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第6話 通信塔


[NEXT RESTORATION TARGET]

――――――――――

地表通信塔

位置:旧都市 D-12 東側高台

状態:沈黙

必要資材:簡易アンテナ部品/補助電源セル/高所作業具

危険要素:腐食性降雨/高所落下/軌道設備への送信リスク

推奨設定:受信専用接続

――――――――――


 通信塔へ行く前に、レンは送信回路を外した。


 船内の作業台に、工場で作った簡易アンテナ部品を並べる。細い受信板。旧規格端子。補助電源セル。銀色のケーブル束。どれも新品のはずなのに、どこか古い設備に合わせた色をしている。


「こっちが送信系だよな」

『はい。その赤い印の回路です』

「切るぞ」

『切断すると、通常送信は不可能になります』

「それが目的だ」


 レンはニッパーを入れた。ぱちん、と短い音がした。赤い回路が切れる。思ったよりあっけない。


『送信回路、物理遮断を確認』

「これで勝手に送らない」

『通常送信はできません』

「通常じゃない送信は?」

『通信塔側に独立送信機能がある場合、完全には防げません』

「先にそれを言え」


 レンは切った回路をもう一度見た。細い線一本を切ったくらいで安心するな、ということだ。通信塔は塔であり、たぶん船より大きい。そこに元から送信装置があれば、こちらの部品だけ切っても意味が薄い。


「通信塔側の送信を止めたまま、受信だけ起こせるか」

『可能性はあります。通信塔の主送信系を遮断し、受信系と解析系のみを起動します』

「危ないところは?」

『塔の上部です』

「高いのか」

『推定百二十メートル』

「やめようか」

『通信塔の復旧を中止しますか』

「言ってみただけだ」


 レンは工具箱を閉めた。肩紐を持ち上げると、ずしりと重い。高所作業具、補助電源セル、固定具、予備ケーブル。どれも必要だ。どれも重い。


 左腕の補修跡は、まだ固い。肘を曲げると引っかかる。脇腹も、昨日のワイヤーの跡が残っている。深く息を吸うと痛むので、浅く吸う癖がついていた。


『身体状態から判断すると、休息を延長する選択肢があります』

「延長したら、通信塔は勝手に何かするか」

『現時点では沈黙しています』

「軌道リングは」

『受信信号は継続しています。強度は微増』

「強くなってるのか」

『はい』

「じゃあ、向こうが待ってるうちにこっちで準備する」


 ノアは否定しなかった。


 外へ出ると、雨は弱くなっていた。完全に止んだわけではない。細かいしずくが、ヘルメットに白い筋を残す。だが、昨日より視界はましだった。


 旧都市の光は、また増えていた。


 水路の青。搬送路の青。工場区画の白い光。遠くの谷にも細い線が走っている。眠っていた設備が、ひとつ起こすたびに別の設備を呼び起こしている。


 レンは足元を見た。


 見すぎると飲まれる。

 今は歩く。


『通信塔まで八百四十メートル。旧都市外縁から東側高台へ進みます』

「高台ってことは、登るのか」

『はい』

「百二十メートルの塔の前に高台か」

『はい』

「この星、俺に優しくないな」


 ノアの投影は、今日は少しだけ濃かった。通信アンテナを仮設したせいか、外でも輪郭が崩れにくい。銀髪の端が時々ノイズで欠けるが、以前より人の形に近い。


「ノア、外で見えやすくなってないか」

『受信アンテナ復旧により、船外投影補助信号が安定しています』

「便利になったな」

『限定的です』

「それはもう聞き慣れた」


 通信塔は、近づく前から見えた。


 旧都市の東側、高台の上に黒い柱が立っている。一本ではない。中央の太い塔を中心に、周囲に細い支柱が何本も伸びている。上部には円形のリングが二つ重なっていた。塔の一部は折れ、外装ははがれ、雨を受けた面が白く変色している。


