第十三話 ー頬の皮は強いか?ー
話しが飛びまくります・・・
がんばってついてきてください
辺境伯が、こほんと咳をした。
「いったいなぜ、ヴィルヘルム王子がここに? ヴァルド殿、説明を頼む。ヴィルヘルム王子だとわかっていても、フィンと勘違いして気安くしてしまいそうになる」
「はい。実は、王都の中心部が爆撃され、相当な被害が出ました」
「それを、なぜ真っ先に言わないのだ?」
辺境伯の拳が震える。
侍女の目が光った。
「話を止めてはなりません!」
その侍女を、四兄弟が必死に羽交い締めにして止めていた。
「ヴィル王子はたまたまこちらに来ていて、その大型の鳥に乗り、フィンとアーチャと共に相手を撃退してくださいました。しかし、空から爆発する玉を落とされたため、被害が広がりました」
ヴァルドは言いづらそうに続ける。
「そして、その攻撃は……ヴィル王子の国からのものと思われます」
ヴィルは目を見開いた。
「そんな馬鹿な。父はそんな命令などしていない。するはずがない。フィンを立派に育ててくれたことに感謝していた。何かの間違いです」
侍女の目が、さらにヴァルドへ向けられる。
「内紛だ。王弟がクーデターを起こそうとして、失敗した。そなたが執事と侍女を国へ送ってくれたおかげで、寸前のところで発覚し、止めることができた。そなたの手柄だ」
ヴァルドはヴィルを見た。
「問題は、それをこの国の国王にどう納得してもらうかだ。城下が破壊された事実は変えられない」
「とりあえず、我が国とつながる魔法陣は破壊しておいたが、そなたの国には、魔法陣を作れる者がいるのであろう?」
「はい。数名おります。ただ、かなり時間がかかります」
「わからぬぞ。時間をわざとかけているのかもしれぬ。あれは一度作れば、複製することが可能だ」
ヴィルの顔色が変わった。
「私が複数人を運べる瞬間移動を使えれば……」
ヴァルドが悔しそうに言う。
「戦争は嫌だ。何も生み出さない。だが、なぜか人間は争いたがる。私は平和に暮らしたいのだ……」
辺境伯も兄弟達も、何も言えなかった。
王国中央の腐敗はひどい。
「まあ、国王は、こちらに予算を出してくれたがな……」
四兄がぼそりと言う。
「だが、結局は重臣達の言いなりだ」
皆が押し黙った時だった。
外から、ばさばさという羽音が聞こえる。
アーチャが、フィンを乗せて帰ってきたのだ。
「あ、鳥もいる。ということは、兄上様もやっぱりここにいたんだね」
アーチャの声が響く。
「すみません、帰ってきてしまいました。兄上も、やはりこちらにいらしたのですね」
フィンが入ってくる。
全員が目を見張った。
「今度こそ、本物だな?」
兄弟達の声がそろう。
「本物?」
フィンは不思議そうな顔をした。
「喜ぶのは後です。話を続けましょう」
夫人が息子達をじろりと睨みつける。
「兄上、これを」
フィンは懐から通信用の球体を取り出した。
「なんと! いったいどこにあったのだ?」
ヴィルが驚く。
「屋敷の焼け跡に埋まっていました。ちょうど光ってくれたので気が付きました。使い方がわからないので、お返しいたします」
「よかった! これがあれば、国と連絡が取れる。ただ、魔力を使う」
「任せなさい!」
三兄弟が同時に言った。
「それは何ですか?」
四兄の目がきらきらと輝く。
「まあ、見ていろ。誰か、これを置くのにちょうどよい台を持ってきてくれ」
窓辺にあった小さなテーブルを、長兄が部屋の中央へ運んだ。
転がらないよう、下に布が敷かれる。
そして、ヴィルが球体に指を当てた。
「こうやって魔力を流してから使います。魔力が切れると自動的に切れます。……おや、ずいぶん魔力がたまっている。こちらではまだ誰も触れていないのに。まあよい」
「ヴィルヘルムだ。誰かいるか?」
光った球体に、ヴィルが呼びかける。
「いるわー。今度こそヴィル兄様よね? グレースです。今どこです?」
「辺境伯領だ。城付近は大鳥警報が出ていて、いられなかった。内乱だって? 驚いたぞ」
「そうなのよ。……って、なんで知っているの? まあいいわ」
グレースは早口で続ける。
「そちらの城下が焼け野原って本当? 確実な情報が入って来ないのよ。転移陣はなくなっているし……」
「危険なので、こちらへは来ない方がいい。転移陣は、こちらの関係者が消した」
「あ、そういえば、捕虜になったそちらの騎士が『王子を誘拐した報復だ』と言っているそうです。私のことですか?」
フィンが横から口を出した。
「そんなことを言って、飛行隊員達をだましたのね。おかしいと思ったわ」
グレースは息を吐く。
「ここで話していても埒が明かないわ。そちらの国王陛下と直接お話できない?」
皆、押し黙ってしまった。
「だったら、あの公爵様はどうかしら? 私にすごく親切にしてくれたわ。信頼できると思う」
「公爵家はいくつかあります。どの公爵家ですか?」
辺境伯が問う。
