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神々との契約者  作者: 黄昏の月人
第1章生誕の守護者
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第10節 氷結の狩人

少女は戦うための力を得た。

そして少女は、守護者となる。

狼の突進に合わせて体をずらし、すれ違いざまに刀を突きさす。

狼が大きく吠え、身をねじって刀を抜こうとする。

それを逆手に取り、反動を利用して狼を大きく吹き飛ばす。

視界の端でわずかな光がはじけた。

それが何かを認識するよりも前に体が動き、一筋の稲妻を刀で切り裂く。

だが、息つくまでもなく横から庄悟が剣を振り下ろしてくる。

それを、体を後ろに投げ出すことで回避する。

「終わりだ」

庄悟のその声で初めて気が付いた。

さっき吹き飛ばした狼が、すでに僕の着地点に先回りしようとしていることに。

あの速度なら、僕が体勢を立て直すよりも狼が僕の喉元を噛み千切るほうが早いだろう。

ここまで・・・か。

残されたわずかな時間で僕にできるのは、僕がいなくなった後に庄悟が雪と朝美を襲わないように願うことだけだ。

ごめん、二人とも。

僕には、守る事が出来なかった。

ぼんやりした意識の中、狼のうめき声で正気に戻る。

足が地面に着いた後、横向きに転がることで次の狼も何とか躱す。

「誰だ、邪魔しやがったのは!」

庄悟の怒鳴り声があたりに響く。

一体何が狼の動きを緩めたんだ?

目を凝らしてみると、狼の腹部に一本の氷矢が突き刺さっていた。

矢?ここの支部に弓兵はいない。

ということは、新しいエージェント?

まてよ、今ここにいるのは!?

背後を振り返ると、純白のドレスのような服に、青色の鎧を付けた雪が立っていた。

その手には氷の弓、さらに腰の矢筒には狼に刺さっていたのと同じ氷矢。

雪と一瞬目が合う。

雪は小さく頷くと、弓に矢をつがえた。

「チッ!この状況で契約しやがったか。スパークウルフ、先にそいつを片付けろ!」

庄悟の命令で、雪に向かて突撃していく狼。

「雪!」

雪はそれを避けようとはせず、矢から指を離した。

山なりに放たれた矢は、狼の移動速度を考えても手前で落ちる。

「はっ!所詮はなりたての素人だな、どこを狙ってやがる」

「ううん、狙い通りだよ」

確かに雪の矢は手前で落ちた。

けれど、矢は地面に落ちた後、その場を氷漬けにした。

速度に乗っていた狼はそのままそのエリアに突入し、足を滑らせた。

それを確認した時点で、僕は刀を握りしめて駆け出す。

狼の元まで一息に詰め寄り、すぐさま刀を振り抜く。

研ぎ澄まされた刀身は途中で詰まることなく、狼の首を落とした。

さっきのことがあるから、注意深く確認したけど、今度は起き上がる気配はない。

「流石に、首を落とされてまで生きてはいないようだね」

「チッ!新しいエージェントなんてのは想定外だ。俺はここまでにさせてもらうぜ」

「逃がさないよ!」

雪が新たにつがえていた矢を放つ。

その矢は庄悟の頭上を飛び越えて地面に落ちた。

そして今度は見上げるほどの氷壁が現れた。

「ウソだろ。魔術師でもねぇくせに、なんて魔力してやがるんだよ」

庄悟が思わずといった風につぶやく。

その気持ちは分からなくもないが、戦場では決して許される行為ではない。

もはやほとんど感覚の無くなった体を無理やり動かし、呆けている庄悟に刀を振り下ろす。

庄悟も剣を構えて弾こうとするが、力の入っていない状態では不可能であり、剣は庄悟の手から離れて行った。

振り下ろした刀を正面に戻し、庄悟の胸に突きを放つ。

庄悟も身をひねって躱そうとするが、それも想定済みだ。

そして確かな感触と共に、僕の刀が庄悟の胸を貫いた。

「がっ!・・ちく・・・しょう・・・」

庄悟の胸から刀を引き抜き、一度払ってから刀に付いた血を払い、鞘に戻した。

「殺しちゃったの?」

雪が僕の元に来てつぶやく。

「今のところデストラクターを拘束しておく手段はないんだ。だから投降する意思の無い者はこうするしかないんだよ」

「そう・・なんだ」

雪にもう一言何か言おうと口を開きかけたところで、耳に入れている通信機から呼び出し音が鳴った。

「はい、こちら真」

「ちょっとあんた、大丈夫なわけ!?」

「姫木?もしかして、もうこっちの状況は伝わっているのかな?」

「ええ。光樹達が戦っていたのは偽物だったわ。そこから妙に来るのが遅いあんたを衛星で探したの」

「そっか、じゃあ事後処理班と衛生班を送ってくれるかな?」

「なに、あんた怪我したの!?」

「うん、脇腹を結構持って行かれてしまってね。立っているだけでも結構つらいんだ」

「すぐに送るわ。あんまりトロイようなら私が行くわ!」

「え、姫木が来るの?」

「あ、違う!オペレーターの私が現場に行くわけないじゃない。とにかくそこで待ってるのよ。姫木、アウト!!」

「え、ちょっ・・」

通信は一方的に切られてしまった。

まぁ、仕方ないか。

「雪、明日の放課後は空けておいて。本部に案内するから」

「うん、分かった」

雪が代行者となった事に喜びと罪悪感の両方を感じながら、僕はまだ地面に座っている朝美の元に歩いていく。

    


雪は代行者としての力を示した。

これから彼女を待ち受けるものは何だろうか?

次回を乞うご期待。

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