表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『辺境伯令嬢と竜の子』 ―滅び行く者たちと未来に向かう者たち―  作者: 鶴見 日向子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/16

第八話 ―飛んできた令嬢と通信の魔法具―

未知との遭遇?(古すぎ!)回です

フィーユの言う通り、数時間するとヴァルドが戻って来た。


「こちらから移転できる魔法陣を今から作ります。数時間お待ちください」


グレースの目の前で作業を始めようとする。


「そんなところに作らないでよ! ここに来た人が飛んで行くじゃない!!」


フィーユが叫んだ。


「あ、失礼しました。どこに作りましょう……」


「あの、あちら側の魔法陣は、どこに作られましたの?」


セレシアが尋ねる。


「元の場所の隣です」


ヴァルドが答えた。


「また誰か飛んで来ると困るのだけど、ちゃんと無効化しました?」


「あ、してないです」


フィーユの拳がぎゅっと握られる。


セレシアは慌てて止めた。


「あら、よろしいわ。それをお城の安全な場所へ移動させて、こちら側の出入り口もここへ移してくださらない? ここ、おもしろいから、しょっちゅう遊びに来たいわ。次に来る時は侍女と護衛も連れて来るから、迷惑はかけないわ」


グレースが言う。


セレシアは少し考えた。


「そうね。そちらの魔法の使い方、すごく興味があるわ。私もグレースの国へ行ってみたい」


フィーユの拳が解かれた。


「お父様、セレシアに感謝するべきですわ」


――いや、すごい事をやっている父親を尊敬するべきではないのか?


セレシアはそう思ったが、口には出さなかった。


こうして、グレースの国と中央の辺境伯別邸は、転移の魔法陣によって結ばれたのだった。


「お互いの国王には、くれぐれも内密に」


ヴァルドに念を押される。


「わかっていますわ。では皆様、またお会いしましょう」


数時間後、屋敷の納屋の中に魔法陣が作られ、グレースは帰って行った。


数日後。


中央の辺境伯別邸に、フィンがやって来た。


「辺境伯様からの手紙です」


手紙を受け取り、中を読んだセレシアは何とも言えない顔になる。


「情報が遅すぎ……。なんでそうなったのかしら……」


その手紙を執事へ渡した。


執事も「あちゃあ」という顔をする。


そこには、


『そなたの学友である、白髪に赤い目の少女は、外国から消えた伯爵令嬢である可能性が高い。至急保護せよ』


と書かれていた。


「もう、数日前に帰国なさったわ」


「そうなのですか? 辺境伯領に、その国の者達が来て、捜索の協力を依頼されました。それで、セレシア様が以前書いてくださった手紙の内容を思い出し、早馬で知らせろと言われて、飛んで来ました」


