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第9話 中枢塔へ行く準備


[BASE SECURITY UPDATE]

――――――――――

簡易警戒網:構築

監視端末:二基接続

保守機械:二機巡回

攻撃機能:停止

警告機能:有効

中枢塔方面への安全経路:一部更新

――――――――――


 朝という言葉が、この星に合っているのかはわからない。


 空の色はあまり変わらない。紫がかった灰色。遠くの旧都市に、青い線がまだらに走っている。家の外では、二機の保守機械がゆっくり歩いていた。ごん、ごん、と足音が一定の間隔で鳴る。


 レンはベッドの上で目を開けたまま、その音を数えていた。


 七回目で、音が一度止まった。


 身体が先に動いた。レンは起き上がり、壁の表示を見る。保守機械一号、巡回停止。理由、障害物除去。敵性反応はない。


「……止まっただけか」

『はい。昨夜の通知は五回です。敵性反応はありませんでしたが、障害物除去、水路圧の変動、保守機械の一時停止が記録されています』

「寝た気がしないわけだ」


 レンは額をこすった。指先に汗はない。昨日よりは身体が動く。だが、眠りは浅かった。警戒音が鳴るたびに目を開け、壁の表示を見て、また横になる。そのくり返しだった。


 それでも、船の床で丸まっていた時よりはましだ。


 レンは水供給口の前に立った。手で水を受ける。今度はこぼさない。飲む。喉を通る冷たさで、少し目が覚めた。


「今日の作業、まとめて出してくれ。細かい確認はあとでいい」

『中枢塔方面への移動準備です。必要項目は、移動用台車、予備電源、簡易防護板、保守機械との連携確認。中枢塔周辺は防衛識別が不安定なため、接近前に退避手順と通信遮断設定も確認します』

「今日は準備で潰れるな。むしろ助かる。いきなり三キロ以上歩けって言われたら、文句を言いながら行ってた」


 壁に工程が出る。


[EXPEDITION PREP]

――――――――――

目的:中枢塔方面への長距離移動準備

必要装備:移動用台車/予備電源セル/簡易防護板/修理工具

連携対象:旧都市保守機械 二機

確認事項:経路障害物/未登録機械/通信遮断設定

注意:中枢塔周辺は防衛識別が不安定

――――――――――


 防衛識別が不安定。


 その一文で、レンは昨日のタレットを思い出した。青いセンサー。横へ転がった時の泥。切ったケーブル。起こせば撃つかもしれない機械が、この先にもいる。


「準備してから行こう。ちゃんと、嫌になるくらい準備する」


 レンは工具箱を開けた。昨日のまま、ニッパーに泥がついている。拭き忘れていた。布でぬぐう。泥は固まりかけていて、刃の根元に残った。


『工具性能が低下します。使用前に水洗いしてください』

「……今やる」


 レンは水を少し出し、ニッパーの根元を洗った。黒い泥が床に落ちる。拭く。朝から床をまた汚した。


「床掃除の道具もいるな」

『簡易清掃具は製造可能です。現在の工程には入れません』

「入れなくていい。作りたくなる」


 外へ出る前に、レンは手動ロックを確認した。閉まる。開く。もう一度閉まる。音は軽い。頼りない。それでも昨日より、入口の横に小さな警告灯が追加されている。未登録対象が近づけば光る。


 保守機械一号が、家の右側で止まっていた。低い車体、四本脚、背中に細いアーム。昨日見た時より近い。武器には見えない。だが、機械の腕は使い方しだいだ。


「一号、今日は中枢塔方面の道を見る。近づきすぎるな。危ないものを見つけたら止まれ。二号も同じだ」

『ローカル通信で命令を変換します。保守機械一号、二号に共有。外部同期は遮断したままです』


 一号のセンサーが一度点滅した。返事のつもりらしい。二号は家の裏側を回っていた。低い足音が一度止まり、また動き出す。


「犬だったらもう少し嬉しかったな」

『犬の定義データはありますが、現在表示する必要は低いと判断します』

「それでいい」


 まずは移動用台車だった。


 昨日、居住モジュールを運んだ大型台車は大きすぎる。中枢塔方面の道路跡は崩れている箇所が多く、あれでは通れない。工場にある小型搬送台車を改造し、工具と電源を載せられるようにする必要がある。


