5.、変態野郎でキモおじで情けない男なのだ…
凄いな…この二人…
圧倒されてるよ!
これで、女子高生だよ!
いや!これが、女子高生なんだな!
今や新時代のトレンドを牽引する存在。
それが、女子高生!
俺なんか…
なんとなく生きて…
なんとなく生活して…
なんとなく出勤して…
なんとなく仕事をして…
そして、なんと無く女子高生のお尻を触って
なんと無く痴漢をしてしまった。
寝ぼけまなこで、ホームに並び
ラッシュの車内に押し込まれ…
ボッーッとしたまま…
気がついたら、お尻を触っていた…
女子高生の…
でも、気がついたのに、やめる事ができなかった。
凄く、マッチしていた。
自分の手の平に、自然に収まるサイズ感だった。
伸ばすでもなく、縮めるでもなく。
力を抜き切った状態のゆるい指先と手の平のカーブが
この女子高生のヒップにベストマッチしたのだ。
初めてだった。
痴漢など…
お尻を触るなんて…あり得なかった。
一発で人生が終わる。
そんな認識だった。
痴漢なんて、やらかしたら…
冤罪でも、逃れる事は難しいだろう。
故に、日頃から気をつけていたのだ。
なるべく両手は吊り革や、ポールや
バックのショルダーを持って
その、存在を他の人にも認識できるようにしていた。
手を下にしていれば
誰か他の者が痴漢行為をした際
間違われて、疑いを、かけられる可能性もあると
考えていたからだ。
しかし、とうとう、やらかしてしまった。
前日の同僚の送別会で
しこたま酒を飲まされた事を思い出した。
酒は、弱い方だ。
飲み会で、たしなむ程度だ。
晩酌など、あり得ない。
そのような理由で、いつも無理強いされる酒は
断っているが…
昨夜は新入社員の歓迎会も兼ねていた。
大袈裟に言えば…葬式と結婚式を
いっぺんにやったようなものだ。
やっぱり、言い過ぎか!
その席で、新入社員イチの美女に
お酒を勧められてしまったのだ
地方の大学のミスコンで
ナンバー1になった経歴を持つらしい。
その彼女に
お酒の強い男性が好きと宣われて
つい良いところを見せようと
深酒をしてしまったのだ。
挙句に酔い潰れて
実は、酒に弱いヤツだと露呈させてしまった訳だ。
カッコ悪い事この上ない。
しかも、今朝は、土曜日と言うのに出勤。
同僚は、殆ど休みだ。
本当に、今日、やらんといかん仕事なのか?
割に合わないな…と、猜疑心に、苛まれながら
駅に向かった。
ホームで缶コーヒーを飲んだが
やはりそれでも、治らない。
二日酔いと、寝不足と、やる気のなさと…
昨夜のカッコ悪い自分を思い出して
自己嫌悪に陥ったまま、列車に乗り込んだ。
いや、押し込まれた。
人の波に巻き込まれ、流されて
行き場を無くして、同じところに留まって
淀んだままなのだ。
ずっと、そんな感じだった。
今の、生活そのものだ。
自身の意思や意志など、吹き飛ばされて
吹っ飛ばされて、塵となって
藻屑となって、流されてきたのだ。
ずっと…
この娘等みたいに人から疑われ
否定されて、拒否されても
自分自身の意志を貫こうとする姿勢。
私に、こんな、時代があったのだろうか
皆無だ。
その年齢、その世代、その時代によって
人の思考は、さまざまに変化していくだろう。
しかし、確固たる信念をその胸に秘めたものは
不動のままに、その、思いを貫き通す事を
心情とするだろう。
己の牙城を揺るがすものとは
戦い続け、戦い抜くであろう。
それが、この二人なのだ。
戦さの末、認めあった二人なのだ。
そして、私は、ただの…単なる…傍聴者だ。
当事者でありながら、第三者に甘んじ
メインから、弾きだされた。
その他大勢の内の一人なのだ。
間近にいるばかりで、何の意見も弁解もできず
その、真剣勝負に、ただ、圧倒されて…
咎められ、罵倒されても、何の言葉も
たった一言も口にする事ができなかったのだ。
ただの、木偶の坊。
それが、昨日の朝の私だ。
そして、今朝も変わらない。
何も、変わらない。
この、女子高生に、こうして流されて
お尻に手の平を導かれ…誘われ
身を任せているのだ。
電車の揺れに、人の揺れに
彼女の揺れに釣られて
ただ、身を委ねて
揺れているばかりだ。
「いいのよ!
私達、カップルだから
戯れ合ってたって…言えば
何の問題もないわ!
だから、ハイ!どうぞ!
存分に堪能してください!」
誰かに見つかった時の言い訳まで
考えてくれている。
そうして、お尻を突き出す彼女…
何なんだ!
この娘は、一体何者なんだ。
名前さへ、知らないだぞ!
それなのに、こんな形の良いお尻を
こんな、おじさんに差し出すなんて!
どうかしてる!
変など、通り越して、異常だ。
そして、言いなりのフリをして
尻を撫で回す…私は…
変態だ。
普通のフリをした。
変態野郎だ。キモおじだ。
情けない…男…なのだ。
続く




