16話目 トレント退治はオリバーにお任せ
〜新入生合同研修当日、夕方、フンババの森・オリバー視点〜
吸血族の血を半分受け継ぐレイチェルの為に、森へ入るのは夕方となった
因みに一年生共は俺達が森に入る、丁度同じ頃に、その殆どがキャンプまで辿り着いた
まぁ、一部の1年生は、俺から言わせれば遅いが、コイツ等より速くに到着していたが・・・
今年の1年は期待出来そうにないな・・・
フンババの森・・・
樹海型のダンジョン
土に含まれる魔素が多く、植物が急激な成長を遂げたため、40メートル程の巨大な木々に覆われたダンジョンと化している。
ダンジョンとしての難易度は最も低いFランク。トレントが普通の森より多いくらいで、平常時なら村の子供でも簡単に奥まで入れるレベル。
しかし、この時期になると魔物が大量に現れ、近隣の村に多大な被害が出るため。この時期に限り、難易度がDまで上がる。
名前の由来は、その昔、八聖勇者の一人が、この森にて『フンババ』と呼ばれる上級魔族を封印したことに因んでつけられたらしい。
しかし、『フンババ』の封印場所は封印した八聖により秘匿され、誰も封印を確認していないことから、専門家の間ではその真偽が議論されているらしい・・・これは蛇足か
まぁ、俺は、Dランクのダンジョンくらいなら一人で余裕だが・・・
レイチェルを見ると、慣れないダガーを必死に振り回していた
「もっ、もうちょっとで・・・こっ、コツが掴めそうなんです!!」
俺の視線に気づくと、そんな言い訳をされた・・・
レイチェルのノルマを達成させるに辺り、大きな問題が浮上した
レイチェルは何の武器を使えば良い?
彼女はジョブ・料理人である
戦うジョブでは無いのは解って頂けるだろうか?
商人も戦うジョブでは無いが、護身術が必須科目であるため、戦闘では結構アクティブに活動出来る。
まぁ、俺みたいな例外も含まれるんだけどな・・・
料理人のジョブがどのようなことを学ぶのか定かではないが
彼女のダガー捌きを見る限り下手では無い、下手では無いのだが・・・
「私・・・剥ぎ取りは上手いって褒められたことあります・・・」
そう、ダガーを渡した時そんなことを呟いたのだ
剥ぎ取り、とは
魔物を倒した際、魔物の肉体から目当ての物を採取する技能である
簡単に言えば、殺した獲物の解体だ・・・
これには勿論、上手い下手が存在する
例を挙げるなら、エドガーとアリシアと俺
エドガーは性格柄、こういった作業には向いていない
騎士見習い時代に、食用のため俺が穫って来たコッコ鳥の肉を剥ぎ取る用に頼んだら、数分後、食える所がグチャグチャになったコッコ鳥の惨殺死体を運んで来た。・・・その日は飯抜きだった。
勿論、剥ぎ取り上手さで判定される素材のランクは【粗悪品】
アリシアは普通だ、可もなく不可もなく
ただ解体速度は引く程速い
解体を頼んだ5分後に、『剥ぎ取り終わりました』と言って来たときは驚いた
逆に恐くなる程だ・・・
まぁ、速い分、切りすぎてたり、不純物が混じっていたりするし
素材ランクは【並~良品】
俺は自分で言うのもなんだが、上手い
魔物の身体を余す所無く奇麗に解体することの出来る天才、とか言われたこともある
だって勿体無いじゃん・・・
あいつらの素材って良い値で売れるのも多いのだ、小遣い稼ぎに丁度いい
素材ランクは【良品〜優良品】
例を挙げてみれば解ると思うが、これも一種の才能、・・・専門技能だと思う
エドガーは戦闘では特出才能を持つ天才だ、きっと一生ジョブ・ナイトで食って行けるだろう
しかし、なにも戦闘技能だけが才能ではない
『他の人より上手く剥ぎ取れる』
コレだって立派な才能だ
だって普通より高く素材が売れるのだからな
逆に、剥ぎ取り専門の冒険者として売り出せば、様々なパーティーから引っ張りだこだろう
しかし・・・しかしな・・・
今回はそう言うのでは無いんだ・・・
剥ぎ取りで刃物捌きが上手くても、戦闘で武器を扱えなければ、獲物は手に入らない
無用の長物も良い所だ・・・
だから俺は一応、彼女にダガーを持たせ、武器捌きを見てみたのだが
ハッキリ言おう・・・
彼女に接近戦の才能は無い
〜新入生合同研修当日、午後、フンババの森・レイチェル視点〜
本格的に森に脚を踏み入れてからレイチェルは落ち着かなかった
理由は単純だ、
それは、かつて自分が道を諦めた武器が手元に有るからだ
私のダガー捌きに、見かねた師匠が、テントから取って来たその武器
給料の前貸しとか言って渡して来たときは本当に驚いた
ウッドボウ・・・
購買部に売ってある、最も安い弓らしい
新品の矢が20本付いて200z
安い・・・
理由は簡単だ
威力が弱く折れ易いからだ
消耗品といっても差し支えないかもしれない・・・
今の私は高い弓を持った所で、その真価を発揮出来ないだろう
だから、安い弓でも構わない、構わないのだが・・・
(やっぱり、弓を射るのは恐いです・・・)
蘇るのは、私の放った矢が爆発し、吹き飛ばされる仲間
中には重傷となった者も居る・・・死人が出なかったのは奇跡だ
前を先攻する師匠を見る
武器は先程私が振り回していたダガーだけ
装備品は、いつもと変わらぬ普段着のまま、碌な装備も身につけていない
(師匠がもし私の爆発に巻き込まれたら?・・・)
考えたくも無い!
