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戻らない過去と出会う街


 それから数十年の時が経った。



 帝国との戦は終結し、この戦を起こした帝国の第二皇子は、皇太子である第一皇子によって処されたそうだ。

 皇帝陛下は第二皇子派によって毒に侵されていたもののなんとか一命を取り留め、現在は両国の復興と和平に尽力されている。


 長すぎる年月が流れたが、悲劇の街デスターもかつての輝きを取り戻していった。

 あの厄災とも呼べる日を生き残ってしまった者たちを置き去りにして。




 街がどれだけ美しくなろうとも、失った者たちは戻らない。その事実は重い。

 見かけだけはかつてのように戻った街。

 

 どこにいても何をしていても生き残った者たちの隣で、過去が追いかけ続けていた。




 ソルもまたデスターに帰り、かつて営んでいたドールハウスを開業させた。

 マリアと過ごした日々を忘れないために。マリアと再び出会うために。



 ソルはドールハウスの一室から、闇に包まれた夜空を眺めていた。

 あんなに美しいと思っていた夜空はもう、彼の目にうつることはなかった。




 『マリア。俺は戦で片足を失ったんだ。商売道具の腕の片方も今では全て偽物さ。

  瞳ももう光をうつすことはないだろうって、医者に言われたよ。

  精神的なものらしいけど、こちらは不便ないから気にならないんだ。』


 『俺は人形師だから、カラクリを作るなんて簡単だった。

  おかげで生活には困ることなく過ごしているよ。

  ただ、手足を失った後悔があるとすれば、君の温もりを思い出せないことかな。』



 

 ソルは悲しく呟いた後、静かに目を閉じた。

 その時だった。どこからか何者かの囁く声が聞こえた。




 "満月の夜、願いの星に祈りなさい"

 "真っ赤に輝く願いの星に"


 "器となる人形を用意して、愛する者の魂を降ろすのです。”

 “そうすればあなたの願いは叶うでしょう"





 いつかどこかの時代で起こった悲劇が、再び顔を覗かせた瞬間だった。




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