 レンは工場へ向かった。保守機械二機が少し離れてついてくる。自分の足音より、後ろの機械音の方が目立つ。ごん、ごん、かしゃ。歩幅が合わないので、時々変な間ができた。


「こいつら、音がでかいな。静かにすると遅くなるなら、そのままでいい。静かすぎても怖い」

『歩行出力は現状維持します。経路干渉のみ避ける設定にします』


 工場は稼働していた。入口の上に青い表示が出ている。稼働率二十三パーセント。昨日より少し上がっている。


「また勝手に増えたな」

『自己調整による軽微な改善です。ただし、未承認設備の起動は確認されていません』

「その確認が毎回いるんだよ」


 制御卓に手を置く。画面が開く。


[FACTORY CONTROL]

――――――――――

自動工場 D-12F:稼働率 23%

製造候補:小型搬送台車改造部品/簡易防護板/予備電源セル外装

注意:防衛ドローン基礎部品は権限不足

――――――――――


 防衛ドローン、という文字がまだ残っている。


 レンはそこを選ばず、画面の下へ指を滑らせた。


「今日は作らない。権限が増えても作らない。台車と防護板と電源だけだ」

『製造候補を限定します。防衛ドローン関連項目は非表示にします』

「助かる。見えると余計なことを考える」


 小型搬送台車は、工場奥のレール脇にあった。高さは膝くらい。四輪ではなく、低い脚が六本ついている。荷台は狭いが、道路跡の段差には強そうだ。


「これ、俺も乗れるのか」

『耐荷重上は可能です。ただし、段差で転倒した場合、台車ごと横転します。搭乗用途ではありません』

「……荷物だけだな」


 レンは荷台を軽く叩いた。思ったより頼りない音がした。


 改造部品の製造を始める。大きな作業ではない。荷台の固定具、電源セルの固定枠、防護板を差し込むための横溝。工場のアームは低速で動いた。昨日止めた大型アーム三番は、まだ停止したままだ。根元に赤い警告が残っている。


 三番アームのレバーの安全ピンが、床に転がっていた。


 レンは黄色い枠の外からそれを拾った。


「これ、昨日手間取ったやつだな」

『再起動予定がない場合は保管してください。再点検時には事前に外せます』

「再点検がある言い方するなよ」


 改造部品がそろう。レンは小型台車の荷台に固定具を取り付けた。ボルトが一本、うまく入らない。穴の位置が微妙にずれている。


「合ってない。右側を持ち上げれば入りそうだが、手が足りない」

『保守機械一号に保持させます。保持力は制限します』


 一号が近づいてきた。細いアームを伸ばし、台車の右側を持ち上げる。動きはゆっくりだが、力はある。レンは少し身を引いた。


「潰すなよ」


 穴が合った。ボルトを差し込む。回す。固定できた。


「一号、助かった。返事はいらない。こっちが言いたいだけだ」


 台車の荷台に工具箱を載せる。予備電源セルを二本。補修材。ケーブル。短い固定棒。簡易防護板はまだ作っていない。


[CARRIER UNIT]

――――――――――

小型搬送台車:改造完了

搭載可能:工具箱/予備電源セル/補修材/簡易防護板

追従設定:黒瀬レン

保守機械連携:可能

――――――――――


『追従距離は初期値二メートルです。近接しすぎるため、三メートル以上を推奨します。転倒時は停止し、保守機械へ救助補助を出せます』

「最初からその設定でいい。三メートル、転倒時は停止と補助。俺が台車にひかれるのは嫌だ」

『設定しました』


 次は簡易防護板だ。


 中枢塔周辺の防衛識別が不安定なら、何かが飛んでくる可能性がある。ノアは「非致死性の抑止弾、衝撃波、電磁パルス、あるいは不明」と並べた。全部嫌だった。


 防護板は、腕に持つ盾ではなく、台車に立てる折りたたみ式の板にした。レンが持つと疲れる。台車に載せておけば、必要な時に前へ出せる。


[SHIELD PLATE PLAN]