 それでも立っていた。


「あれを登るのか」

『塔下部に保守用昇降路があります』

「昇降路が動けばいいな」

『停止しています』

「だよな」


 高台への道は崩れていた。道路らしきものは残っているが、途中で割れ、段差ができている。水路から流れた水が細く走り、黒い石の隙間に吸い込まれていた。


 レンは一歩ずつ進んだ。工具箱が肩に食い込む。補助電源セルが箱の中でこつ、こつと鳴る。段差を越えるたび、脇腹に痛みが走る。止まる。息を整える。歩く。


『心拍が上昇しています』

「登り坂だからな」

『痛覚反応も上昇しています』

「そこまで見なくていい」

『作業中止基準には達していません』

「なら続ける」


 通信塔の根元に着くころには、ヘルメットの内側が少し曇っていた。レンは首を振った。意味はないが、やらずにいられなかった。


 塔の入口は半分ふさがっていた。曲がった金属扉と、落ちた外装材。その奥に、細い通路が見える。ノアの矢印はそこを示していた。


[COMMUNICATION TOWER D-12E]

――――――――――

主送信系:停止

受信系:停止

解析系:待機

昇降路:停止

非常電源:低下

手動復帰:可能

――――――――――


「手動復帰、また出たな」

『はい』

「この旧文明、手動が好きすぎる」

『緊急時に有効です』

「緊急時に毎回ひとりでやらされる側の気持ちも考えてほしい」


 レンは扉の隙間から中へ入った。狭い。壁に肩が当たる。工具箱が引っかかった。いったん降ろして、先に押し込む。金属の床に箱が当たり、がん、と鳴った。


 塔の内部は冷えていた。外より静かだ。雨音は遠く、代わりに上のほうから風が抜ける音がする。ひゅう、と細く、長い。


 中央には、停止した昇降機があった。箱型ではなく、骨組みだけの作業台だ。ワイヤーが上へ伸びている。動く気配はない。


「これを動かせば上まで行けるのか」

『はい。ただし非常電源が不足しています。補助電源セルを接続してください』

「セルをつなぐ場所は」

『昇降機下部、右側パネルです』


 レンは膝をついた。右側パネルを開ける。中はほこりだらけだった。端子は三つ。ひとつは焼けている。ひとつは折れている。残ったひとつだけが青くかすかに光っていた。


「一本だけ生きてる」

『補助電源セルを接続可能です。ただし、昇降機の上昇は一回分です』

「帰りは?」

『降下は重力を利用できます』

「言い方が嫌だ」

『制動装置は別系統です』

「それを先に言え」


 補助電源セルをはめる。重い円筒形の部品だ。端子に合わせ、押し込む。かち、と音がした。続けて固定具を回す。固い。手袋の中で指が滑る。もう一度押し込み、固定する。


『非常電源、接続。昇降機、限定稼働可能』

「上まで行って、戻れる」

『可能性があります』

「そこは断言しろ」

『制動装置の実動作は未確認です』

「断言しなくていい」


 レンは作業台に乗った。足元は金属の格子だ。下が見える。高くもないのに、もう嫌だった。手すりを握る。冷たい。手袋越しでも、金属の硬さが伝わる。


『上部受信室まで九十六メートル。昇降開始します』

「百二十じゃないのか」

『塔全高は百二十メートル。受信室は九十六メートル地点です』

「ちょっと得した気がするな」

『錯覚です』

「言うな」


 昇降機が動いた。


 がくん、と最初に大きく揺れた。レンは手すりを握りしめた。足元の格子がきしむ。ワイヤーが上で巻き取られ、きい、きい、と嫌な音がする。


 塔の内部を上がっていく。壁の穴から外の光が差し込む。高くなるにつれて、風の音が大きくなった。外装がはがれた場所から雨が入り、作業台の隅に当たって跳ねる。


