使えないプロトタイプ
ら処理します」
「今のやり方と違いますね。請求書の発行元と入金元が一致しない場合はどうするんですか?」
「その場合は、個別に処理する形になると思います」
次々と疑問が出てきた。
さらに、実際の業務を想定して操作すると、問題が明らかになった。
現在の業務フローに合わず、入力の順番が違う。
売掛金や買掛金の消し込み処理が複雑になる。
会社独自の部門別集計に必要な情報が入力できない。
既存の仕訳ルールをそのまま再現できない。
例外処理が多く、結局Excelで補う必要がある。
「このままでは、今より仕事が増えるだけじゃないですか」
経理部門のベテラン社員が、思わず口にした。
情報システム部門の担当者は困った顔をした。
「このシステムは、同業他社でも実績があります。基本的には標準機能で対応できるはずなのですが」
「他社で使えていることと、うちの会社で使えることは別ですよ」
経理部門の責任者が言った。
「会計システムは、仕訳を入力するだけのものではありません。売上の計上から請求、入金確認、経費精算、支払いまで、業務全体につながっているんです」
会議室の空気が重くなった。
情報システム部門としては、標準機能を活用して短期間で導入する計画だった。
一方、経理部門からすれば、使えないシステムを押しつけられるようなものだった。
議論は紛糾した。
最終的に、経営トップから指示が出た。
「経理部門から専任に近い形で担当者を一人出すこと。実務を理解している人間が、情報システム部門と一緒に進めなさい」
経理部門の責任者は、しばらく考えていた。
そして、エルさんの名前を挙げた。
「エルさんにお願いしようと思います」
「私ですか?」
「そう。普段の経理処理もよく分かっているし、Excelの改善もやってくれた。パソコン操作も問題ない。何より、分からないことをそのままにしないでしょう」
エルさんは少し驚いた。
「分かりました。私にできることでしたら、協力します」
こうして彼は、会計システム刷新プロジェクトの経理側担当者となった。