「あ、聞かなかった! 女官育成所で一緒だった方!」
「そんなの、わかるかー!」
ヴィルが頭を抱える。
「セレシアかフィーユに聞いてくれたらいいわ。一緒だったもん」
「今、ここにはいません」
フィンが答えた。
「私が行って聞いて来よう。数時間待っていてくれ」
ヴァルドが言う。
「数時間? 長すぎるのでは? 瞬間移動するなら、一時間もあれば足りません?」
四兄が突っ込んだ。
「娘に会う時間は、それくらい必要だ」
「…………わかった。行って来てくれ。できれば早く帰ってきてほしい」
辺境伯が手を振りながら言った。
ヴァルドは目を輝かせ、姿を消した。
内乱について、さらに詳しい事情が語られ、まもなく通信は終わった。
あちら側の魔力が尽きたらしい。
そして十五分後。
ヴァルドが、頬に手形を付けて帰ってきた。
「娘は覚えていませんでしたが、セレシア様が覚えていてくださいました。ゾルピデム公爵様だそうです」
「おお、国王の伯父にあたる方だ。あの方なら確かに信頼できる」
辺境伯の目が輝く。
「その手形は?」
ヴィルが不思議そうに尋ねた。
「くそ忙しいのに、邪魔するなと……」
ヴァルドは何事もなかったかのように答えた。
「兄上、あまり気にしないでください。ついでに言い忘れていましたが、この方はフィーユ様のお父上です」
フィンがヴィルに小声で告げる。
「な、なんと。未来の義父に失礼な態度を取ってしまいました」
ヴィルがヴァルドに跪く。
「お嬢様を将来、我が妃にお迎えいたしたく、お願い申し上げます」
場が一瞬、静まり返った。
「ほう。我が娘を嫁にしたいと申すか?」
「はい。あの魔力量、そして父親にすら容赦のない気の強さ、物怖じしない性格。将来の王妃にふさわしいと惚れました」
「ふむ……そなた、王子であったな」
「王太子でございます。一応、将来国王に即位する予定です」
「本当に我が娘がよいのだな? 返品はできぬぞ。本人がよければ許そう。そなた、頬の皮は強いか?」
「どれほどの強さが必要かはわかりませんが、強くしますとも!」
ヴィルが答える。
「本当に、本当によいのだな? 後悔しても知らぬからな」
ヴァルドが念を押す。
「ええ。何度殴られても、振り向いてもらえるまで頑張ります!」
「よし、気に入った!! 許そう!!」
(もしかして、ヴァルド様とフィーユ様の親戚になる?)
フィンの胸中は、ものすごく複雑であった。
「ヴァルド殿、申し訳ないが、我が辺境伯領と中央に転移陣を作ってもらえぬか? 情報が届くのが遅すぎる」
辺境伯が言う。
「人が行き来すると目立つので、手紙のやり取りだけができる、小さな転移陣を作ってみてはどうでしょう?」
四兄が提案する。
「小さいのであれば持ち運べるな。小さな転移陣なら、魔力もそれほど要らぬ」
ヴィルが言った。
「勝手なことを言わないでください。私にも限度というものがあります。転移陣には呪文を大量に記入しなければなりません。ある程度の面積がないと……」
ヴァルドが申し訳なさそうに言う。
「竜は自由に大きさを変えられるではないか。義父上が小さくなって、呪文を書けばよい」
ヴィルが言った。
「無茶を言うな! 人間の形をしている間は、そのような力はない」
「人間の形?」
ヴィルが首を傾げる。
「あ、ややこしい方向に向かいましたので、私の提案は却下でお願いします」
四兄が慌てて割り込んだ。
「だが、よい案だと思うぞ」
次兄が言う。
「この球体、もう少し小さく、コンパクトにできませんかねえ……」
四兄の興味は、すでに別のところへ向いていた。
「ねえねえ、その大きな鳥って自然の生き物なの? それとも魔力で作った人工物?」
アーチャが出てきて、ヴィルに尋ねる。
「大型の鳥類を掛け合わせ、人の手を加えてさらに大きくした。自然とは言い難いが、完全な人工物というわけでもない」
「小型の通信用の鳥なら、できるかも」
四兄がつぶやく。
こほん、と辺境伯夫人が咳払いをした。
「話が飛びまくっております。今夜はいったん解散。皆、しっかり休んで、明日以降に備えなさい」
夫人は淡々と続ける。
「明日、再びヴィル様のお国と連絡を取りましょう。フィン、明るくなったら、ゾルピデム公爵様のところへ親書を持って飛びなさい。公爵様が信用できるようであれば、そこにヴァルド様に転移陣を作っていただきましょう」
「はい。わかりました」
「あなたはすぐに親書を書いてください。私はもう休みます。あなた達も、さっさと解散しなさい」
夫人のひと睨みで、兄弟達は退散していった。
「では、私も妻のもとへ戻りまする」
「義母上によろしくお伝えください。明日またお会いしましょう」
ヴィルとヴァルドは、がっちりと握手を交わした。
話しが飛びまくって、タイトルが付けられなかったのでチャッピーに丸投げしたら、このタイトルになりました。
チャッピー的にそのセリフが受けたようです




