第3節転校生
その少年は、少女に何をもたらすのだろうか。
この日の朝は、私が一番驚いた。
だって、いつも寝坊してばかりの私が目覚ましよりも1時間も早くに目を覚ましたんだから。
私はいつも慌ただしくやってることをゆっくりやって、ゆとりをもって家を出た。
朝ごはんの時にお母さんも大牙も驚いた顔をしていたけど、気にしない。
「う~ん、早起きは気持ちいいな」
朝のあたたかな日差しを浴びながら大きく背伸びをする。
いつもはそんな余裕ないけど、こうしてゆっくり歩くと、朝は本当に気持ちがいい。
ふと前を見ると、朝美が歩いてるのが見えた。
朝に朝美と教室以外のところで会うのは初めてかもしれない。
「朝美、おはよう!」
「・・・!?その声は・・・」
横に並んで声をかけた私に、朝美はゆっくりと横を向く。
私が笑顔を向けると、朝美はすごい勢いで走り始めた。
「大変、遅刻する!」
「え?朝美、待って!」
「だって雪がいるってことは、チャイムが鳴る5分前じゃない!
いつも通りに家を出たのに何で!?」
「朝美、時計!時計を見て!」
「え、時計?」
腕時計を確認した朝美は、いつも通りの時間だと気づいて止まる。
「いつも通りの時間。だとしたら、どうして雪がいるの!?」
「私、今日は早起きしたの。えらいでしょ!」
私が胸を張ると、朝美が肩をつかんできた。
「雪、昨日何か変なもの食べた?それとも頭を打った?何かあるはずよ。
雪がこんな時間に起きるはずないもの!」
「なんだか、ものすごく失礼な扱いを受けてる気がするんだけど」
「本当に大丈夫なの?」
「当たり前だよ!!」
そんな話をしているうちに、いつの間にか校門についていた。
私の安らぎを返してほしいよ、まったく・・・。
「おはよ~」
私がクラスに入ると、みんなぎょっとして時計を見る。
みんなの中で私はどんな扱いになってるのかな?
すごく気になる。
「雪どうしたの?」
「私、今日は早起きしたの。えらいでしょ!」
朝美にしたのと同じように胸を張ると、なぜか笑われた。
「雪、その大きさで胸を張っても全然様になってないよ。むしろかわいそう」
「む、胸は関係ないでしょ!!」
腕を組んで胸を隠しながら叫ぶ。
私の胸はどんなにひいき目に見ても・・・小さい。
みんな、朝美だってちゃんと成長してるのに、どうして私だけ小さいの?
誰か教えて!!
結局誰からも褒めてもらえないまま、私は準備を済ませて席に着いた。
そのまま特に何もないままチャイムがなって、先生が教室に入ってきた。
私は早起きの反動で、うとうとしていた。
「え~、今日は転校生がやってきた」
「おぉ~!!」
周りの皆が盛り上がってるけど、私は眠気に勝てない。
「男ですか?女ですか?」
「ワイルド系?それともインテリ系?」
「どうせなら可愛い子がいいな」
「まぁ落ち着け。見ればすぐにわかるさ。いいぞ、入ってこい」
「はい」
「「うわぁ~」」
教室の扉が開いて、人が入ってくる音がする。
女子の何人かが思わずといったように声を漏らしてる。
私も転校生のことは気になるけど、やっぱり顔は上げられない。
「初めまして。今日からここで一緒に学ばせてもらう神宮 真です。
よろしくお願いします」
声質から男の子だってことは分かる。
それにしては少し声が高い気がする。
まるで鈴を鳴らしたかのようなきれいな声だ。
あれ、この声どこかで聞いたことあるような?
私は何とか顔を上げて転校生を見る。
少し長めの黒髪をさらりと流した美形の男の子。
背も結構高い。
あんな人なら、一度見たら忘れないと思うんだけど。
そこでふと頭に思い浮かんだのは、昨日の出来事。
もしかしたら、あのぶつかりかけた人かもしれない。
「よし、朝のホームルームはこれで終わりだ」
神宮君が席に座って先生が出ていくと、さっそくみんな集まっていく。
私はその様子をぼんやりと眺めてると、朝美がやってきた。
「あの人なんでしょ?」
「確信はないけど、たぶん」
「良かったじゃない、初恋の人が見つかって」
「やっぱりこれって、恋なのかな?」
「私にはそう見えるわよ」
「そっか」
「でも気をつけなさいね。ライバルは多そうよ」
私は横目で神宮君を見る。
神宮君はとても楽しそうに笑ってる。
「うん。がんばるよ!」
自分の気持ちに気づいた雪。
真との関係はどうなっていくのだろうか。
次回を乞うご期待。