 レンは下を見なかった。


 見ないと決めた。


 だが、揺れた時に見えた。足元の格子の下に、黒い塔の内部が続いている。ずっと下に入口の光が見える。胃が縮む。手すりを握る指に力が入った。


『握力が上昇しています』

「黙ってろ」

『了解しました』


 昇降機が止まったのは、上部受信室の横だった。作業台と床の間に、二十センチほどの隙間がある。たいした距離ではない。地上ならまたげる。


 ここでは遠い。


「ノア、揺れないよな」

『昇降機は停止しています。ただし風による微振動があります』

「つまり揺れる」

『はい』


 レンは息を吐いた。浅い。もう一度。工具箱を先に床へ置く。手すりを持ち、片足を出す。床に届く。体重を移す。作業台がわずかに揺れる。胸の奥が冷える。


 渡った。


 レンはすぐ壁に手をついた。指先が少し震えている。止めようとすると余計に震えるので、そのまま工具箱を引き寄せた。


 受信室は小さかった。円形の部屋で、壁一面に古い端末が並んでいる。中央には、塔上部のリングへ伸びる太いケーブル束。天井からは、切れた細線が何本も垂れていた。


[UPPER RECEIVER ROOM]

――――――――――

受信系:停止

解析系:待機

主送信系:物理遮断可能

塔上部リング:一部破損

軌道信号:受信圏内

――――――――――


「まず送信系を切る」

『推奨します。左側の赤い遮断レバーです』

「赤いレバーはだいたい嫌な仕事だな」


 レバーは壁にあった。赤いカバーがついている。カバーを上げる。中のレバーは重そうだった。


『遮断後、主送信系の自動起動は停止します。ただし、非常ビーコンは別系統です』

「ビーコン?」

『緊急位置信号です』

「それも切れるか」

『可能ですが、受信系の一部と共有しています。切断すると受信感度が低下します』

「またそれか」


 レンはレバーを見た。切れば安全寄りになる。だが、受信感度が落ちる。軌道リングの信号を読むためにここまで来たのに、読めなくなる可能性がある。


「非常ビーコンは送信するのか」

『条件付きです。外部からの認証要求に応答する可能性があります』

「勝手に返事するってことだな」

『はい』

「切る。受信感度は後でどうにかする」


 レンは赤いレバーを下ろした。がちん、と音がした。壁の奥で何かが外れる。


[TRANSMISSION CONTROL]

――――――――――

主送信系:遮断

非常ビーコン:遮断

送信機能:停止

受信感度:低下

解析系:起動可能

――――――――――


「よし。受信だけ起こす」

『右側端末に補助電源を接続してください』


 端末の下部に、古い端子があった。補助電源セルはもうひとつある。レンは工具箱から取り出し、接続した。端子が少し曲がっている。押しても入らない。角度を変える。入らない。


 焦るな。


 レンは端子を外し、曲がった部分を小さな工具で直した。き、と金属が鳴る。もう一度合わせる。今度は入った。


『補助電源接続。受信系、起動します』


 部屋の端末がひとつずつ点いた。青い光が壁を走る。中央のケーブル束にも細い光が入り、上部リングへ伸びていく。塔全体が、低く鳴った。


 ぶうん、と空気が震える。


 レンは壁に手をついた。


「送信してないよな」

『送信系は遮断されています』

「非常ビーコンも」

『遮断済みです』

「よし」


 モニターに信号が流れ始めた。文字にならないノイズ。線。数字。欠けた記号。ノアの翻訳が重なっていく。


[ORBITAL SIGNAL ANALYSIS]

