15話目 ポーションは良い薬です
〜新入生合同研修当日、移動時間・一般一年生の視点〜
長い道のりだ、それに暑い
人間族の少年Aは、ただただ、そんなことを考えていた
学園から『フンババの森』までの移動は馬車で4時間、徒歩では8時間以上は覚悟しなければならない過酷な道のりだ・・・
商業・職人学科、騎士学科、意外の学科の生徒は馬車も馬も持っておらず、当然徒歩での移動となる。
鬼の所行だと思う・・・
友人に馬車や馬を持っている人物が居れば乗せてもらうことも出来るが・・・
残念ながら、商業・職人学科にも騎士学科にも知り合いは居ない
まぁ、商魂逞しい商業・職人学科の生徒の一部が、乗り合い馬車的な事業を始めたが・・・
「いくらなんでも高すぎるだろう!!」
「いえ、これぐらいが相場です!!」
なんて会話がそこら中から聞こえて来る
どれくらいの値段か知らんが、馬車で4時間は長い、ある程度の金は取られるだろうな
残念ながら金にも余裕は無い
まぁ、いいさ
これでも屈強な戦士学科の端くれ、この程度の道のり乗り切ってみせるさ!!
この長い道のりも研修の一部なのだ
この道のりだけで毎年、何人かリタイアするのだとか・・・
しかし、今年は回復系のジョブが多いおかげで、回復魔法を掛けてもらえる機会が増え、リタイア数は少ない、という話を引率の先輩から聞いた
回復職、様々だな
後ろから声を掛けられた
少年B「よう! 少年A! 元気無いな!」
少年A「なんだBか、ちょと音を上げそうになってな・・・」
少年B「なに言ってんだ、俺達より苦しそうなのが後ろに居るだろ、気を使え」
少年A「?」
Bが指差した後ろを向く
見ただけで体感温度が3度上がった
日傘を差した、全身黒尽くめの集団
青白い肌が印象的なこの集団は・・・
少年A「吸血族・・・」
少年B「そう、吸血族さん達
彼等は日中、能力が大幅に下がるからね、直射日光でダメージ喰らうし・・・
夜中移動すれば良いのに、他の種族を待たせるのはプライドが許さないらしいし
・・・同情で一杯になるよな」
少年A「ああ」
少年B「最強クラスの種族だけに、龍人族には特に負けたく無いらしいぜ」
少年A「毎年研修は夜行動するらしいよな、やっぱり理由は日光かな?」
少年B「だろうな、彼等が居ればもっと楽に研修も済むんだけどなぁ〜」
全種族中、最も能力が高いのは龍人族と吸血族である
どちらも癖の強い種族だが、単純な身体能力は人間族を軽く凌駕する
さらに、限定条件下でのみ龍人族すら凌駕する戦闘力を有す
特に吸血族は人間族と親密で、龍人族以外との交流は比較的良好
人間族と吸血族との間で結ばれた、『血の平和条約』は歴史の教科書に載る程だ
しかし、彼等には圧倒的な弱点がある
日光が駄目・・・
その一つのマイナスだけで彼等は龍人族に負け続けることとなった
日中は能力が大幅に下がり
直射日光を浴びればダメージを喰らう・・・
本当に今回みたいな研修では哀れな種族だと思う
〜合同研修生徒キャンプ場・オリバー視点〜
フンババの森近くにあるキャンプ場で、レイチェルに簡単な店の準備をさせていた
飲み込みが早く、1年前のアリシアを思い出すな・・・
「しっ、師匠・・・あの・・・えっと、準備終わりました!」
現在、俺は合同研修に引率という形で来ている
勿論、稼げる匂いを嗅いだからだ
学園の購買部は、我らがジェロームに店番を頼んでおいた
「『あの』、とか、『えっと』、はいらねぇー
普通に準備が終わりましたでいい
気をつけろ」
「・・・あっ、はい!!」
まだまだ合格点にはほど遠いな・・・
余談だが、レイチェルと初めて会った日から数日
購買部でレイチェルの面倒を見ていると、突然、レイチェルが俺のことを師匠と呼び始めた
恥ずかしいから止めて欲しい・・・
これまた余談だが
レイチェルの面倒を見る様になってから、アリシアの態度が無視ではなく冷たい視線を送ってくる様になった。何故だ?・・・
「そっ、そいえば師匠、例の商品・・・出さないのですか?」
例の商品とは先日、サミュエルに急いで作らせたアレだろうな・・・
今はキャンプ用の仮説店舗の裏に山積みになっている
「アレを出すのはまだ先だ、ココまで来るのに苦労していれば出したけどな」
俺が学園を出発してから8時間弱が経過している
本来なら到着してもおかしく無い時間だ
何故、到着出来ないのか?