――――――――――

名称:簡易防護板

形式:折りたたみ式

設置先:小型搬送台車前部

防護対象:破片/低出力衝撃弾/風雨

防護不能:高出力兵器/大型機械の直接接触

――――――――――


「高出力兵器と大型機械は見なかったことにする。対応不能項目は、見ても対処できない」

『表示優先度を下げます』

「下げるだけか」

『完全非表示は推奨しません』

「だろうな」


 防護板の製造は早かった。薄い灰色の板が三枚、折りたたみ金具でつながって出てくる。表面には青い細線。板というより、少し柔らかい複合材だ。触ると、指先にざらつきが残る。


 レンは台車の前部に取り付けた。開閉確認をする。開く。閉じる。もう一度開く。途中で引っかかった。


「左か」

『左の上部金具に削り残しがあります』

「見えた」


 レンは工具で削った。削りすぎないように少しずつ。細かい粉が落ちる。防護板を開く。今度は滑らかに動いた。


 ノアがヘルメット表示に、足元の段差を赤く縁取った。見えすぎて、逆に邪魔だった。


「地形警告、少し薄くしてくれ。赤が強すぎて目が疲れる」

『表示濃度を下げます。危険段差のみ強調します』


 表示が薄くなる。見やすくなった。


 次は予備電源セルだった。中枢塔までの往復、通信、台車、保守機械の補助充電。必要量は多い。工場でセルを新造できるほどの稼働率はないが、旧都市内に残ったセルを再調整することはできる。


 コンテナから古いセルを取り出す。筒状で、表面に傷が多い。一本は膨らんでいた。


 レンはそれを持ち上げかけて、すぐ箱へ戻した。


「これは触りたくない」

『使用不可です。危険物として隔離してください』

「見た目でわかるやつは助かる」


 レンは膨らんだセルを別の箱に入れた。危険物、と書きたいが文字を書く道具がない。代わりに赤いテープを貼る。


「この赤テープ箱は触るな」

『危険物箱として登録します』


 使えるセルを二本選ぶ。端子を磨き、外装を補修し、出力を確認する。一本目、安定。二本目、少し低い。


『一本目は台車用。二本目は照明や低出力機器用が適切です。混同防止の表示を推奨します』

「一本線が台車。二本線が照明。俺が忘れたら表示してくれ」


 ラベル代わりに、白いテープを貼る。一本線、台車。二本線、照明。ノアがヘルメット内に小さく表示を出す。


 過保護だと思ったが、助かるので黙っておいた。


 準備が半分ほど終わったころ、通信塔から低い通知が入った。


[COMM TOWER NOTICE]

――――――――――

中枢塔方面より低出力信号。

対象:仮設拠点管理者

内容:経路認証要求

応答:保留中

――――――――――


 レンは手を止めた。


「こっちはまだ行ってない。向こうから来たのか」

『発信源は中枢塔外縁設備の可能性があります。信号のみです。応答する場合、送信内容を制限できます』

「位置は送らない。仮設拠点管理者の存在確認と、通行情報の要求だけ。軌道リングには出すな」

『ローカル中距離応答として処理します。位置情報と外部同期は遮断します』


 工場内の音が続く。かん、ぎい、しゅう。台車の横で、一号がじっと立っている。機械なのに、待っているように見えた。レンはそう思ってから、言葉にしないでおいた。


 表示が切り替わる。


[ROUTE AUTH RESPONSE]