――――――――――

送信元:軌道リング 第七外周区画

対象:ノア・コア分離片

状態:待機

要求:管理者認証

警告:中枢接続なし

――――――――――


「分離片」

『該当語を確認。ノア・コアの一部が分離している、という意味です』

「君のことか」

『可能性があります』

「中枢接続なしって?」

『上位システムとの接続が切断されている状態です』

「つまり、君は本体から切れてる」

『推定では、はい』


 ノアの声は変わらない。


 だが、レンはノアを見た。投影はいつも通り淡い。銀髪。黒い瞳。表情の動きは少ない。自分が“分離片”かもしれないと聞いても、声は静かだった。


「何か思い出したか」

『いいえ。現在の記憶領域に追加情報はありません』

「そうか」


 レンは端末に目を戻した。指先が冷たい。高い場所にいるせいか、信号の内容のせいかはわからない。


『追加信号を受信』

「出してくれ」


[PARTIAL MESSAGE]

――――――――――

第七管理区、復旧段階を確認。

生存管理者を確認。

ノア・コア分離片、稼働を確認。

中枢塔への接続を要求。

軌道リング、低出力待機中。

――――――――――


「今度は通信塔じゃない。中枢塔って出た」

『はい』

「通信塔の次は中枢塔か」

『復旧順序としては妥当です』

「俺の体力としては妥当じゃない」


 レンは端末の横に手をついた。膝が少し抜けそうになる。ここまで来るだけで疲れた。高所の緊張もある。息が浅い。


 それでも、情報は増えた。


 軌道リング。第七管理区。ノア・コア分離片。中枢塔。


 船の修理から、また一段遠くへ広がった。


「中枢塔の場所はわかるか」

『旧都市中心部に巨大構造物があります。現在は未接続です』

「距離は」

『地上経路で三・六キロメートル』

「遠い」

『はい』

「危険は」

『多数』

「雑になったな」

『詳細地図が未取得です』


 その時、端末の画面が赤く光った。


[WARNING]

――――――――――

遮断済み送信系に外部認証要求。

非常ビーコン:遮断中

主送信系:遮断中

外部要求:継続

負荷上昇

――――――――――


「外から開けようとしてる?」

『軌道リングから認証要求が継続しています。送信系の遮断部に負荷がかかっています』

「切ったのに」

『物理遮断は有効です。ただし、塔側の古い制御が応答しようとしています』

「止めろ」

『右側の遮断補助端子を外してください』


 右側。どれだ。端子が多い。赤い線、青い線、黒い太い線。ノアの矢印が一つを示す。レンは工具を取った。


 端子が熱い。


「熱くなってる」

『負荷上昇中です。二十秒以内に外してください』

「二十秒、好きだな」


 レンは工具を差し込んだ。端子が固い。動かない。もう少し力を入れる。滑る。手袋に汗がたまっている。工具を握り直す。


『十五秒』

「数えるな」


 端子の留め具を外す。ひとつ。ふたつ。最後が固い。指がうまく動かない。工具を入れる角度を変える。


『八秒』

「黙れって」


 外れた。


 端子が跳ね、壁に当たった。ぱち、と火花が散る。部屋の照明が一瞬落ちる。レンは反射的に身を縮めた。


[TRANSMISSION LOCK]

――――――――――

外部認証要求:遮断

主送信系:停止維持

非常ビーコン:停止維持

受信系:継続

解析系:継続

――――――――――


「止まったか」

『はい。送信は発生していません』

「本当だな」

『記録上、送信履歴はありません』

「よし」


 レンはそこで息を吐いた。吐いた瞬間、膝が少し落ちた。壁に手をついて支える。高い場所で膝を抜くな。自分に言い聞かせる。


 端末には、まだ受信データが流れている。だが、これ以上読むのは危ない。塔の送信系が応答しようとした。切ったから止まったが、長くつないでいればまた何か起きるかもしれない。


「必要な情報は取れた。受信を保存して、塔を待機状態に戻す」

『了解しました。受信ログを保存。受信系を低出力待機へ移行します』

「送信系は」

『遮断維持』

「よし」


 塔の音が少しずつ小さくなった。ぶうん、という振動が弱まり、青い光も細くなる。端末は完全には消えない。低出力で生きたまま、静かになった。


[COMM TOWER STATUS]