それは今回の移動でのリタイア数を見れば予想出来る
リタイア数3人
これだけの時間を歩けば、もっと出てもおかしく無い
しかも、リタイアしたのは直射日光に負けた吸血族3名だ
それ以外の生徒はどうしたのか?
回復系のジョブ連中に頼って、適度に回復しながら来ているに違いない
吸血族はどうしても性質柄、宗教系学科の回復系魔法を受け付けない
受け付けられるのは、光属性に頼らない自然系の治癒魔法・・・
しかし、宗教系でもそう言うのが覚えられるが、今年の1年がソコまで気にして魔法を覚えているとは思えない、他にそれらを覚えられるジョブは限られてるし。それを扱えるのは人材は、典型的な回復職重視型である今年はかなりの少数派となるだろう。
一応、俺は使える、回復王手の『ヒール』と対をなす『キュア』である。
自然治癒力を高めるこの魔法は、魔力を込めれば病や毒すら治す。
傷口を塞ぐことに特化した『ヒール』とは違い、大きな怪我は治せず、即座に効果は望めないものの、内面的なダメージには効果テキメンだ。
今回の場合も、一年生回復職共が放つ『ヒール』により一時的に疲れが収まっているだけの状態と思われる。『ヒール』で強制的に疲れを癒すより、『キュア』で自然治癒力を上昇させる方が遥かに健康的だと思うのだが・・・いうまい
そんな感じでノンノンと歩いて来ている奴らに売る者でもない
もっと意識が引き締まったときにパーティーに売るべきアイテムなのだ
悪いがそれまでの間、吸血族の皆様には
わざわざ、夜中まで店を開いて売った『ポーション』で回復してもらおう
彼等も今回は必需品だと感じたのだろう
大量の『ポーション』が売れたぜ、ゲヘへ
だから、はっきり言う、アリシアの読みは間違ってたのだ
もし、アリシアの言っていた様に『エーテル』を多く発注していたら
吸血族の皆様を見殺しにする羽目になった・・・
アリシアは全体を見ているようであって、大多数しか見ていない、少数派は忘れてしまうのだ
無論、俺は大多数も少数派も見捨てない商売の仕方を見せてやるつもりである
だってそうだろ?
生徒だって、先生だって、王族だって、敵国の軍人だって、どんな種族が来ようとも・・・
俺の店に来れば皆俺のカ・・・おっ、お客様だ!
お客様は平等に、それが俺のポリシーだ
「さて、レイチェル
1年共の来店はまだまだ先になりそうだ、このペースだとあと二時間は掛かるな」
「なぜ、そんなに掛かるのですか?」
「回復職に休み休み回復して貰いながらの移動だからな
回復職に歩幅を会わせることになるからな
1年のプリーストは何故か皆、動き難そうな装備を着るからな、歩みが遅い・・・
だから、ここらでお前の研修ノルマを達成しとく」
研修ノルマとは・・・
学科ごとに割り当てられ、生徒に与えられる研修の修了条件
これが達成出来なければ研修は終わらないと思った方が良い
今回のレイチェルの場合は・・・
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トレント討伐・・・30体
コッコ鳥討伐・・・15体
レッドハウンド討伐・・・5体
その他上記外の討伐は、魔物の危険度に合わせた報酬と交換
トレントの実・・・20個の採取
トレント木材・・・15個の採取
コッコの羽毛・・・10個の採取
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と、なっていた
レイチェルがジョブ・料理人でもコレなのだ
戦闘系のジョブの人は大変だろうな
ちなみに当時、騎士学科だった俺の場合は丸が二つ違った・・・
ストック切れたので連日投稿期間終了
いつも通りの不定期に移行しま〜す
まぁ、書ければ連日でだすかもだけどね・・・