――――――――――

仮設拠点管理者:確認

通行情報要求:送信

位置情報:遮断

外部同期:遮断

――――――――――


 すぐには返ってこなかった。


 レンは防護板の固定具をもう一度確認した。右側、よし。左側、少し緩い。締める。工具を戻す。待っている間に手が動くのは助かる。


 返答は、三分後に来た。


[CENTRAL ROUTE DATA]

――――――――――

中枢塔外縁までの暫定経路を送信。

通行条件:保守機械二機以上の同行

警告:第三検問柱、識別不安定

警告:旧道路 B-7、陥没

警告:中枢塔外縁、防衛試験あり

――――――――――


「防衛試験」


 レンは画面をにらんだ。防衛試験。第三検問柱。旧道路 B-7。陥没。情報は増えた。だが、不安も増えた。


『罠の可能性は否定できません。ただし、中枢塔へ接続しない場合、ノア・コア関連情報と軌道リング制御情報の取得は困難です。防衛試験に備えるなら、識別信号の強化、保守機械の隊列設定、防護板の即時展開、退避経路の登録が必要です』

「全部やる。嫌なものほど先にやる」


 隊列設定は、思ったより細かかった。


 レンが中央。台車が後方三メートル。保守機械一号が前方五メートル。二号が後方右側。防護板は台車前部。危険時は台車をレンの前へ出す。


「管理者じゃなくて、レンを守る配置で登録してくれ。その方がまだましだ」

『レンを保護する配置として登録します』


 一号が前に出る。二号が右後ろへ動く。小型台車がレンの後ろにぴたりとつく。距離三メートル。近すぎない。遠すぎない。振り向くといる。


 工場内で短い試験をする。レンが歩く。一号が前に進む。台車が後ろからついてくる。二号が右後ろを取る。


 十歩目で、台車が床の工具に引っかかった。


 がこん。


 レンはしゃがみ、落ちていたレンチを拾った。いつ落としたのかわからない。工具箱に戻す。


「本番でこれやったら終わるな」

『出発前に装備固定を行ってください。荷台上の工具、予備セル、防護板、外付け固定棒を個別に固定する必要があります』

「今やる」


 荷台に固定ベルトを追加する。工具箱を締める。予備セルを枠に固定する。防護板のロックをかける。レンチは内側に入れる。ニッパーも入れる。固定棒は外側。すぐ取れる位置。


 配置を試す。今度は止まらなかった。


[FORMATION TEST]

――――――――――

隊列移動:成功

台車追従:安定

保守機械連携:有効

装備固定:改善

――――――――――


 次は防護板の即時展開だった。


『防護板を展開します。台車前部に三枚展開。緊急時はしゃがんでください。板の裏での作業は推奨しません』

「隠れるだけか。作業は無理だな」


 台車前部の板が開く。がしゃ、と三枚の板が立ち上がり、低い壁になる。レンの胸くらいの高さ。しゃがめば隠れられる。


 レンは実際にしゃがんだ。板の裏は狭い。膝が床につく。工具箱が邪魔だ。


 板を閉じる。もう一度開く。二回目で、右の板が少し遅れた。


「右、遅い」

『右ヒンジに摩擦があります』

「削る」


 削る。油のような潤滑材を塗る。薬品臭がした。三回目はきれいに開いた。


「よし」


 レンは一度、工場の入口まで歩いた。そこから外を見る。旧都市の中心部は遠い。中枢塔は、まだはっきり見えない。ただ、灰色の空の下、中心部の方に黒い縦線のような影がある。あれかもしれない。


 胸の奥が少し詰まった。


「ノア。中枢塔に行ったら、君のことは少しはわかるか」

『ノア・コア関連情報を取得できる可能性があります。レンの記憶との関連は、現時点では不明です』

「そこまで先に言うなよ」

『質問される可能性が高いと判断しました』

「当たってる」


 レンは声に出さずに笑った。


 工場の外で、二号が瓦礫をどけていた。ごり、ごり、と低い音。道を作る。勝手にではない。今はレンの指示で動いている。


 レンは足元の石をひとつ蹴った。石は水路の手前で止まった。


「距離で出してくれ。中枢塔まで」

『中枢塔外縁まで三・二キロメートル。保守機械の経路更新により、四百メートル短縮されました』

「よし。それなら近くなった」


 家に戻る頃には、台車と保守機械の動きに少し慣れていた。後ろで足音が増えるのはまだ落ち着かない。だが、振り向けば台車がいる。荷物を背負わなくていい。保守機械が前を見る。ノアが地形を出す。


