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『辺境伯令嬢と竜の子』 ―滅び行く者たちと未来に向かう者たち―  作者: 鶴見 日向子


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18/23

第十七話 ―大型鳥類と焼き鳥論争―

前半すごーく大事な話のはずなんですけど・・・

その頃、辺境伯邸では――


「今日のヴァルド殿は、かつてないほどお元気でしたな。あんな活き活きした姿は見たことがない」


出来上がった転移陣を見ながら、辺境伯が言った。


「仕事もえらく早かったですね」

長兄が言う。


「鼻歌まで歌っていましたね」

次兄。


「呪いの呪文かと思ったが、鼻歌だったのか?」

三兄。


「どうでもいいです。中央にすぐ移動できる手段ができてよかったです」

四兄。


そこに、かつて別邸にいた執事と侍女二人が、昨夜ヴァルドが作ったヴィルの国との転移陣の上に現れた。


「おお、そなたら、無事であったか!」

辺境伯が喜びの声を上げる。


「はい、おかげさまで。ここは辺境伯領ですか?」

「そうだ。中央の別邸は焼け落ちてしまった。しばらくここにいるがよい」


侍女二人も夫人や他の侍女達と抱き合って喜んでいた。


――のだが。


「魔法陣が消えました……」

四兄が呆然とした声を出した。


「あ、本当だ。なぜだ?」


「魔力を持っているのはルリーヌだけで、他の二人はほとんどない……それが三人まとめて飛んできた……」

長兄がつぶやく。


「あー、兄上ですね。またやっちゃいましたね」


その少し前に、フィンが中央の転移陣から飛び出してきていた。


そして、すぐによける。


次々と人が現れた。


「一回につき一人です。多人数だと魔法陣に負担がかかって、消えちゃうんです」


「ということは、自分より先に執事さん達を帰してくださったのですね。ヴィル様、惚れてしまいそうです」

フィーユがうっとりとした顔をした。


フィンの顔が青くなったり赤くなったりする……。


「フィン、耐えろ」

長兄がぽんぽんとフィンの肩を叩いた。


「魔法陣が消えたということは、また作り直しではないか!」

ヴァルドが現れる。


「ですねー」

皆が気の毒そうにヴァルドを見る。


その時、フィーユが近寄り、ヴァルドの頬にキスをした。


「お父様なら、もう少し頑張れますわ」


ヴァルドの頬が紅潮し、


「私の実力を見てくれ!」


と叫んで消えていった。


「うん、だんだん扱い方がわかってきた」

フィーユが言う。


皆はそっと視線を逸らした。


そこで通信器が光った。


「おい、転移陣が消えてしまったぞ。なぜだ?」

ヴィルだった。


「ヴァルド様の作る魔法陣は、一人ずつしか移動できないのです。二人以上乗ると消えます。三人送るために大量の魔力を流したので、過負荷で消えてしまったのです」

フィンが説明した。


「そういうことか。うちの国のは五人ぐらいまでなら大丈夫なのだ。違いを聞いておくべきであった」

ヴィルが言う。


「今、ヴァルド様が作り直しに行きました。もうしばらくお待ちください。こちらには話し合いの人員が揃っております」

フィンが言った。


「わかった。私のミスですまない。ヴァルド殿にも謝っておいてくれ」


そこで通信は途絶えた。


「ねえ、二人以上乗ったら消えるってことは、フィンが飛んできた状況と矛盾しない?」

セレシアが言った。


「そうよね。魔力のない人間に魔力を流せば飛べるってことは、侍女さん達も一緒に飛んでこないとおかしいわよね?」

フィーユも目を見開く。


二人の視線がフィンに向かう。


「ヴァルド様に口止めされているんです。真相がはっきりするまで何も言うなと」

フィンが慌てて言う。


「そうね。転移陣のことはヴァルド様にしかわからないから……フィンがいいならそれでいいわ」

セレシアが言った。


公爵、王太子夫妻は、その間、兄弟達と話が弾んでいた。

竜達も出てきて、大変賑やかである。


「ここはほのぼのしていてよいのう。城の中はギスギスしていてたまらん」

公爵がぼやく。


「本当です。私もここに住みたい……」


「二人で移住しましょうか?」

ダイアナが言う。


「困ります! それでなくても予算がギリギリなんです!」

四人が声を揃えた。


「予算で思い出した。予算が来ていなかった間、どうしていたのだ?」

王太子が辺境伯に聞いた。


