表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『辺境伯令嬢と竜の子』 ―滅び行く者たちと未来に向かう者たち―  作者: 鶴見 日向子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/38

第二十六話 ―道を切り開く者たち―

いよいよヴィルの国にセレシアが行きます

次の日、中央から「国王の名代」としてゾルピデム公爵がやってきた。


「一応、国王からの『親書』を預かってきた。一応な……」


公爵の目が遠い。


公爵に付き従う侍従の目も遠かった。


「代筆は大変だった……」


ぼそりとつぶやいたのを、フィンは聞かなかったふりをした。


リュカとフィン、そしてヴァルドがその場にいた。


「じゃあ、行ってらっしゃい。後から行くわ」


セレシアとフィーユが見送る。


先にフィンが魔法陣に乗った。


次にリュカ、そして公爵と侍従が消えた。


「四男殿の部屋の方は完成しておる。あとはあちらだな。

一応、今回は『正当な方法』であちらへ行く」


ヴァルドはそう言って転移陣へ乗り、消えた。


「なんか、ヴァルド様、ずいぶん普通になってきていますね」


セレシアがつぶやく。


「うん、私に気を使っているみたい。私の嫁ぎ先だから」


フィーユはそう言った。


母と侍女と話して以来、フィーユは何か吹っ切れたようではあったが、それでも時折考え込む事があった。


「私も婚約者ができたら、そうやって悩むのかな……。

相談に乗ってあげられなくてごめんね」


セレシアは謝る。


「ううん。今でも十分力になってくれてる」


フィーユが照れ臭そうに笑った。


転移陣が光る。


グレースが乗ってきた。


「二人も来てほしいって!」


グレースが嬉しそうに手招きする。


そして一度降りると、再び転移陣へ乗り直して消えた。


「じゃあ、行きましょうか」


二人は微笑み、一人ずつ転移陣へ乗って消えた。


グレースに案内され、豪華な料理が並べられた部屋へ通される。


「今日はよく来てくださった。

ささやかながら、食事を用意させた。


この国の料理を食べてみてほしい」


テーブルの上には、立派な鳥の丸焼きがいくつも並んでいた。


「三兄様も連れて来ればよかったわね」


セレシアがつぶやく。


四兄は何事もないように切り分けられた肉を皿ごと、手持ちの袋へ入れた。


「ふふ、後で渡します。

中で時が止まる袋です。あの魔石を使って作りました」


セレシアは目を見開く。


「私の分も入れて」


こっそりと袋へ放り込む。


「何をしているのですか?二人とも」


少し離れた席から、フィンが口元だけ動かしてこちらを見ていた。


セレシアは切り分けられた鳥をこっそり指差す。


フィンは納得したような顔をした。


「この鳥は美味しいですね。我が領地では取れない種類の鳥です。

どのように育てるのですか?」


フィンが尋ねた。


「おお、これは大変珍しいものなのだ。

あの飛行獣の生まれたばかりのヒナでな。


羽が生えなかったり、大きくならなかったりしたものを料理すると美味いと評判になってな。

今回ふるまわせてもらった。


お気に召していただけたようで嬉しい」


国王が言った。


フィンは二人へ目で合図を送る。


(絶対に三兄には『出所』を言うな!)


その目力だけで、二人は意味を悟った。


力強くうなずく。


「まあ、食べさせてはあげましょう」


確かに、一口食べるととても美味しかった。


「前言撤回。連れて来なくてよかった」


四兄とセレシアは胸をなで下ろした。


鳥以外の料理も、どれも美味しかった。


辺境伯家の料理は素朴である。


デザートの甘いクリームに、セレシアは驚いた。


「騎士の家の子達にも食べさせてあげたい」


自分だけが美味しいものを食べている事に、申し訳なさを感じたのだ。


「領地を豊かにすればいいのだ。それを目標にすればよい」


四兄が静かにつぶやく。


セレシアはうなずいた。


食事が終わると、皆はお茶を飲みながら会談を始めた。


「公爵殿、親書は読ませていただいた。

城下の件はこちらにも責任がある。


物資などを送る方法があればよいのだが……」


国王が言う。


「木材を伐採しながら道を切り開くのはどうでしょうか?

一石二鳥です。


道さえできれば、何とか物資は運べます」


フィンが言った。


「辺境伯領からは人材を出せませんが、中央からなら出せますよね?」


フィンは公爵へ尋ねる。


「血の気の多い者達がいるからな。それらにやらせてみよう。

まずは、どこへ道を作るのが最適か検討しようではないか」


公爵が言った。


「飛行獣とやらが野生で増えているようです。

その操作方法を教えていただき、こちらでも使わせていただけないでしょうか?」


公爵が国王へ尋ねる。


「お互いに、『爆撃には使用しない』という契約を結ぼう。

それならば構わぬ」


国王と公爵は握手を交わした。


魔力を伴った契約書は、二人が血判を押すと光り輝き、二通へ分かれた。


一つを受け取った公爵は、それを丸めて容器へ入れ、懐へしまった。


「飛行獣が使えれば、こちらも大変助かります」


公爵が頭を下げる。


(すでにセレシアが乗っているのに、気づかれなくてよかった……セーフだ)


立ち会っていたフィンは、胸をなで下ろした。


その頃、ヴァルドと四兄は、住む部屋へ案内されていた。


とても広く豪華な部屋である。


「立派過ぎて落ち着きません」


四兄は目を丸くした。


セレシアとフィーユは、ヴィル王子とグレースに連れられて町を散策中だった。


「まあ、狭いよりはよいではないか。

さて、どこに作るか……」


ヴァルドが部屋を見渡す。


「寝室がいいかと。私以外入りません」


四兄が言う。


「寝室はやめておけ。

女性といい雰囲気になった時に、誰かが飛んできたら台無しになる」


ヴァルドが真顔で言った。


「いや、そんな相手いませんし、ここでそういう事をする予定もありません」


四兄は少し顔を赤くして答える。


「そういう者に限って、変なのに捕まるのだ。

ある程度、女性を見る目を養った方がいいぞ。経験は大事だ」


ヴァルドが真剣な目つきで言う。


(年がら年中張り倒されていたヴァルド様には言われたくない)


四兄は心の中で叫んだ。


「バスルームも、人が飛んできたら困るし……

女性の部屋ほどクローゼットは広くないし……」


「ですから、寝室のベッド横に作ってください。

その上に椅子を置いておけば、誰も踏みません」


「そうか。ではそうしよう。

数時間かかる。その間、外へ出てきたらどうだ?」


「いえ、よければどのように作るのか見てみたいです。

駄目ですか?」


四兄が言う。


「地味な作業だぞ。

見ていて面白いとは思わぬが、好きにするがよい」


そう言うと、ヴァルドはペンを取り出し、床へすらすらと何かを書き始めた。


リュカはそれをじっと見つめる。


「古語だな。原始的な文字だ」


細かな文字と図形が、次々と描かれていく。


普通の人間なら、正確に書くだけでも相当な時間がかかるはずだった。


リュカは、ヴァルドの描く図をずっと見続けていた。


そして数時間後、転移の魔法陣は完成した。


「よし、試してみてくれ」


「はい」


四兄は、その上へ乗った。


四兄が主人公化しつつあります。

次もお読みいただけると幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