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あの頃を取り戻す



 初めてドールハウスを訪れた時から、有言実行と言わんばかりにショーン少年は毎日やってきた。

 ソルに追い返されることはわかっていたけれど、彼女にだけは絶対に会いたくてやってきた。



 「今日も来たのか。何度言われても弟子を取る気はない。忙しいんだよ俺は!」


 「こんなに人形は美しいのに、店主のあなたがそんなだからお客なんて一人もいないですよね?

  いつもいつも奥に籠って、一体なにがそんなに忙しいんですか?」


 

 「それは!お前には関係ないだろう」


 「そりゃそうですけど、俺はこの子を薄暗い店にずっと置いておく方が嫌ですし」


 「お前にはやらんぞ」


 「知ってますよ。それに、今家には迎えることもできませんし」


 「ふんっ、なら帰れ」


 「だから、合法的にここの従業員になったら毎日会えるでしょ?

  それに、あなたにだってメリットはあるんですよ?」



 ソルは悩んでいた。ショーン少年が嫌いなわけではない。

 みんなの心がすり減ってしまった現代で、昔よく見たようなキラキラと輝く瞳をしていたから。

 あの頃のマリアのように……。



 「ずっと引き篭もって作業したいなら、表の看板をcloseに変えて鍵を閉めてしまえばいい。

  そしたら、僕もここにはこれなくなる」



 そうだ。そんな簡単なことわかっていたはずなのに、どうして。



 「どうしてって顔してますね。僕は答えを知っていますよ」


 「なんだと」


 「あなた自身が、彼女たち人形を愛しているから。大切なんでしょう?」


 「いや、そんなはずは」


 

 戦から帰った後ここには何もなかった。

 こんな俺ができることなんて、人形を生み出すことだけだった。

 だから、作ってた……それだけのはずなんだ。


 思い出すな!


 今はマリアを生き返らせるために生み出してしまった失敗作が積み上がっているだけ。

 ……ほんとうに?


 ダメだ!思い出すな!



 「悪いが、帰ってくれ。叶うことなら、頼むからもうここに来ないでくれないか」



 必死に何かを堪える様子なソル。

 ショーンへとかける声が少し震えていたが、彼は確かに記憶の蓋を開いたようだ。








 ショーンを外へと押し出した手のひらは、やけに暖かく優しいものだった。


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