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04 end



ブロロロロロロロロロ…

エンジンの振動が高ジュラルミンの機体を震わせる音が飛鳥たちの耳をを支配する。かなりの騒音で会話もままならない。

今は、ジョンの記憶の中、だろうか。

ボッボッ!エンジン音に不吉な音が混ざる。

不調を訴えているのだ。窓の外を確認すると濃緑色の翼と煙を吹いて今にも止まりそうなプロペラとエンジンが見える。

「もう駄目だ。堕ちる。堕ちるんだー!」

涙声でやけになっている叫び声が響いた。声の主を探すと機体の先端。つまりパイロットシートに座って操縦桿を握りしめ、ガタガタと震えている少年と言っても良いような歳頃の男の子が絶望の声を漏らしながらも必死の形相で耐え忍んでいる姿があった。

「四郎くん!!」

突如として先輩が吼えた。

「!?お前誰だ?なしてワーの名を?」

恐怖で震えていたき男の子がキョトンとした顔で先輩をみる。

「やっぱりそうだったか。間違えて無くてよかった」

男の子の反応を見て先輩はホッとした顔つきになる。

「いいか、よく聞くんだ。こういう時は、まず積み荷を捨てて機体を軽くするんだ」

「んだば、そんな事したら敵さ沈めらんなくなる」

いいから。墜落したらその敵の手柄になる。沈められなくとも手柄を得られないだけでこちらのマイナスにはならない。そうだろう?」

「んだな。損はしてねぇ。吊ってる爆弾全部投棄すべし。うりゃ」

みんな何かに掴まって。対ショック。そして四郎くんは操縦桿を思い切り引く」

「え?」

と飛鳥が聞き返すのと、海面で爆発した爆弾の爆風に機体が煽られたのはほぼ同時だった。

「きゃあ!」

とっさに何かに捕まる。

すると、ガタンといって扉が開いた。飛鳥がとっさにつかんだのはドアの開閉ハンドルだったようだ。

「危ない!!」

先輩がとっさに手を伸ばして飛鳥の手をつかむ。

既の所で機外に投げ出されるのは救われた。

この時代の航空機は機内の与圧がされていない。中の空気ごと気圧差で吐き出されることこそないが、固定していないものはいつ滑り出ていってもおかしくはない。

今も機体内部に散っている何かの破片や大きな布袋がコロコロと転がって外に放り出されていく。

いや、ちょっと待て。布袋かと思っていたがもしかし人間?

「ねえ、大変。いま人っぽいのが外に投げ出されて!」

「無理だ。もう助からねぇ」

少年が悲痛のこもった声で言い捨てる。

いや、でも」

「もうとっくに死んでるんだ」

「え⋯」

さっき遭遇した米軍機に撃たれて、仲間も機体もみんなやられちまった。

「ワーたちの任務はその米軍機の空母を爆撃することだったんだ。見っける前に見っけられたっつーわけじゃ」

あまりな内容に飛鳥は何も言葉を発せられなかった。

「こんな時はあれよ。みんなでにっこり笑ってはいピースっ」

ミリルの掛け声に合わせてこの場の全員がニッコリ笑ってダブルピースを決める。

四郎さんの隣!