――――――――――

受信系:低出力待機

解析ログ:保存済み

主送信系:遮断

非常ビーコン:遮断

取得情報:中枢塔位置/軌道リング状態/ノア・コア識別

――――――――――


 レンは工具箱を閉めた。


「降りるぞ」

『昇降機の制動装置を確認します』

「頼む。かなり頼む」

『制動装置、限定稼働可能』

「限定か」

『はい』

「聞かなかったことにする」


 昇降機へ戻る時、足が少し重かった。作業台との隙間をまたぐ。今度は行きより怖い。下を見ない。手すりをつかむ。工具箱を置く。身体を移す。


 作業台が揺れた。


 レンは手すりを握りしめた。声は出なかった。出したら、息が乱れる。


『降下開始します』

「ゆっくりな」

『了解しました』


 昇降機が下がり始めた。最初は静かだった。途中で一度、がくん、と落ちた。レンの膝が曲がる。手すりに胸を打つ。息が詰まる。


「今のは」

『制動の一時遅延です』

「落下って言わないのは気遣いか」

『技術的には落下ではありません』

「今はそれでいい」


 下に着いた時、レンはすぐに降りられなかった。手すりを握る指が固まっていた。一本ずつ開く。手袋の内側が汗で湿っている。


 塔の外に出ると、雨はさらに弱くなっていた。旧都市の空気はまだ有毒だ。だが、遠くの水路から白い蒸気が上がり、工場区画の光が低くまたたいている。


 レンは高台から旧都市を見下ろした。


 船。水路。採掘ライン。工場。通信塔。


 点だったものが、線になり始めている。


『レン』

「何だ」

『受信ログの解析結果を追加表示できます』

「歩きながら聞く」

『了解しました』


 ノアの声が、ヘルメット内に静かに流れた。


『第七管理区は、この惑星上の復旧対象区域を示す名称です。軌道リングは、その上空にある管理設備と思われます。ノア・コアは、軌道リングまたは中枢塔に接続される中核AIの名称である可能性があります』

「で、君は分離片」

『推定では、はい』

「分離片って言われて、何か思うか」

『感情評価は困難です』

「困難か」

『ただし、情報の欠落は作業に支障があります』

「そこは君らしいな」


 レンは足元の石を踏み越えた。膝が重い。背中も痛い。だが、帰り道は見えている。青い矢印が、船まで続いている。


「中枢塔に行けば、君の欠けた部分がわかるかもしれない」

『可能性があります』

「俺の記憶も、何かわかると思うか」

『現時点では関連不明です』

「だよな」


 少しだけ、期待した自分がいた。レンはそれを認めたくなくて、足を少し速めた。工具箱が脇腹に当たり、痛みで速度が戻った。


 船に戻ると、ノアは受信ログの最後を表示した。


[RESTORATION ROUTE UPDATE]

――――――――――

通信塔 D-12E:低出力待機

中枢塔位置:旧都市中心部

必要条件:移動経路確保/地表環境安定化/防衛設備確認

推奨次段階:居住モジュール外殻の製造

理由:長距離活動拠点の確保

――――――――――


「通信塔の次は中枢塔じゃないのか」

『現状では長距離活動に必要な拠点が不足しています。居住モジュールを設置すれば、旧都市中心部への到達可能性が上がります』

「つまり、家を作れってことか」

『簡易拠点です』

「家だろ」


 レンはヘルメットを外した。髪が汗で額に張りつく。給水口の水を飲む。今度は一口目でむせた。急ぎすぎた。手の甲で口元を拭く。


 船の中は狭い。壊れている。焦げ臭い。安全とは言えない。


 それでも、帰ってきたと思った。


「ノア」

『はい』

「明日は、家を作る」

『居住モジュール外殻の製造を開始します』

「言い方」

『家を作ります』

「それでいい」


 モニターの端で、軌道リングからの信号はまだ点滅している。


 こちらは返していない。

 だが、向こうはもう、こちらが生きていることを疑っていない。


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