第三十一話 ―2度目の告白―
フィンの災難?
セレシアと赤ん坊、そしてヴァルドと四兄、さらにフィンは辺境伯に呼び出された。
そこには両親と3人の兄達が立っていた。
「さあ、どういうことか説明してもらおうか。フィン君」
長兄の目は鋭く、声は冷たい。
「え? 私ですか???」
フィンの目が見開かれる。
「そなた以外に、セレシアが心を許す相手はおらん。なぜもっと早く相談してくれなかったのだ?」
次兄が嘆く。
「水臭いぞ。そんな仲になっていたとは……。
そなたとなら誰も反対などせぬ」
三兄も言った。
「いきなり出産とは、いくらなんでも飛びすぎです」
母も涙を流している。
「とにかく、すぐに結婚式だ。あちらのご両親にもすぐに連絡を取ろう」
例の通信器が使われ、事の次第が伝えられる。
「そういうことであったか。いつの間に……。
わかりました。フィンをよろしくお願いいたします。
そちらへお返しいたしますので、お約束はお守りください。
式は産後、落ち着いてから挙げましょう」
通信は切れた。
そこへ、“ヴァルド対応”侍女が「恐れながら」と前へ出る。
「お嬢様、産後にしてはお元気すぎるように見えるのですが……。
どうやってお産みになられたのでございますか?」
「あら、そういえばそうね。セレシア、体は大丈夫なの?」
夫人が慌ててセレシアへ駆け寄る。
さらに、セレシア付きの侍女がおそるおそる口を開いた。
「あの……男性がいらっしゃる前で申し上げるのも何なのですが、妊娠の兆候などまったくございませんでした。
……月の物も、ちゃんとございましたし……」
皆の視線がフィンからヴァルドへ向かう。
「いったい何をした!!」
全員の声がそろう。
さらに、例の侍女が腕まくりをして前へ出た。
「誤解です!!!」
ヴァルドは消えた。
「あ、逃げた」
四兄が呆れたように言う。
「今さら遅いのですが、この赤ん坊はセレシアが産んだわけではございません。
元は『アーチャ』なのです。
なぜかアーチャがこのような姿になってしまって……。
我々もどうしたらいいのか困っていたのでございます」
兄達の竜も、それぞれ姿を現した。
「アーチャか……。少しは気配を感じるが……なぜそのような姿に?」
四兄竜が言う。
「セレシア様の血を飲み込んでしまったせいではないかと。
あ、事故でございますよ。危害を加えたわけではありません」
皆が静まり返った。
「もう城中に広まってしまっている。竜の件はここだけの話だ」
「そうね。あちらのご両親にもお知らせしてしまったし……」
両親が顔を見合わせる。
「フィンなら、全然問題ない」
長兄が言う。
「元々、家族同然だったからな」
次兄も頷く。
「共に畑を耕そうではないか!」
三兄が力強く言う。
「この国に飛んできたのは運命だったのだ」
四兄が締めくくった。
フィンはしばらく茫然としていたが、一度目を閉じ、決意したようにセレシアへ向き直る。
そして跪き、赤ん坊を抱くセレシアの片手を取った。
「幼い頃から、お慕いしておりました。
これをご縁に、夫婦となっていただけませんか?」
真っ直ぐに目を見つめる。
2人はしばらく見つめ合った。
「わかったあ!!」
その場が一瞬で歓喜に包まれる。
セレシアはすぐに赤ん坊をフィンへ押しつけた。
フィンは「えっ? えっ?」という顔で、ふにゃふにゃした赤ん坊を必死に支えようとする。
「抱き方がわかりません!!」
悲鳴を上げた。
侍女がさっと赤ん坊を抱き取る。
「あー、腕と肩がしびれて、落とすかと思いました。
なのに、いきなり片手を取るなんて、あんまりじゃありません?
赤ちゃんが落ちないか冷や冷やして、言葉もちゃんと聞き取れなかったの。
やっと『赤ん坊を抱くのを代わってほしい』ってわかったのよ。
助かったわ」
セレシアは首や肩、腕を回した。
「もう腕が疲れて、途中から話を聞いていなかったのだけど、何の話をしていたの??」
セレシアがきょとんとする。
フィンは半ば自棄気味に、改めてセレシアへ向き直った。
「幼い頃からセレシア様を慕っておりました。
私と結婚してください。
そして、アーチャを2人の子として育てましょう」
一度でも恥ずかしいのに、二度目があるとは思わなかったフィンである。
「え? え?」
セレシアは真っ赤になった。
今度こそ、ちゃんと聞いていたようで、フィンはほっとする。
「セレシア、ちゃんと返事をなさい」
夫人が声をかけた。
「えっと、その、あの……私でいいの?」
「セレシア様でなくては駄目なのです」
フィンが言った。
「一緒にアーチャも育ててくれるのね?」
「もちろんです!!」
「わかりました。結婚いたしましょう」
今度こそ、その場は歓喜に包まれた。
「幸せになりましょう」
セレシアは力強く言った。
そのままフィンは辺境伯領へ残ることになった。
その後、アーチャは侍女達に預けられ、
フィンとセレシアは両国の国王へ結婚の挨拶へ向かうことになった。
グランヴェル国では――
「そうか。赤ん坊を産んだというのは侍女の勘違いであったのだな?」
国王が言う。
「はい。知人の子を一時的に預かっただけだったのです。
侍女へ説明しておりませんでしたので」
フィンがそれとなく誤魔化す。
「まあ、そのことで2人の結婚が決まったのだ。
その知人には感謝せねばならぬな」
「そうですね」
セレシアは微笑んだ。
フィーユは大喜びだった。
「姉妹になれたんだ。うれしい。
これからも仲良くしようね。
それとね――」
フィーユはセレシアの耳元でそっと囁く。
セレシアは目を輝かせ、ガッツポーズを取った。
「まだ内緒ね」
2人は顔を見合わせる。
「何をこそこそ内緒話しているのだ?」
ヴィルとフィンが不思議そうに見つめる。
「内緒です」
セレシアがにこやかに笑った。
「ついでと言っては何なのだが……」
国王が言う。
「リュカ殿とグレースはどうだろうか?
グレースはこの国では日差しが強くて大変なのだ。
アストレアはそこまで日差しが強くない。
できれば、そちらの国へ嫁がせたい」
フィンとセレシアは顔を見合わせた。
そして、フィンが言う。
「とてもよい組み合わせだと思います。
アストレアには、同じ白い髪と赤い目を持つ娘がおります。
その子は王太子の子と婚約しております。
リュカに打診してみます。
グレース様はご承知なのですか?」
「ふふ、グレースからの提案なの。
日差しは口実。
リュカ様の優しさに惹かれたようだわ」
王妃が優しい笑みを浮かべる。
フィンとセレシアは、同時に頷いた。
そして次は、アストレア城へ向かう。
久しぶりの、公爵邸の転移陣だった。
うんうん、めでたしめでたし(なのか?)




