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第五話 最後の小鳥 二
やがて、時が来た。
静かな夜。
老人は、小鳥を見つめて言った。
「お前は、なにも食べなかったな」
しばらく沈黙があった。
老人は、ゆっくりと続けた。
「……ひとつくらい、手放してもよかったのかもしれんな」
長い年月の中で、
初めてこぼれたものだった
小鳥が、初めて鳴いた
その音は、どこか懐かしかった
次の瞬間
老人の胸の奥の、何かがほどけた
押し込めていたもの
名前をつけなかった感情
見ないふりをしていた後悔
それらが、消えるのではなく
ゆっくりと重なっていく
ばらばらだったものが、
ひとつの流れになる
老人は、目を閉じた
初めて、すべてを抱えたまま
それを受け入れた。
小鳥は、何も食べなかった
ただ
ひとつにしたのだった




