14話目 居眠りにはご注意下さい
〜夜の12時、階段教室にて・エドガー視点〜
「・・・・君、
エ・・ー君、
エド・ー君、起きなさい」
むにゃむにゃ、・・・後、五分だけ・・・
「エドガー君、起きなさい」
ん?・・・、俺の安眠を妨害するとは
何処の不届きものだ
成敗してくれる
そこでようやく起きたエドガーは周囲を確認し驚いた
人気の無い教室・・・
窓の外は真っ暗・・・
そして、俺の真横に立つ爺ちゃん先生・・・
あれ?・・・俺なんでこんな所にいるの?
まったく解らなかった
この教室は普段、魔道系学科か宗教系学科の『魔法理解』の授業で使われるか、『魔法植物学』とか『算術基礎』とか『魔物生態学』とか、訳の解らん授業に使われる教室だ
「・・・あれ?、なんで俺こんな教室いるんだ?
普段は絶対に近寄らないのに・・・」
「・・・エドガー君、心の声出てるよ?」
爺ちゃん先生は、呆れ顔で呟いた
・・・つい、本音が口に出たのか、先生、流石にゴメン・・・
「ワシの授業はともかく、算術と魔物生態学はちゃんと受けることじゃぞ・・・
エドガー君の様に、頭の出来がお粗末な子は直ぐ人に騙されるからのぉ」
おい・・・
馬鹿なのは認めるが言い過ぎだろう
一応、『神速の魔槍』とか呼ばれてんだぜ?
学園内、最強クラスの実力者なんだぜ?
八聖の候補にも挙がってるんだぜ?
ちゃんと騙された後、俺の『神速』で騙した奴見つけ出して、槍の錆にできるわい!!!
そのことを爺ちゃん先生に伝えると・・・
「君も、八聖勇者目指すなら、まず人に騙されない様にしてほしいのぉーー
討伐されたくは無いじゃろ?」
などと言われた、ごもっともです・・・
過去の八聖の中にも悪党に騙され、他の八聖に討伐されるという末路を辿った者が、少なく無い数居る
ここで俺でさえ気にしているのが、『八聖勇者』と『討伐』という単語が使われている重みだ
『八聖勇者』・・・
卒業生の中から成績上位8名から選抜される、その年の最強集団・『八聖勇者』
彼等は、戦闘力の高い学園の生徒の中にあって、特にズバ抜けた戦闘力の持ち主だ
八聖勇者は学園卒業から最低5年間、王国に勇者として雇われ、世界各地を点々としながら、各地の問題を解決して回る。その期間は王国から多額の活動費が支給され、任期終了後も遊んで暮らせるだけの金と、希望すれば国での役職が手に入る。
まぁ、そんな楽な仕事ではない、その証拠に八聖勇者になった卒業生の生存率は極めて低い。
例を挙げるなら学園長の代
学園長は155期の八聖勇者で、勿論、この学園の卒業生だ。
しかし、彼女以外の八聖のメンバーは1〜3年の間に全滅。残り二年を、他の代の八聖勇者とパーティーを組み乗り切ったのだ。
最低任期を終えた学園長は直に勇者を辞め、学園長に名乗りを挙げたらしい。
あの、お調子者の学園長が直に辞めたがる職業だぞ・・・
苛烈なのは窺い知れるね・・・
さらに、辞めたからといって、圧倒的な戦闘力は維持されたままで、王国が野放しにする訳も無く
ある程度の監視が付き、有事の際には現役勇者も含めお声が掛かるらしい
それに由来してか、『八聖勇者』を『王国の奴隷』とか言う奴も居る。
『八聖の討伐』・・・
八聖勇者が犯罪を犯した場合、ある程度は王国も目を瞑ってくれるも、度が過ぎれば討伐部隊が結成される
しかし八聖は、並の兵士では相手にならない程の戦闘力の持ち主だ、一方的な虐殺が行われる恐れが有る
そのため八聖の討伐部隊に参加するのは全員、現役の八聖が勤めることとなる。
また、例に学園長を挙げるが
学園長が現役の八聖時代に、113期八聖勇者の一人で辺境の領主を勤めていた『邪龍の申し子』という渾名の男が、自らが統治する街を焼き払い領民の命を糧に大規模魔法を展開するという事件が発生した。
現場に討伐部隊の八聖が辿り着いた頃には領民は全滅、『邪龍の申し子』も逃走していた。