辺境伯領にまで捜索隊が出ているとは。


ヴァルドは、すごい国際問題を引き起こしていたらしい。


フィーユの拳が再び握られる。


「まあまあ、もう解決したから」


セレシアが慌ててなだめた。


「その方は?」


フィンが尋ねる。


「あ、ヴァルド様の娘のフィーユよ」


フィンの目が丸くなる。


「あのヴァルド様のお嬢様! 初めてお目にかかります。私は辺境伯領で騎士をしております、フィンと申します。お見知りおきください」


フィンは跪き、頭を下げた。


「なんでこの人、頭下げているの?」


フィーユが不思議そうな顔をする。


「一応、ヴァルド様は竜の使いとして尊敬されているのよ。あなたのお父様はすごいの」


セレシアが説明した。


「えー、あのお父様が?? 信じられない!!」


「フィーユ、やめましょうね。ヴァルド様にも立場があります。あなたのお父様という以外にも、色々なお立場をお持ちなのです」


「そうなんだ……。いつもお母様に――」


セレシアは慌ててフィーユの口をふさいだ。


「フィン、疲れたでしょう? 馬を走らせたの?」


「いえ、途中までは……」


そこへアーチャが姿を現した。


「僕が乗せて飛んで運んだ。途中の山道は、馬では時間がかかるからね」


「あなたも来ていたのね」


セレシアはアーチャを抱きしめた。


「恥ずかしいよう~~。僕はもう大人なんだよ。子供じゃないんだ」


そう言いながらも、どこか嬉しそうだ。


「え? それって竜よね? 初めて見たわ。小さいのね」


フィーユが目を見張る。


「体の大きさを変えられるんだ。本当はもっと大きいんだよ。でも家の中で大きくなると、家が壊れちゃう」


「体の大きさを変えられるなら、形も変えられるんじゃないの?」


フィーユが何気なく言った。


「確かに!」


フィンも感心する。


「アーチャ、人間になれれば、セレシアとここに住めるぞ」


フィンが言う。


「セレシア様を恋しがっていてね。それで今回、こっそり連れて来たんだ。屋敷の中だけなら大丈夫だろう?」


「そうでもないんだけどね。あ、来た。アーチャ、隠れて」


外の納屋の扉が開く音がした。


納屋は狭いため、一人ずつしか出入りできない。


「お嬢様、雨の時に困りますから、納屋と屋敷の間に屋根を作りましょう」


護衛の騎士が、日傘を持ちながら言う。


「そうね。日差しが当たるのも、私の肌では困るわ」


グレースである。


侍女と護衛を伴い、侍女がうやうやしく庭側の扉を開けた。


「ごきげんよう。今日は通信機をお持ちしたのよ。これがあれば、お互い行き来する前に予定を確認できるわ」


侍女が、手のひら大の透明な球体を差し出した。


セレシアの目が輝く。


「これ、どうやって使うのですか?」


「まず魔力を込めます。光り輝いたら使えます。今、試してみますね」


グレースが球体へ指を当てると、少しずつ光が増していく。


「お父様、こちらがセレシア様です」


なんと、球体の中に中年男性の姿が映った。


「セレシアでございます。お会いできて光栄でございます」


思わず挨拶をしてしまう。


「おお、なんと美しいお嬢様なのだ。娘が世話になった。これからも仲良くしてほしい」


「はい。お友達になれて光栄でございます」


フィンは呆気に取られ、つい球体へ顔を近づけてしまった。


「その方は?」


向こう側で、少し驚いたような声がする。


「失礼いたしました。私の幼馴染の騎士が、ちょうど来ておりまして、居合わせました。口の堅い、信用できる人間でございます。ご安心ください」


(手紙の内容を話す人間の口が堅いのか?)


と、フィーユは密かに思ったが、口には出さない。


「お父様、こちらが『フィーユ』ですわ」


フィーユが球体へ顔を近づけた。


「そなたの父が娘を返してくれたと聞いた。ありがたい。くれぐれも礼を伝えてほしい」


「かしこまりました」


「では、そろそろ魔力がなくなるので切りますね」


グレースが指を離すと、球体はただの透明な玉へ戻った。


「流す魔力の量で話せる長さが変わるわ。魔力を蓄えておけば、もっと長く話せるの」


グレースがにっこり笑う。


「こんな貴重な物……預かっていいの?」


「いいの。うちの国では当たり前にあるものだから」


(いや、それがあったら辺境伯領へもっと早く連絡が行ったのでは?)


そう思ったが、セレシアは何も言わなかった。


グレースが連れて来た護衛が、なぜかフィンの顔をずっと見つめている。


セレシア、フィーユ、グレースの三人は、お茶を飲みながら話をしていた。


フィンはセレシア達の後ろに立っている。


護衛のつもりなのだろう。


グレースの侍女が、そっと護衛へささやく。


「あの方に似ています……まさか……」


「そなたもそう思うか?」


その会話を、アーチャは姿を隠しながらもしっかり聞いていた。


数時間後、グレースは二人を伴い帰って行った。


「しかし、すごい物を置いて行ってくれたわね。どういう仕組みなのかしら?」


フィーユが球体を覗き込み、指先で軽く触れた。


「魔力を注ぐって言っていたわね。どのくらい吸収されるのかしら?」


フィーユが魔力を流してみる。


すると、向こう側の風景が映し出された。


「おい、行方不明の王子そっくりな青年がいたな?」


「はい。辺境伯領の騎士と言っていました」


「辺境伯領へ行った者も同じ事を言っていました」


「実物を見ましたが、本当にそっくりでございました」


三人は顔を見合わせる。


球体から離れ、ひそひそと話す。


「なんか、見てはいけない事を見て、聞いてしまったようね」


セレシアはつぶやいた。


「これって、どうやったら切れるのかしら?」


「もしかして、魔力が尽きるまで丸見えで丸聞こえって事?」


「こちら側も気を付けましょう」


執事が黙って球体へ布を被せた。


声が聞こえなくなる。


「魔力を遮断する布でございます」


「フィン、なんかあなた、変な事に巻き込まれそうよ。早めに辺境伯領へ帰った方がいいわ」


セレシアが言う。


「うん。僕もそう思う。もっとゆっくりしたかったけど、すごくまずい気がする」


アーチャも言った。


「わかった。そうするよ」


フィンはすぐに帰路についた。


その一時間後ぐらいだった――。


お読みいただきましてありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