 ひとりで歩くより、だいぶ違う。


 家の前で、ノアが表示を出した。


[EXPEDITION READY CHECK]

――――――――――

小型搬送台車:準備完了

簡易防護板:準備完了

予備電源:二本

保守機械:二機同行可能

経路情報:中枢塔外縁まで取得

未解決:第三検問柱/防衛試験/旧道路 B-7 陥没

――――――――――


「未解決が多い。だが、今日はここまでだな」

『準備上は出発可能です。ただし疲労があります。休息を推奨します』

「はいはい。そういう時だけ素直に聞く」


 レンは家の中へ入った。台車は入口横に待機させる。保守機械二機は外周巡回へ戻す。手動ロックを閉める。警戒網を確認する。


 作業台の上に、明日持っていくものを並べた。予備ケーブル、端子、補修材、細い工具。並べてから、一本だけ余計なドライバーが混じっていることに気づいた。


「なんで入れたんだ俺」


 外す。代わりに短い固定棒を置く。昨日も今日も、結局こういう棒が役に立った。


 壁の表示に、中枢塔の経路が出ている。途中に赤い点が三つ。第三検問柱。旧道路 B-7。防衛試験。


 レンは水を飲んだ。今度は一滴もこぼさなかった。


「明日の朝、出る。天候が悪化したら延期。保守機械が止まったら点検。軌道リングから何か来たら、送信せず受信だけ。ここまではいいな」

『了解しました。条件を登録します』


 レンはベッドに腰を下ろした。足の裏がじんじんしている。今日もたいして歩いていないはずなのに、緊張で疲れた。


『レン。中枢塔外縁から、追加信号です』


 壁の表示が切り替わった。


[CENTRAL TOWER NOTICE]

――――――――――

仮設拠点管理者の準備を確認。

通行試験を予約。

試験開始条件:中枢塔外縁への接近

同行機械:二機以上

警告:試験失敗時、進入不可

――――――――――


「予約されたぞ。こっちはまだ行くって送ってない」

『通行情報要求への応答から、接近予定と判断された可能性があります』

「勝手に予定を入れるな」


 レンはしばらく表示を見た。


 試験失敗時、進入不可。


 撃たれるとは書いていない。だが、書いていないだけだ。進入不可の方法は、いくらでもある。


「明日は、試験を受けに行くわけだな。落ちたら進入不可。それ以外は不明」

『はい。現時点で追加条件はありません』

「不明のまま寝るの、慣れたくないな」


 レンはベッドの脇に置いたヘルメットを見た。傷だらけだ。透明板にも細い傷が増えている。指でなぞると、ざらついた。


「起こす条件は昨日と同じ。通行試験の内容が来たら起こせ。保守機械が勝手に中枢塔へ向かったら止めろ。台車が勝手に動いても止めろ。俺が寝ぼけて外に出ようとしたら、止めろ」

『了解しました。レン、保守機械、台車の異常行動を監視します。外部への送信は行いません』


 ノアの投影が、入口近くでわずかに揺れた。


 レンはベッドに横になった。


 外で、保守機械の足音がする。ごん。ごん。少し離れて、二号の足音。家の横には台車がいる。工場はまだ低く鳴っている。中枢塔からの表示は、壁の端で小さく点滅している。


 レンは目を閉じた。


 三・二キロの表示が壁の端で点いたままだった。消そうとして、腕を伸ばすのをやめた。


 明日の朝、どうせまた見る。


 そのままにした。


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