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第五話 最後の小鳥 一
老人は
長い人生を生きてきた
喜びも
成功も
苦しみも
後悔も
そのままに
すべて
自分のものとして抱え続けた
富も
借金も
賞賛も
罵声も
多くを得て
多くを失った
それでも
老人は
手放すことはなかった
ある夜老人は
夢を見た
「おまえは、それらをどうしたい?」
老人は答えられなかった
「すべてを拒んで、ただひとりになって満足かね?」
孤独は、いつも老人の隣にあった
体の一部のようだった
「どうもしないし、どうもかんじない
あたりまえのことだからな」
「……なるほど」
納得したように声は消えた
ある日、小鳥が現れた。
窓から入ってきた小鳥は
窓際に座る老人の肩にとまった
老人は、はじめて拒まなかった
「なにを食べるんだ」
老人は尋ねた
小鳥は、答えなかった
ただ、そばにいた
毎日、窓からやってきて
老人の肩にとまった
老人は何も差し出さなかった
小鳥はなにもさえずらなかった




