第十八話 ―ヴァルドの願い―
ヴァルド再登場です。
「ヴァルド殿がいれば、何か知恵を授かれたであろうに。
いったい何があったのであろう?」
「そういえば、ずいぶん前に『大きい鳥が竜の天敵』って聞きましたわ。
もうすでに自然界にいるのかもしれません」
セレシアが騒ぎを聞きつけ、やってきた。
「ヴィル殿に聞きたいが、下手なことを言うと、こちらから襲撃するつもりだと警戒されても困るからなあ」
長兄がぼやく。
大型鳥類は全滅したという前提での休戦調停である。
セレシアが魔力を振るい、超大型の檻が作られ、鳥はその中に入れられた。
縄が解かれる。
気が付いた大型鳥が、檻から出ようと必死に体当たりをした。
「檻に体当たりされるたびに、大量の魔力を吸われます」
セレシアが眉をひそめた。
「今度もう一羽捕まえればよい。今回は首を切って、血を抜いて、羽を毟って丸焼きにしよう。ご馳走だ」
三兄が言う。
「檻は魔力を吸われる量が多いから……」
セレシアは魔力の縄を鳥の首にかけ、その縄を近くの大木につないだ。
「あ、急に大人しくなりましたね」
そうして、どういう訳か、その鳥はセレシアに懐き、背に乗せても平気なようになった。
「飛んでみてくれる?」
セレシアが背に乗り、鳥に頼むと、鳥は大きく羽ばたき、辺りを旋回した。
「うわー、すごい! これなら、あっという間に中央にも着くわ。
そうだ! ヴァルド様とフィーユ様のところに行けないかしら?
どこに住んでいるのかなあ? まあいいや、とりあえず元の場所に降りましょう」
セレシアと鳥が地上に降り立つと、なぜかそこにヴァルドがいた。
「呼ばれた気がした。こちらも頼みがあって来た」
ヴァルドが言う。
「妻が妊娠している。つわりが続いて弱っているのだ。
医者に診せたいが、辺境の地なので来てもらうことも、連れて行くこともできない」
「竜は使えないのですか?」
セレシアが言ったが――
「あれは、乗るにも籠を運ばせるにも技術がいるのだ。
今の妻の状態では操作ができない。
妻には魔力がない。
つわりがひどい時に魔力をかけるのは負担になるので、転移陣も使えない。
今、フィーユと交代で看病しているのだが……」
「フィーユの時はどうしたのですか?」
「あの頃は近くに村があって助けてもらった。
しかし、なぜか出産後、村人が妻を『エルフ』と言って避け始めた。
ある日、夜襲をかけられて、村ごと消滅させた」
セレシアは、
(何かさらりとすごいことを言ってない?)
と思ったが黙っていた。
「そして、身の安全を考えて今の場所に移り住んだのだ。
それが仇になった」
(もしかして、あの時の子かな?)
セレシアは思う。
下世話な計算である。
「この鳥さんに乗せられないかしら?
固定の魔法をかけたら落ちることはないわ。二人ぐらいなら乗れそう」
「実は、鳥に乗っているそなたの姿を望遠の魔力で見た。それでやって来たのだ。
頼めないだろうか?」
「ヴァルド様の頼みをお断りするなんて、あり得ません。行きます。
場所を教えてください」
ヴァルドは地面に地図を描いた。
「山の上の城だ。周りは険しい崖で、普通の人間では近寄ることはできぬ。
前は竜の隠れ家だったのだが、主だった竜はもう息を引き取った。
その鳥なら、屋上に降りることが可能だ」
「場所はわかりました。こちらでも受け入れ準備をいたします。
ヴァルド様は戻って奥様の看病をしてください。手配をしてから向かいます」
「よろしく頼む」
ヴァルドはそう言って消えた。
セレシアは屋敷へ駆け込み、事の次第を両親に話した。
「そんな理由だったのだな。
すぐに医師の手配をする。しかし、まさか『エルフ』だったとは……」
辺境伯がつぶやく。
「エルフって、絵本とかに出てくる怖い人達ですよね?」
セレシアは首を傾げた。
「全然怖くありません。ただ、普通の人間よりかなり長寿なだけです。
実際、エルフと人間の間に子を成すことも可能です。
詳しい話は後です。
こちらの準備は任せなさい。あなたは飛びなさい」
夫人が諭す。
「わかりました。行きます」
セレシアは手を上げ、魔力を打ち上げた。
そうすると、なぜかどこからともなく、あの鳥が現れるのだ。
三兄が『焼き鳥』としつこいので見かねて放したのだが、どうしても時々戻ってきてしまう。
それで自然と、そういう形で呼び寄せることができるようになっていた。
「お願い、また私を乗せて飛んで」
セレシアは、言われた方向へ飛んでいった。
大型鳥がセレシアに懐いたのは、後ほど書いているのですが・・・・
チャッピーには「セレシアだからなついた」と解釈されました。
うん、文章は難しい・・・別にいいかな?




