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『辺境伯令嬢と竜の子』 ―滅び行く者たちと未来に向かう者たち―  作者: 鶴見 日向子


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第二十一話 ー元・鳥小屋外交ー

いろいろ話題が豊富な回です

「すごく不味くて、食べられたものではなかったそうだ」


中央から戻ってきた三兄が、顔をしかめた。


羽を切られて落下した大型鳥を、食べた人々がいたらしい。


「我が領地の食料確保にと考えたのだが」


「そなたが『焼き鳥』好きなだけであろう」


長兄は呆れたように言った。


二人は『エルフ』の話を聞き、国王に謁見した。


「誤解を与えるような書物は、出回るべきではありません」


そう進言したところ、国王も深くうなずいたという。


「確かに偏見はよくない。

もし、本当にエルフの生き残りがいるのであれば、貴重な存在だ。

その手の書物は取り締まろう」


そう約束してくれたそうだ。


公爵家の転移陣を使ったため、公爵夫妻にも会ってきたらしい。


王太子妃は妊娠しており、今は動けないとのことだった。


「そういえば、あの女官はどうしたのかしら?

元男爵令嬢」


セレシアがふと思い出したように言う。


「ああ。魔力がないので、厄介払いされて孤児院の世話係にされたそうだ。

あの者自身、今では孤児のようなものだからな」


長兄が答えた。


「少しは謙虚になってくれるといいわね」


フィーユがぽつりと言った。


ヴァルドは、ずっと妻に付き添っていた。


そして、二度と無駄な殺生はしないと固く約束していた。


「そんなに、そなたを苦しませていたとは思わなかった。すまない。


あの頃は人間との交流が少なく、深く考えていなかった。

怒りが頂点に達してしまったのだ。


もう、二度としない」


「信じていいのですね」


妻は涙を浮かべた。


妻の腹は日に日に大きくなっていった。


「ヴァルド様、奥様のお名前、思い出せませんか?」


セレシアが言う。


「どうも、お呼びするのに不便で……

お名前があるとよろしいのですが」


侍女も同意する。


「そなた、思い出せぬか?」


妻は首を横に振った。


「執事さん方式でいきましょう。

執事さん、来てください。別邸にいた方の執事さんね」


呼ばれた執事がやってきた。


「ねえ、海外の言葉で『妻』って何て言うの?」


「そうですねえ……

かなり難しいですな。ぴったりの言葉が思い浮かびません。


それよりも、ご自身のお好きな名前を付けられてはいかがでしょう」


「ふーん。

何か呼んでほしい名前はないのですか?」


セレシアが優しく問いかける。


妻はしばらく考え込んだ。


「メアリー……と呼んでいただけますでしょうか。

昔の人間の友人の名前です。


もういないと思いますが……

彼女といた時が、一番楽しかった……」


遠い目でそう言った。


友人の名前は覚えているのに、自分の名前は思い出せない。


セレシアは、何とも言えない切なさを感じた。


「では、我が妻はこれからメアリーと呼ぼう。


メアリー、愛している。

もうすぐ出産だ。

私が付いているからな。大丈夫だ」


ヴァルドは妻の手を握った。


「はい。立派な赤ちゃんを産みたいと思います」


「そなたの体が一番大事だ。決して無理はするな」


ヴァルドがそっと抱きしめる。


「メアリー様は幸せ者だわ。

夫婦愛に、竜もエルフも関係ないのね」


セレシアは微笑ましそうに二人を見つめた。


「ヴァルド殿は産休を取るそうで、しばらく転移陣は作られないそうだ」


長兄が通信器越しにヴィルへ告げた。


「全然、我が国との交流が進まないではないか!

