48,パーティを分ける。
何はともあれ、これで目指すポイントが二つあることが分かった。
まず大ホールには、敵の指揮官であり〈天路歴程〉の一人でもある男(尋問で性別までは判明)が、いる。
そしてクック少将たち、自勢力の捕まった者たちは、地下牢に収容されている。
「えーと。まず〈天路歴程〉の人を倒せばいいのかな? そうしたら、もうクック少将たちも救出したも同然だよねー」
「いえお姉さま。この侵略軍を率いる〈天路歴程〉は、かなり底意地が悪いようです。地下牢の見張りに、王国軍の不意の襲撃があったら、捕虜を皆殺しにしろ──くらいの命令はしているかもしれません。つまりわたくし達が、〈天路歴程〉を攻撃することで、クック少将たちを早死にさせることになるかもしれません。それは避けたいところでしょう」
「うん避けたい、避けたい。だけどユリシアちゃん、クック少将たちの身を心配するなんて、いい子に育ったねぇ」
「お姉さま以外の人間がいくら死んでも困りませんが、まだクック少将には利用価値があります。それにお姉さまがダードン要塞から侵略軍を駆逐し、解放したとき、『助けだした味方の将兵』がいるのといないのとでは、お姉さまの名声の高まりが違ってきますので」
「……さすが実利主義のユリシアちゃん」
「お褒めいただき、光栄ですわ」
「……で、どうするの? 先にクック少将たちを助ける?」
「それでは確実に、〈天路歴程〉にこちらの侵入が気取られてしまいます。ここは同時攻撃でいきましょう。」
「このパーティを二つに分ける、ということ?」
「はい。確かに戦力分散のリスクもありますが、このメンバーでしたら、二つに分けても問題はないでしょう。お姉さまには、いざとなったら骸骨魔導士もいますし。ではこの骸骨魔導士も含めて、戦力が均等になるよう分けます。まずお姉さまのパーティで、〈天路歴程〉の一人を潰しにいきます。すなわち打倒〈天路歴程〉パーティです」
ローレライが遠慮深く挙手して、
「あ、あの~。〈天路歴程〉ということは、サラ・シュタン格の敵、ですよね?? それだとライラ様の御身が、あのー、危ないのではないですか???」
「確かにリスクはありますが、やはり〈古き者たち〉の幹部が相手です。その者が死ぬときは、お姉さまを視界に収めたまま、己が誰と敵対し、そのために早死にすることになったのか、それを理解しながら死んでいただきたいのです。お姉さま、問題ありませんわね?」
「うーん。私、そんな意地の悪いことは考えたことがないけど。まぁ私だって、最前線に出るよ。とくにやることはないけども、みんなを応援しちゃう」
ドラゴが拳をかためて、「うぉぉぉ!!」と声を上げた。
「姐さんにじかに応援してもらえるなんて、そいつは最高ですぜ! 力も百倍、いや千倍、いやいや一億倍ですぜ!!!」
しかしユリシアが冷ややかに、
「残念ですが、ドラゴ。あなたは地下牢への救出パーティです」
「はぁぁぁぁ!! 俺がいなくて、誰が〈天路歴程〉を倒せるってんだよぉぉ!!」
「初代剣聖がいれば充分です。ドラゴ。あなたはいい加減、『アタッカーとしては、リスダンの次点』という現実を受け入れなさい」
ドラゴ、リングに崩れ落ちたボクサーのように、がっくしする。
「どんまい、ドラゴ。リスダンじゃ、ちょっと相手が悪かったよ」
「姐さん………おれは、おれは──姐さんのために、世界一の強い男になりますっっっ!!」
「いや、そういう暑苦しいのはいいから」
ユリシアは、淡々と続けた。
「改めてまして、打倒〈天路歴程〉パーティは、お姉さま、わたくし、リスダン、アンジェラ、チキータです。これにいざバトルとなれば、骸骨魔導士が加わることでしょう。一応、説明しておきますと。チキータは偵察要員、アンジェラはお姉さまの回復要員です。リスダンと骸骨魔導士が前衛として戦い、ローレライは後衛より支援しつつ、お姉さまのガード役です」
「人魚族の王女にガード役をやらせるとは、なんか恐れ多い」
と私。
するとローレライが、
「あ、心配しないでください、ライラ様! お母さまも、『冥王陛下のため半死半生の身になるくらいのガッツをみせなさい』と言っていまたから!!! 頑張りますっっ!」
「気持ちだけ受け取っておくから、ほどほどにね! プリンセスなんだからね!」
ユリシアは続けた。
「残りが、救出パーティです。ガリーナ、あなたが指揮を執ってください。ほかの者は、ガリーナがパーティリーダーですので指示に従うように。ドラゴ、あなたが前衛で戦うのですよ。ビリーロストは支援しなさい。ヨーナス、功績をたてたければ、前に出すぎないようにしなさい。
では任務開始といたしましょう。お姉さま、出発前にお言葉を」
「よーし、がんばろっ~」
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