CROSSOVER episode.1 遠い空に、白い輪が見えた
警告灯が、まだ消えていなかった。
レンは端末の前に膝をつき、焼けたパネルの隙間へプローブを差し込んだ。通電音が低く唸る。焦げた樹脂の臭いが、換気の戻った空気にまだ残っていた。
「ノア、今の揺れは何だ」
『惑星基盤側の振動ではありません。ORIGIN-7内、外部系統からの微弱干渉です』
「外部系統?」
端末に、見慣れないログが開いた。
[ORIGIN-7 CROSS-LINK]
――――――――――
遠隔管理者反応:検出
系統:村落基盤
同期率:0.004%
通信:不可
観測語:MIO
――――――――――
レンの指が止まった。
「……今、なんて出た」
『観測語、MIO。人名である保証はありません』
「もう一回」
『観測語、MIO』
「ミオ、か」
口に出した瞬間、胸の奥が妙に詰まった。
ノアの声は変わらない。
『心拍上昇。呼吸間隔が不安定です』
「見なくていい」
『観測は継続します』
端末の画面が一瞬だけ乱れた。
砂嵐。
その奥に、青い空が見えた。
白い輪。
石造りの村。
白い獣の影。
透明な板を持つ少女の後ろ姿。
顔は見えない。
けれど、レンは息を止めていた。
「……ミオ」
映像はすぐ消えた。
[CROSS-LINK STATUS]
――――――――――
映像断片:消失
通信経路:未確立
管理者候補:別系統に存在
再同期条件:不明
――――――――――
『該当反応は消失しました。再取得を試行しますか』
「いや」
レンは焼けたパネルからプローブを抜いた。
手元が少しだけずれて、金属の縁に指が当たる。痛みで、ようやく息が戻った。
「今は、こっちを直す」
『合理的判断です』
「……でも、ログは残せ」
『保存済みです』
赤い警告灯が、ひとつ消えた。
レンは端末を閉じる前に、もう一度だけ表示を見た。
観測語:MIO。
それが人名である保証はない。
でも、レンにはもう、ただの文字列には見えなかった。
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