17話目 エーテルの50%OFFです
〜合同研修生徒キャンプ場、夕方・アリシア視点〜
「幸先の良いスタートだ」
アリシアは呟く
毎年、この移動だけで数十名の生徒がリタイアする
それが、3人で済んだのは僥倖といえる
私のときは30名近くがリタイアしたか・・・
何分、今年の新入生とは逆で、私の学年は回復系のジョブが少ない
今年の様に、怪我や体調が悪ければ即ヒールという訳にはいかなかった
そのことを踏まえて考えると、今年の新入生・・・特に戦闘系のジョブの学生は恵まれている
傷ついても、直に回復してもらえるからな
戦場でヒールの需要は極めて高い
それを扱える回復系のジョブの需要はもっと高いと考える
しかし、ヒールとは無制限に使える術ではない
使用には魔力が必要なのだ
何発も使えば魔力切れを起こす
それを回避するため、簡単に魔力回復できるエーテルを多く発注するように進言したのだが・・・
なにが、「お前は、どうやら新入生を死なせたいらしいな」だ!!
貴様が新入生を死なせたいのではないのか?
・・・ちょっと、頭に血が上っているな、冷静になろう・・・
「アリシアちゃん、これどうするよ?」
背中に大きな荷物を背負ったエドガーが訊ねてきた
荷物の中身は大量のエーテルと小さい瓶だ
この短い期間で、私とエドガーが近くの街や行商人から仕入れた物である
「一本を半分にして、『ハーフエーテル』として販売します
小分けする作業があるので、作業用テントに運んどいて下さい」
「了解
でも、アリシアちゃん?
いちいち、小分けする意味あるのかい?」
・・・その理由、ここまで来る道中で説明した筈だが・・・聞いてなかったなコイツ・・・
アリシアは大きく溜め息をつき、説明を始める
「まず、我々が仕入れた数に問題が有ります
予定より数が少ないのです」
「200個近く、背負っているのだが、何か問題でもあるのか?
十分、多いと思うのだが・・・」
「私たちが仕入れることが出来たのは、180個です
そして今期の新入生は500名弱
内、回復系のジョブに就いている学生は213名・・・
入庫数が足りていません、全員に行き渡りませんね?
だから、せめて半分に分けてハーフエーテルとして売るのです、単純に倍作れますからね」
それに、と付け加える
「ハーフにすれば安く売ることが出来ます
そうすればお金が無い生徒にも行き渡るでしょう?」
ここまで話してやっと納得した顔になった
ここ数週間、何度も説明したのだが・・・
私が、また大きな溜め息を付いたのと、剣聖と呼ばれる獣人が現れたのは同時だったと思う
「やー、やー、アリシア君
元気にしてるかい?」
エドガーの後ろから現れたのは
白いウサギ耳を持った獣人の女性、方まで伸ばした髪も純白
豊満な胸を惜しげも無く披露した鎧には、何の意味があるのだろう?
まぁ、大事な所は死守しているが、露出面積が広く防御力が低そうだ・・・
私はこの先生が、この鎧を脱いでいるのを見たことが無い
彼女曰く、
『昔、ダンジョンで拾ってねー、呪われた装備だったみたいでさー、脱げなくなっちったwww』
とか言うのだ、完璧に嘘だ、脱いでる所見たことあるのだ、その時私に・・・
『ないしょだよー、わかった?ー』
と、剣に手を携えながら言って来た
その時も持っていた『聖剣』は、今も彼女の腰に携えられている
右手に団子、左手に剣
それが彼女のスタイルだ・・・
剣聖マリエル・・・
現在、剣士学科の教師を務める先生の一人
元161期八聖勇者。勇者としての最低継続期間を終え、軍の要職の座を蹴って学園の教員の道を選んだ。
現役時代は、神の遺物の1つ『不滅の聖剣』を手に上級魔族5体の討伐に参加した
獣人族の俊敏さと、様々な流派を極め独自に作り出した我流の剣技を組み合わせ、歴代勇者でも数少ない『剣聖』の渾名を持つ
好物は、三色団子・・・購買部の常連さん
そのマリエル先生が、私に満面の笑顔を向ける
常時、笑顔
常にニコニコしている、美人の獣人、スタイル抜群
その容姿に騙されて剣士学科に入る男子は大体後悔する
この人の授業は恐ろしいからだ・・・
その証拠にエドガーは、その笑顔を見て逃げ出した
エドガーは一回、剣士学科の授業を面白半分で体験しに来たのだ・・・私の言っている意味を理解している
流石『神速』・・・、逃げるのも『神速』か・・・
「最近、授業にこないよねー
アリシアちゃんなら、主席で進級間違いなしだけどねwww
たまには先生の相手してくれないと、先生拗ねちゃうぞ?」
「先生が拗ねようが、どうしようが私には関係ありません」
「ええーー
歴代の剣士系の八聖勇者は私を倒して卒業してったよー
アリシアちゃん、まだ私に勝てて無いじゃんwww」
いちいち、wwwがムカつくのだが・・・
「先生・・・
貴女、学園の教師になって何年ですか?