こんな装備の師匠は、きっと一瞬で吹き飛ぶ、運が悪ければ死んでしまうかもしれない・・・
止めよう・・・
頑張ってダガーで戦おう・・・
そう心に誓って師匠に声を掛けようとしたとき、急に師匠が立ち止まった
手で私に静止を促し、木の陰に隠れるよう指示を出す
私と師匠は同じ大木の影に隠れた
『キキィ・・・』
気の様な外見、根を脚の様に這わせて動く魔物
現れたのは一匹のトレントだった
この時期に一匹のみとは・・・群れから逸れた個体なのだろう
こちらには気付いていない
「・・・丁度いい、ここで待ってろ」
そう言うと師匠はダガー片手にトレントへと近付く
草影に隠れて、トレントの後方に回る
そしてトレントの右方向に石を投げ・・・
『キ!・・・』
音のした方を一瞬向いたのが運の尽きだった
一瞬放たれる殺気
トレントも何か感じ取ったようだが、それを確認することは叶わない
師匠はその隙にトレントの真後ろに接近し、容赦なくダガーでトレントの息の根を止める
トレントの急所は身体の中央にある『核』らしい、なんでもソコで身体を巡る魔力を調整しているのだとか
しかし、そんな知識使うとは思っていなかった
トレント如き低級魔物、急所を意識せずとも殺すことは可能だからだ
(・・・師匠の手際の良さはまるで・・・)
「アサシンみたいだったか?」
「!?」
師匠はトレントの剥ぎ取り作業を始めていた
淡々と行われるその作業
トレントの身体は最小の損害しかなくきっと、どんなに下手な人が剥ぎ取りしても【良品】が採れるだろう
今までパーティーを組んで来た同級生では、誰一人、こんな奇麗な殺し方をした人は居ない
レイチェルは恐ろしさと同時に、興奮を覚えていた
「核を破壊すれば、【良品】が出易くなるからな
それと俺は今、ダガーしか持ってないし・・・用心に超したことはないだろう?」
トレントの身体から長い『トレント木材』を切り出しながら
私の想像と同じことと、私の想像を超える変な発言を繰り出す
(用心に超したことは無い?・・・)
断言出来る
師匠ならダガー1つで、トレント100匹狩れる
「そっ、そうですね・・・用心は大切・・・です
師匠・・・その長いの何に使うのですか?」
気がついたら、長い『トレント木材』は剣の様な形に整えられていた
「ん?
ああこれか、剣を取りに帰るのが面倒でな・・・
木刀を作ってみた、俺はコレを『トレント木刀』と名付ける」
誇らしげに木刀を掲げる師匠に、先程、一瞬トレントに向けた殺気は一片も感じ取れなかった
魔物名:トレント
分類:魔法植物目 魔木科 トレント属(族)
分布:世界中の森に多数分布
概要:
魔力により突然変異した木の魔物
根が脚の様になり動き回る習性を持つ。木に擬態し、近付いて来た小動物を補食する。身体の中心に魔力制御のための『核』を持つ。
獲物を釣るために、甘い果実を実のらせることでも有名。また、彼等の死体から剥ぎとれる『トレント木材』は微量の魔力を宿しているため、いろいろな素材としての用途も多い。
数が多すぎる魔物であるため、増えすぎた森を焼き払ったり、学園の研修によって駆逐したり、軍に山狩りをしてもらったりする必要が出て来る魔物である。
繁殖方法は他の植物系魔物と違い、花粉を頒布する事により、付近の植物を魔物化させる方法を取る。
果実は獲物をおびき寄せる餌であり、花粉を運ばせる道具であるため無害。
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以上、魔物分類辞典より抜粋
最近、アリシアとエドガー出てないな・・・
そろそろ出すことにします!