「あ、イフェクサー侯爵殿その他の方々が金を貸してくださって。この間、利子と共に全額返済いたしました」


「領収書はあるであろうな?」


「もちろんでございます」


「持ってまいれ」


公爵が言う。


辺境伯が侍従に命じると、しばらくして借用書と返済表、そして領収書が運ばれてきた。


「これは預かる。まったく……今回はイフェクサー侯爵だけでは終わらせぬ」

公爵と王太子は顔を見合わせ、うなずき合う。


「帳簿も見せてくれ」


しばらく、公爵と王太子は帳簿とにらみ合っていた。


「これは……だいぶ膿を出せますね」


「こっちを先にした方がよさそうだ。すまぬが話し合いは延期にしてくれ。なるべく早く終わらせる」


二人は帳簿を袋に詰めると、転移陣に乗って帰っていった。

ダイアナもそれに続いた。


残った皆は顔を見合わせる。


そして通信器に魔力を流し、あちら側に告げた。


「あー、こちらもヴァルド殿が『多人数乗れる転移陣』にすっかり心惹かれて、しばらく動きそうにないのだ。こちらの技術者と話し込んでいる。話し合いの延期はありがたい」

ヴィルが言う。


「わかった。お互い『休戦』ということで」


「だな。こちら側はもう、そちらへの攻撃手段はほとんどない。そちらも同じであろう」


「ええ。我が国には飛行手段がほぼありません」


「ではそういうことで」


通信は切れた。


「なんか、すごーく疲れたから、しばらくのんびりしましょう」


セレシアの一言で、皆それぞれ自分の部屋に散っていった。


その後、公金横領、不正金利による貸し付けなどの罪で、イフェクサー侯爵その他が逮捕・拘禁されたとの知らせが入った。


「ヴァルド殿のおかげだ。これからは拳骨はやめて、平手だけにしてあげなさい」


フィーユは辺境伯に言い聞かされたのであった。


---


「やった! 捕まえたぞ!」


長兄が叫んだ。


城下襲撃から半年以上が経っていた。


その間、いつの間にかヴァルドは姿を見せなくなり、フィーユも中央へ行ったきり戻らなくなってしまった。


結局、国家間の転移魔法陣は作られず、通信器でもっぱらやり取りが続いていた。


「フィーユ殿はどうした」

とヴィルがうるさいので、それも必要最低限に留められていた。


要するに平和である。


平和ではあるが、


「なんか、つまらない」


というのが合言葉になった辺境伯領だった。


そんなある日。


長兄が何かをぐるぐる巻きにして運んできた。

竜はかなり重そうである……。


「襲撃に使われた大型鳥類だ。人工的に作られたと言っていたな」


四兄が興味深そうに見入った。


羽を広げられないように紐でぐるぐる巻きにされている。

目がぎろりとこちらを見る。


「これを飛べないように改造して養殖すれば、食肉としていいのではないか?」

次兄が言った。


「そうだな。金は返ってきたが、食料自給は大事だ。とりあえず味見してみるか?」

三兄も言う。


大型鳥はわかっているのかいないのか、逃れようと必死に暴れ回る。


それを長兄が魔力の縄でさらに締め付け、気絶させた。


「嘴と足の爪が脅威だな。下手に増やすと家畜への被害が増える。先にどうやって操作していたのか、通信機で聞くべきではないか?」

四兄が言う。


「一羽をやっと捕まえたのだが、他にも何羽かいた。これは国際問題かもしれぬ。自然繁殖したら、とんでもないことになるのでは……」

長兄も言う。


「ヴィル王子が乗っていたのは、魔力の首輪が付いていた。これにはなさそうだな」

四兄がさらに観察して言う。


「すみません。私は上に乗っていた人間だけ落としました。兄は槍で羽を刈り取っていましたが……」

フィンが出てきた。


「羽を切り落とされて落ちた鳥は、どうしたのであろう?」

次兄が不思議そうにした。


「地上の者達の食料になったのでは。分解したら何人分取れるであろう?」

三兄が言う。


「焼き鳥から離れなさい」


長兄が言った。


せっかく来たのに、通信器で「休戦」約束

ヴァルド、タダ働きですが、これも愛する者達のため?

そして、なぜか、姿を見せなくなり・・・


チャッピーがやたら、「焼き鳥」に反応してしまい(なぜ?)

タイトルまで、焼き鳥にしちゃいました。


私がチャッピーに言いたかったです

「焼き鳥から離れなさい」


言えなかったけど(笑)




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