誰も座っていないと思っていたサブパイロットシートで誰かがムクリと起き上がり、血まみれの顔をこちらに向けて笑顔でダブルピースを決めてくる。

「ぎゃーーー!何なのよ!」

「小鳥遊君落ちついて、大丈夫、死んでいるよ」

「だから驚いているのよ!何で先輩は冷静なのよ」

「何度も聞いたことのある話だから、かなぁ」

「小さい頃、曾お祖父さんに何度も聞かされたんだ」

「そう、苦労したのね」

ほろりと浮かんだ涙をぬぐう。

「はい次シャッターチャンス!仲よくギャルピース」

寝ていた方々はいい加減寝かせて差し上げなさい」

「ちぇー、ミリルからの最大限のサプライズだったのにー」

「意味なく起こされてきっと困惑なさってるから」

「小鳥遊君のほうが凄いよ」

先輩も当惑している。

機体ががぐらりと揺れた。ミリルに操られて操縦がおろそかになったのだ。

「失速しかかっている。四郎君、操縦桿!!」

「え、あ。うりゃああ!」

少年が思いっきり操縦桿を引く。しかし、少年の膂力では力及ばずに引ききれない。

「現代ならばフライ・バイ・ワイヤとか機械的に操縦をサポートできるから操縦桿も軽いんだが、この時代ではそうもいかない」

「がんばるんだ!ここを乗り越えれば幸せな未来が待ってるんだぞ」

「お、おう」

「貴方は病気らしい病気もせずに、沢山の孫やひ孫に囲まれて98で大往生を迎える」

「ワーにも嫁っ子が来るんだか?!」

「ああ?来るさ、仲睦まじく暮らせるよ」

「それはけっぱらねばまいねえの!」

少年の顔に活力が戻った。

「あたしはまだやりたいことが沢山あるし、それはあたしがやらなくちゃいけないことで、他の誰も代わりなんてできないと思ってる。

いや、他の誰かに代わりなんてさせてたまるもんですか!

あなただって、きっとそうよ

。あなたにしか出来ないことを、あなたがやらなくちゃダメなの。だから諦めないで!」

気がつくと、飛鳥も少年を激励していた。


「ワーにしかできねえこと?りゃあ!」

気合一閃、操縦桿は引かれた。

機首が上がり、海面スレスレで機体は安定を取り戻し着水した。

ありゃ?時間がほどけた。

。「さっみまであんなにからまっていたのに」

ミリルが拍子抜けしたような声を出す。

場面が変わった。

様々な出来事をくぐり抜け、ついに時間のほつれを正すことに成功したのだ。

通学途中の電車の中、車内の客が一斉に立ち上がり両手を広げると、ブワサと

白いビラビラが垂れ下がる。プレスリーか何かかな?

「あんまり受け良くなかった?

メリルからのサプライズー」

「今どきプレスリーはわからん」

はい、時間再開。ここからがホントのサプライズー。

しかし、時間が戻ったとき飛鳥たちが居たのは通学時間の車内ではなく、夕方の線路端だった。

時間のループから外れ、四次元世界に半身を置いていた時間は、きっちりとこの三次元世界で清算された様だ。

ほつれを直すのにもっと時間が掛かっていたら行方不明者として大事になっていただろうと考えると背筋が凍る思いだ。もっとも、今日1日学校をサボってしまったというのは忌々しき事態なのだが。しかもよくよく考えてみたら、あたしが時間を取り戻して駅のホームで告白すると言うシナリオは夢へと消え、これまで先輩と行動を共にしたことで、完全に告白の機を逸している。

あれだけの冒険の後じゃ、まるでインパクトがない。

あたしの告白なんて、まるで空気だ。

そもそも、本来なら先輩とうまく行くはずだった。なんて煽られて首を突っ込んでしまった訳で、単に踊らされていただけなのではないだろうか?

あたしはミリルを睨みつけるのだが、ミリルは何か危険を察したようで、その場を取り繕うようにあたしと先輩に語りかける。

「キミたちも幾多の困難を二人で乗り越えてさ、トモダチ以上のホラ、あんな感じになれたんじゃないのかね?」

ナルホド、ナイスフォローだミリル。

出会って初めてのグッジョブ!心の中で賞賛の声を送る。

「ああ、そうだな」

先輩も少し照れたように同意する。これは、もしや!スリルは愛を育むって言うじゃない!これはチャンスよ!

「そうよね、あたしたち」「「恋人」「戦友」」「みたいなもの」って、あれ?戦友?なんかおかしいなー?

「ミリル!」

「あい?」

「ねぇ、なんかおかしくない?まだどっか時間ほつれてんじゃね?ねぇ、ねぇってば!!」

「し、知らないよ」

「あ、こら。逃げるな!!」

夕暮れの中、小さな女の子を追い回す女子高生がいると後日噂になってしまったのだが、それはまた別のお話

ミリルが無事に時間観察官になれたのかも別のお話。

短編エンドです。ここまでお読みいただきありがとうございました。

是非とも評価だけでもつけていただけるとありがたいです。元々は面クリア型として考えていたので長くもできたのですが応募用に短めでまとめました。

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