この事件を解決し、『邪龍の申し子』を倒したのは当時駆け出しの勇者だった学園長なのだが、この事件で学園長は仲間の一人の八聖勇者を失ったという
その『邪龍の申し子』とやらを庇護する訳ではないが
八聖勇者の中には、『悪魔の囁き』が聞こえる者がいるらしい
その囁きが一体なんなのか、どこから聞こえてくるのか、信憑性が怪しい所だが
聞いた話によれば、大昔の『魔王』が心の弱い八聖に付け込もうとしているらしい
『邪龍の申し子』もそんな一人だった、と、学園長が言っていた様な気もするのだが・・・
うん、
まぁ、爺ちゃん先生が言いたかったのは
『馬鹿すぎると、八聖になった後、『悪魔の囁き』に騙されて討伐されちゃうよ♪』
て、ことだろう、うん
俺が一人で何やら納得していると爺ちゃん先生が、哀れな生徒を見るような顔をしだした
やめろ、やめてくれ、俺をそんな目で見るのはやめてくれ・・・
「どうでもいいけど、君、新入生合同研修説明会でずっと寝てたよね・・・
何時間も前に終わったけど、されからずっととはねぇ〜
これから夜間の部が始まるけど、昼寝てたから夜間の方で聞いとくかい?」
爺ちゃん先生は、面倒臭いけど一応聞いとくか・・・、みたいな顔をして訪ねて来た
合同説明会は昼と夜、二回に分けて行われる
それは、吸血族など夜行性の種族や、昼にクエストに出ていて説明を受けられなかった生徒への配慮だ。
そうだ、そうだよ
俺はアリシアちゃんに連れられて、この説明会に来たんだ忘れてた
「爺ちゃん先生、俺の隣に座ってたエルフの女の子は?・・・」
爺ちゃん先生は深々と溜め息を付いて・・・
「ワシに、
『あそこで寝ている人は、あのまま放置でお願いします』
と、言って出て行ったよ
流石に夜間の部が始まるから一応起こしたけどね」
えっ、まじで、俺、放置・・・マジで・・・
「すごい呆れ顔だったのぉ・・・
ワシの授業を寝るからこんな目に遭うんじゃ、ザマぁないのぉ〜」
くっっっっっそ爺が!!!
「そんなんだから生徒に、『爺ちゃん先生の授業は、眠ってもいい授業』とか言われんだよ!」
つい口走ってしまった・・・
爺ちゃん先生、落ち込みモード
「失礼なこと言うのぉ、エドガー君
自覚はじゃし、寝てるのも見逃してやっとんじゃ
もう少し労ってくれんかのぉ〜
・・・ベルトラン先生に、授業中寝とるのチクろうかのぉ・・・」
悪寒がした・・・
騎士学科の先生・ベルトラン
尊敬すべき騎士の一人だが、その顔はぶっちゃけ醜い
夜、道で彼と出逢えば、悲鳴を上げて逃げ出す程醜い
しかし彼は強い、馬上槍術では間違いなく、俺の槍の師匠とも呼べるハゲ・・・騎士団長より強い
俺も一対一で戦って勝てるかどうか怪しい人物だ
いや・・・、間違いなく負ける、・・・あの顔見たら負ける・・・
数々の先生の説教を喰らって来た俺だが、ベルトラン先生の説教だけは勘弁願いたい
奴の説教は、無言なのだ
無言で、その恐怖の代名詞みたいな顔で見て来る
しかも、少し悲しそうな顔で・・・
あの先生、実は良い人なのだ
騎士になったのも、大事な人を守れる大きな男でありたいから、とか言ってたし
課外授業の途中で捨て犬を拾っては、家に連れて帰ってた
王都には妻と娘がいて、休日は良いパパだ
生徒達からも、騎士学科限定で人気がある
少なくとも目の前で生徒を脅す爺ちゃん先生より良い人だと思う
でも、顔が怖いのだ
それに彼の人となりを知っている人が、彼の悲しそうな顔を見れば
そこはかとなく、悲しい気持ちにさせてくれる
まぁ、彼のことを深く知らない生徒が同じことをされれば、恐くて泣き出すだろうけど
その時はベルトラン先生も、その醜い顔をさらに醜くして焦りだすから、悪循環で他の先生が助け舟出すんだよな・・・
まぁ、そんな訳だから
俺はベルトラン先生を悲しませない為にも教室を出て行った
丁度、吸血族の生徒が集まりだした頃だったので
挨拶しといた
「おはよう!」
凄い変な顔された・・・




