表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集 小鳥  作者: 水翔
3/7

第三話 読んではいけない折り鶴

カリカリ、と乾いた音が、夜を削っていた。


紙に触れる指先は冷たい。


部屋の隅には、折り鶴が重なっている。

内側には、書いたものが閉じ込められている。


声にすれば壊れる気がして、

少女は、それを折った。


折って、閉じ込めた。


 

カサ、と音がした。


顔を上げる。


折り鶴が、わずかに揺れている。

 

気のせいだと思った。


また、紙に向かう。

 

カリカリ。

カサ。


音が、重なる。


手を止める。


ひとつが、動いた。

 

次の瞬間。


ふわりと、浮かぶ。


「やめて」

 


折り鶴は止まらない。


文字がにじみ、

紙の白を食い破るように黒くなる。


 

そして。



「――どうして、あのとき言わなかったの」

 


耳をふさぐ。



止まらない。



ひとつ、またひとつ。

 


浮かぶ。



「ほんとは、ずっと嫌だったのよ」

「笑ってしまうわ」

「文句なんていくらでも言えるわ」



言葉が、落ちてくる。



逃げ場はない。


 

それは全部、

言わなかったものだった。



「やめて……!」

 


声は、届かない。



折り鶴たちは、旋回しながら、

吐き出し続ける。


やがて。



静かになる。



最後の一羽だけが、残る。



目の前に、浮かぶ。


 

動けない。



それだけは、

聞かずにいられなかった。



折り鶴が、口をひらく。


それは、ひどく静かな声だった。



「――ほんとうは、わたしは、たすけてほしかった」

 


その言葉に、

少女は、すぐには意味を与えられなかった。

 


視界が、揺れる。

 

 

それだけは、書けなかった。

 


書けば、

壊れる気がしていた。



涙が落ちる。


折り鶴は、ぽとりと落ちた。



なにもなくなった部屋は、静まり返る。

もう、カリカリという音はしない。



胸の奥で、

なにかだけが、まだ鳴っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