↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/30

拘束

 宮廷の日常は、まず拘束から始まるのが日課となった。


「……ぐっ、苦しい」


「締めて」


 エリザベートの口を借りて、イルマが勝手にコルセットの締め上げを要求した。


「もっと」


 生涯ウエスト51㎝をキープするなんて狂気の沙汰であるが、エリザベート自身がストイックに要求しているように見えるのが業腹だった。


「……いや、無理。マジでもう無理。内臓潰れる」


 エリザベートが潰れたヒキガエルのように喘ぐが、泣き言を封殺するようにイルマが言った。侍女がコルセットをきつく締め、極端に細いウエストに絞られていく。


「もっとよ。さあ、もっと締めて」


 ぎりぎりと情け容赦なくコルセットを絞められ、窮屈というよりも、いっそ絞め殺す気かと思ったぐらいだった。紛れもない拷問に泣き声をあげても無駄だった。


「ちょっ……、マジで無理……」


「エリザベートといえばコルセット。コルセットといえばエリザベート。至上の拘束体験を経ずして真の皇妃と言えますか」


「くそっ、容赦なしか。皇妃オタクめ」


「お褒めにあずかり恐縮です」


「褒めてない」


 エリザベートが悪態をついても、イルマは拘束を緩めることなかった。


 侍女たちにイルマの姿は見えない。


 だから、エリザベート自身が拘束を望んでいるように見える。


 イルマが他人事のように微笑んだ。


「美の象徴も大変ですね」


「こんなに絞められて、澄ました顔でいられるのが信じられない」


 肖像画家がエリザベートを描きに来たが、引き攣った笑みしか浮かべられない。


「ダル着ないの?」


「ありません」


「マジで苦しいんですけど。吐きそう」


「我慢してください」


「見た目(ガワ)が良いと、人生チョロいなって言ったじゃん。あれ、撤回する」


 絶賛皇妃体験中のエリザベート・佐藤が反省したように言った。


「ガワが良すぎると、キツいわ。マジでキツい……。だから、もう許して」


「ようやく分かってきたようですね」


「理解した、した。だから、ちょい緩めて」


 きつ過ぎるコルセットを緩めるよう懇願したが、イルマが容赦なく言った。


「さあ、もっと締めて」


 究極の細身を追及する美の暴力。


 骨が軋ろうと、内臓が潰れようと、美の前に肉体はひれ伏すのみ。


「……鬼」


 必殺の気絶を繰り出そうとしたが、無理だった。


 四方八方を侍女に取り囲まれ、どの方向にも倒れられない。


 ぎりぎりと締め上げられる拘束体験をして、身をもって思い知った。


 絶世過ぎる美女は誰よりも生きづらい。


 まともに息もできやしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。