フィーユ殿とも会えぬし」


「そうだなぁ……

だが、ヴァルド様は奥様命なのだ。

我々では逆らえぬ」


「どのくらいだ? 男が産休など聞いたことがない」


「あ、それ、ヴァルド殿には言わないでください。

『国交禁止』とか言い出しかねません。


まあ、もう少し我慢してください」


長兄が苦笑した。


「まったく、しょうがないな……

グレースも寂しがっている。


あの別邸での納屋が懐かしい」


ヴィルが目を細める。


「納屋???」


長兄が首を傾げた。


別邸の納屋に、我が国との転移陣が敷かれていたのだ。

こちらが行くばかりだったがな。


セレシア様も、ぜひこちらへ来たいとおっしゃっていた。

なるべく早い復旧を願う」


通信が切れる。


「納屋……

別邸の納屋って、元は鶏小屋ではなかったか?」


三兄がつぶやいた。


騎士訓練のため中央にいた頃、焼き鳥が好きすぎて鶏を飼育していたのだ。


その後、


「うるさいし臭い」


という理由で納屋に改造されていた。


長兄は、思考を停止することにした。


数か月後、メアリーは無事に女児を出産した。


耳は普通で、魔力も普通。


ただし、髪は白く、瞳は赤かった。


「アルビノの血筋かしら?」


「ふむ。竜にもアルビノはいる。

私の血筋かもしれぬ」


「グレースと同じね」


フィーユが言う。


フィーユは通信器を使い、


「見て見て〜〜! 妹が生まれたの!」


と、赤ん坊をグレースに見せた。


「まあ、うれしい!

私と同じアルビノなんて!

本当に感激だわ」


グレースは涙ぐんでいた。


「これは、やはりフィーユ殿と私には縁があるのだ。

早く転移陣を復活させてほしいものだ。


フィーユ殿と直接お会いするのが――」


そこで通信が切れた。


グレースが切ったのであろう。


「何で、妹とヴィル様が関係するの?」


フィーユは不思議そうな顔をする。


「気になさらないでください」


フィンが静かに言った。


「結局、フィンはそのままなのね。

あちらへ行けば、いろいろしてもらえる立場なのに」


セレシアが言う。


「私には、こちらの生活の方が合っている気がします……。


他国の人がこちらへ来ると皆驚きますが、私があちらへ行けば、その立場になる。


『慣れられるか?』と言われても、自信がありません」


フィンが苦笑する。


「そうかぁ……確かにそうね」


フィーユもうなずいた。


「でも、あちらの魔術具にはすごく興味があるわ。

この通信器といい、大型鳥といい。


前に、あちらの使者がここまで飛んできたけど、一体どれくらい距離があるのかしら?

正確な位置がわからないわね」


セレシアが言う。


「昔、襲撃してきたあちらの国は、今は平和になっている。


軍事に金を使うのが馬鹿らしくなったらしい。

土壌が豊かで作物もよく育つし……

兵になる意味がないと」


いつの間にか、ヴァルドが話に加わっていた。


「うちの国は、私腹を肥やす人達ばかりで軍事費横領もあったけど、その分、民に金が回って豊かだった面もあるわねぇ……」


フィーユがぽつりと言う。


「お母様と私の服、とても腕のいい職人さんが仕立ててくれていたのよ。

なのに、あの襲撃で……

いろいろ失ってしまったわ。


戦争は本当によくない」


フィーユは遠くを見つめた。


城下の復興は、なかなか進まなかった。


土地の取り合いが各地で起きていたからだ。


「国王の権威が弱いからな。

重臣達もほとんど粛清されたし」


セレシアが言う。


「没収した金はあるのだが、肝心の物資がない」


ヴァルドがつぶやく。


「他国から買い入れる方法もある。

だが、それが戦争の原因になることもある」


独り言のようだった。


「他国のこと、私達全然知らないわね。

地理は教わるけど、国内ばかりだわ」


セレシアが言う。


「私は地上移動ばかりで、全体図を把握していない。

空から見渡した方が効率がよいのだろうな」


ヴァルドが言った。


「そうなると、なるべく高く遠くまで飛べる鳥がいいわね。

竜も飛べるけど、速くないし、そんなに高く飛べないし……」


セレシアがヴァルドの顔色をうかがいながら言う。


「竜は、もう増えることはない。

実は、竜帝が息を引き取った。

残っているのも年寄りばかりだ」


「そんな大事なこと、今まで何で黙っていたんですか!?」


セレシアが目を見開く。


「もう、どうでもよくなったからだ。


妻がエルフだと知り、しかも、その種族がほとんど残っていないと知った。


今まで自分がしてきた事は、一体何だったのかと……

少々むなしくなった」


「あれ?

でも前に、番がいて、雌の竜が生まれたって言っていませんでした?」


ヴァルドの顔色が変わる。


「あ……そういえば、そうであったな。

忘れていた。すまない。


赤ん坊を頼む」


ヴァルドはそう言い残し、消えた。


話題が豊富でいいタイトルが浮かばなかったから チャッピーに丸投げしました


君は三兄の分身?結局、焼き鳥がらみのタイトルにあいなりました。

(そうやって、すべてをチャッピーに押し付ける私)

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