49,埋め込まれた爆弾。
大ホールの構造上、不意打ちには適していない。それと、なんとなく奇襲するのも卑怯っぽいので、私たちは堂々と行った。
といっても、私はローレライの背後に隠れていたけども(一応言っておくけど、ユリシアの指示だから)。王女様を盾にするとは、これは罰が当たるなぁ。
大ホールにいたのは、長身の若い男だった。鞘にもおさめず、漆黒刀身の刀を装備していた。私たちを見やると、なぜか『待っていたぞ』という顔。
「なるほど、貴様が噂のネクロマンサー」
「噂? いい噂? 悪い噂?」
「俺様の名は、〈天路歴程〉が一人、ガウス! ネクロマンサー! 貴様も冥王ならば、この俺様と一対一で勝負しろ!!」
ふむ。ドラゴと似ている人だなぁ。ドラゴなら話があったかも。いや、速攻でバトっているかな。
一方、ユリシアは考え深げに言った。
「お姉さま、どうもあの〈天路歴程〉、ここまでの反応からして、兵たちに『強制支配』のための爆弾を仕掛けた〈天路歴程〉とは、異なるようです。申し訳ございません、お姉さま。読み違えたのかもしれません。この場には、二人の〈天路歴程〉がいるのかもしれませんわ」
とりあえずガウスからの告白に返事しておかないと。
「ごめんね。私、あんまり暑苦しいのは苦手で」
「問答無用! 秘技《駆ける闇刃》!!」
ガウスが、漆黒の刀を一閃させる。黒い斬撃が、猛スピードで走ってくる。リスダンが長剣を振るい、斬撃を吹き飛ばした。
ガウスがニヤッと笑う。
「ほう。それなりにできる奴がいるようだなぁ!」
対するリスダンは冷ややかにガウスを見返してから、
「わが君、この者の相手は、この私が努めましょう」
「あい、では頑張って!!」
リスダンを送り出したところで、残った私、ユリシア、チキータ、ローレライは作戦会議に入った。
「私が思うに、ガウスみたいな『分かりやすい敵』は、分かりやすいからいいんだよ。いくら〈天路歴程〉でも、分かりやすいからね。分かりやすいって大事。
しかしだね。問題は、兵たちの頭部に爆弾を仕掛けて、『命令拒絶』とか『内部情報の暴露』とかを引き金に爆死させていた、もう一人の〈天路歴程〉だよ。この『爆弾仕込み』の特殊技は、厄介だと思うんだけどね」
「お姉さまの言うとおりですわ。まず、われわれが潰さねばならないのは、もう一人の〈天路歴程〉。しかし現状、どこにいるのかは分かりません。そこで再度の情報収集が必要かと思いますのよ」
「また脳みそが爆発? あれ見ていると、気の毒だからなぁ」
「しかし選択肢はありませんことよ」
「分かったよ。ローレライ、リスダンが忙しいから、かわりに捕虜を取ってきてくれる?」
「わ、分かりました! 頑張ります!!」
頑張ったローレライが、捕虜を一人連れてきた。
その捕虜は、まだ10代後半の若い兵だった。装備品の剣は、ローレライが没収済み。これから脳みそが爆発するかもと思うと気の毒な話だ。
しかしユリシアも、『内部情報の暴露』による脳みそ爆破のトリガー回避に、少しずつこなれてきている。今回は犠牲者ゼロで、重要なことを聞き出せるかもしれない。
捕虜はおびえた様子で、跪いた。
「お、お願いします。お許しください。命だけは──」
ユリシアは穏やかな表情で、
「協力していただけたら、命までは取りませんことよ。では、あなたに尋ねたいのは──あなた、手を見せなさい」
「はい?」
「普段から剣を握っているにしては、まったく綺麗な手をしていますのね。まだ新米ということでしょうか? いえ、最低でも剣の訓練をすれば、手にたこが──お姉さま、この男は!」
捕虜の男がいきなり勝ち誇って、私に向かって両手を突き出してきた。その両手から、何やら禍々しいものが飛び出して、私の顔に着弾する。
ふむ。ダメージはない、けども? なんか脳内で、チクタクいっているんだけども? もしかしてこれ、私の脳内にも爆弾が仕掛けられた?
「かかったな! お前たちが捕虜をとって尋問しているのが判明したので、こうして兵に化けて潜んでいたのだ! お前たちみずからが、この私の前に冥王を差し出したのだ! そして冥王、〈天路歴程〉が一人がロシュ──この名を覚えておけ、冥王。お前を殺す男の名だぞ!」
「え、殺すの確定?」
「お前の脳内には、すでに私の特殊技《埋め込まれた野心》によって、爆弾が仕掛けられた。あとはこの私が起爆を命ずるだけだ。おっとまわりの奴は気をつけろ。この私が死んでも、仕掛けられた爆弾は起爆するぞ」
「え、うそ? これは私、詰んだ流れ?? 死んだ!!」
刹那。
空間が裂け、ウサギが顔を出してきた。
そのウサギは、巨大な懐中時計を取り出して、私に見せる。
「吾輩、〔四つの災厄〕が一人、不可侵の兎、冥王陛下が『詰れた』ので、時間を戻してさしあげる。タぁぁぁぁぁぁぁぁイムトラベぇぇぇぇぇぇル!! ごほっ、ごほ」
変な兎が、最後にむせてる。




