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前世の幕切れ~俺の記憶~

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


『できれば一階を避け、二階以上に住みましょう』


 転勤者にPDFで配布される『転勤のしおり』にそんなことが書いてあった。

 その時、自分は防犯のためだと考えた。

 多分、間違ってはいないだろう。

 実際に一階に住む同僚が「ベランダ開けたら知らないおっさんがいた」と語っていたのだから。

 ちなみに同僚は立派な成人男性で、去っていくおじさんの背中を見送りながらベランダのドアを閉め直したということだ。

 通報しろよと思ったものの、咄嗟にそんな行動を取るのは難しいというか、驚きのあまり頭が真っ白になってしまったらしい。

 それでまあ、俺も二階以上に部屋を借り、無事引っ越しも終わり、徐々に新環境にも慣れてきた頃──トラックが突っ込んできた。

 車を降りて、ささやかなエントラスへ向かい、部屋番号の振られた郵便受けを確認して階段に向かいかけた時だった。

 位置的には一階。

 なるほど、確かに一階は避けた方がいい。……て、さすがにこれは想定外だろ!?

 なんでトラックが突っ込んできたかなんて知らない。

 ただ、激しい衝撃と痛みが走った後、急速に周囲が静かになってぼんやりと思い出したのだ。『転勤のしおり』の記述を。

 意識があったのはそこまでだ。それが人生の幕切れだった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

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