まだ、3、4年じゃないですか?
その程度の浅い伝統を私に押し付けないで下さい」
「・・・グサッ!
それ気にしてんだよー
教員の中で一番年下なこと・・・
でもさ、でもさ
ハルカちゃんも私を倒して行ったんだよ?
オリバー君には勝ったけど、アリシアちゃんより手こずったよー
まぁ、若干、卑怯臭いけどねあの子・・・
でもさ、悔しく無い?」
「悔しいですよ、悔しいですけど
今の私では、ハルカさんにも、先生にも勝てません
とりあえず、会長に勝てる様になってから先生に挑みます」
そう言うと、マリエル先生は腹を抱えて笑い出した
好物の団子が喉に詰まり咽せてる
「ゴホっ・・・ゴホ・・・ゴクン
はぁ・・・うん、それサイコー!
いいね、いいね
待ってるよ、待っているさ
じゃぁ、とりあえずオリバー君に勝たないとね?
その為には、修行しないといけないよね?
オリバー君、ソコソコ強いし・・・
だからさぁー、ちょっと頼まれ事してくれない?
修行になるよー」
変なこと言い出した、団子の食い過ぎで変になったか?
「・・・一人、新入生が森に入ってねー
様子見て来て欲しいんだ、頼むよー」
溜め息が出る
最早、私の癖だな・・・幸せが逃げるから気をつけよう
「別に禁止されている訳では無いでしょう、
勝手にさせといても問題ないのではないですか?
一人で入るということは、回復系のジョブでは無いのでしょう?」
「うん、まぁ、ジョブは格闘家だよ、格闘家なんだけどねぇー・・・」
歯切れが悪いな・・・
「ちょっと、特殊な子というか、変な子と言うか、残念な子なんだよねー」
「この学園に特殊でも残念でも変でも無い子っていますか?・・・」
「本末転倒だね、
まぁ、確かに皆、この殺伐とした学園に入学している時点でちょっと特殊な子だよねー」
ちょっと所だろうか?
少なくとも私の周りには特殊な奴しか居ない・・・ああ、一人居たな普通の人、同級生のレオン
彼も誘えば良かったかな?・・・
「まぁ、そんなことはどうでも良いんだよー
彼女、時分の力量を見誤ってるからさー、一人で奥に入って、強敵に出くわしても逃げるという選択肢を取らない可能性があるんだよねー
死ぬの解ってて、見逃すわけにもいかないし・・・
アリシアちゃんお願い、その子連れて帰って来てー」
本音を言うと面倒臭い
とはいえ、新入生を見殺しにするのは気が引ける
それに、こんな先生だが一応恩師であり師匠だ、その頼みを無下には出来ない・・・
なにより、聖剣に手を掛けていらっしゃる
無言の圧力・・・
私に拒否権は無いのだろう・・・
不承不承といった感じで手を振ってみせる
「解りました、その仕事、私が引き受けます
・・・でも、もし、新入生が言うことを聞かなかった場合・・・
教育的指導に出てもいいですか?」
その時の私は、会長がよく言われる『魔王の様な笑み』を浮かべていたに違いない
そんな私に先生は・・・
「勿論!!
言うことを聞かない後輩には、先輩の恐ろしさを教えてあげない(ニコ)」
我が学園は今日も殺伐としている




