待たせしました。『王都産高級霜降り肉の魔界キノコ煮込み』です。はい、食べてみて」


大輔が差し出した皿を、ジュリアンは震える手で受け取り、肉を一切れ口に運んだ。

――次の瞬間、ジュリアンの脳内に電流が走った。


「う、美味すぎるぅぅぅ!! 肉の脂の甘みと、キノコの未知なる旨味が完璧に調和している! 身体の細胞が歓喜に震えているぞ! これに比べたら、私の作ってきた宮廷料理など、ただの泥水ではないかーーーっ!!」


王都の天才料理人は、その場にガサリと膝をつき、大輔の麻の服の裾を掴んで涙を流した。

「まいりました……! どうか、どうか私をあなたの弟子にしてください、師匠!!」


「いや、弟子とかいらないんで、王都に帰ってください」

大輔は本気で嫌そうな顔で、ミリアと一緒に一歩後ろに下がるのだった。



ーーその頃、神界のモニター前。


「あはははは! 天才シェフが初手で弟子入り志願してきた!!」


私は特大のコーラを吹き出しそうになりながら、ベッドの上をのたうち回った。

チート能力を奪って、ただのMOB(村人A)として生きろって放り出したのに、あいつ、王都のトップ料理人まで一瞬で洗脳しちゃったじゃない。


「……まぁ、大輔の【頑丈な胃袋】にかかれば、どんな猛毒食材も究極の調味料になっちゃうからね。相手が『神の舌』を持っていればいるほど、あの異常な旨味の暴力には逆らえないわよ。あーあ、王都にまで大輔の信者ができちゃって、これからどうなっちゃうのよ、私の観察日記は!」


私はコーラをゴクゴクと飲みながら、画面の中で弟子入りを必死に断る大輔の姿を見て、次はどんな美味しい料理(トラブル)が飛び出すのか、ワクワクが止まらなくなっていた。


ご覧いただきありがとうございました!

王都の天才料理人ジュリアン、大輔の「魔界の出汁料理」の前に完全敗北し、まさかの弟子入りを志願してきました。大輔の平穏なスローライフは、どんどん賑やかになっていきます。


次回、弟子入りを拒否されたジュリアンが、大輔の料理を食べたことで、ジュリアンの身体に「ある奇妙な変化」が起き始めて……?

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