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74,軍法会議。

 

 憲兵隊の隊長が、言った。


「ライラ・オブリビオン中尉。貴官を、国家反逆の容疑で逮捕する」


 するとリスダンまで剣を抜こうとするので、私はあわてて止めた。もう、なぜうちの子たちは、暇さえあれば皆殺し祭りを開催したがるのだろう。

 そりゃあ、私も祭りについては完全否定ではないけども。しかしそうたびたび開催してしまっては、王都の人口が減るでしょうが。


「落ち着いてリスダン。それとヨグ、そんな残念そうな顔をしないの。クッキー職人は、呼吸するように人を殺さないよ。ひとまず、二人は〈探索迷宮(ダンジョン)〉に戻っていて」


「ですが、わが君と──」とリスダン。


 一方ヨグはうなずいた。


「ライラちゃんの命令には従う。現状、ライラちゃんの身が危なくなれば、骨が出る。そしてこの骨を打ち破るほどの使い手は、いま王都にはいない。では戻る」


『骨』というのは、骸骨魔導士スケルトンメイジかな。そういえば邪神ヨグといるときは、一度も現れなかったね。ヨグが眷属になってくれる前には、何度か私のピンチもあったと思うんだけども。

 骸骨魔導士スケルトンメイジの召喚がヨグによって妨げられていたのかな。まぁいまとなっては分析しても意味はないことだし、ヨグちゃんがチートなのはいまにはじまったことでもない。


 憲兵に拘束されて、私は引きずられていった。とりあえず拘禁されるものと思ったのに、どうやら行先は、軍事裁判の行われる施設のようだぞ。


 すでにそこには判事と、陪審員たちがそろっていた。〈王の右手〉の姿はない。かわりに憲兵所属の検事が、私が王国軍の虐殺を指示した罪を言い、死罪を求めてきた。この場合、すでに判事も陪審員も買収されているのかなぁ。


 にしてもなんという、テンポの速さ。

〈王の右手〉は、私がクラウス殿下と接触したのが我慢ならなかったのかなぁ。こっちも悪気はないんだよ。だけども、冥王として誰か選ばなきゃならないのならば、どうしても〈王の右手〉は闇が濃そうだし。

 とりあえず、私は無罪を主張しておこう。


「判事殿、私は無罪を主張いたします。純潔の花嫁衣裳のように真っ白です。信じてー」


 ところで、通常は被告人というものは無罪であり、ゆえに検察側が有罪を証明しないといけないのだ。けども、どうもこの流れだと、私が無罪を証明する必要がありそうだよね。


 そして困ったことに、魔神登場前のサラマンダーは、私の眷属ということになるので。けっこうサラマンダーも、王国軍の兵たちを火達磨にしていたし。私の指示ではないとしても、あそこは痛いよね。


 それと、魔神と死竜の戦いが、どこまで被害を及ぼしたのか。ラン要塞の近隣に、一般国民の居住地がなかったのは、不幸中の幸いだけども。

 死竜は私の眷属だし、魔神は元主であったヨグの監督不行き届きのせいともいえる。そしてそのヨグちゃんは、いまや私の眷属なのだ。黙秘権を行使しようー。


 後ろがあわただしいと思ったら、足早にやって来たのが、ユリシア。


「ユリシアちゃん! やぁ五体満足そうで良かったよ! もう心配かけてー」


 ユリシアをハグして頬ずりしておく。


「お姉さま、遅れてしまい申し訳ございません。ですが、この軍法会議という茶番はすぐに終わらせますわ。すでに手はうってあります」


「だけど軍法会議は、いまはじまったばかりなのに?」


「〈王の右手〉が、このような手段に出ることは分かっていました。〈王の右手〉の最終目的は不明ですが、少なくとも、今回の軍法会議の狙いは明らかですのよ。手駒である判事や陪審員を使い、お姉さまを有罪にする。死罪ですが、お姉さまが大人しく死罪とされるはずがありません。

 というより、われわれ眷属たちがそれを許しません。ですが処刑の場からお姉さまを助け出すことは、王国軍と真っ向からの衝突を意味します。こうして、わたくしたちは晴れて、ロゴスの敵となるわけですのね。そうなると、クラウス殿下はせっかく得た最強の味方を、また失うわけです」


「えーと。つまり〈王の右手〉が軍法会議という手を使ってくると分かっていたので、すでにユリシアは、裏で動いていたということ? どの時点から?」


「魔神と死竜の衝突のとき、お姉さまと離れ離れになってしまってからですわ。わたくしはガリーナと合流し、そのさいローレライが、お姉さまを無事に救出したと分かりました。このとき、わたくしは自分にできる最善の手をうっておくべきと考えたのです。

 すなわち、お姉さまが魔神を片付けても、その一件でお立場が危うくなりかねない。とくに〈王の右手〉は、お姉さまとクラウス殿下の接触のことを、すでにつかんでいるはずだからと」


「おお、さすがユリシアちゃん。かつて最年少で〈王の右手〉になっただけはあるよねー。すると、私が魔神を討伐することもお見通しだったの? 凄い過大評価されちゃっている気がするけども」


 ユリシアが微笑んで、


「お姉さまならば、なしえると分かっていましたわ。ですが、どのような手段を講じたのかは、まだ分かっておりません。よろしかったら、教えてくださいます?」


「邪神ヨグが、私の眷属になったから。かわりに倒してもらったよ──あれ、ユリシアちゃんどうしたの?」


 ユリシアちゃんが絶句しているとは。



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