ギルドへ到着
※変更点
この世界の通貨表記を硬貨からゼニに変更致しました
ギルドの扉を開けると、広い空間が広がっていた。
受付カウンターに数人の職員が並んでいる。依頼書らしき紙が壁一面に貼られていて、冒険者とおぼしき人間が何人か列を作っていた。活気はあるが、騒がしすぎない。
衛兵が受付に声をかけた。
「身分証の発行をお願いしたいんですが。遠方から来た方で、証明できるものが何もないそうで」
「わかりました。こちらへどうぞ」
受付の女性が迅を別のカウンターへ案内した。名前と出身地、年齢を聞かれた。
「佐藤迅、32歳です。出身地はかなり遠い場所です。この国の地図には載っていないと思います。それと魔力検査も受けられると聞いたのですが今受けられますか?」
「わかりました。では便宜上、出身不明で登録しますね。あと身分証の作成と一緒に魔力検査もされますか?」
「お願いします」
「では先に魔力検査からどうぞ。こちらの魔力玉に手を当ててください」
受付の女性が透明な球体を差し出した。迅は言われた通り手を当てた。
球体がうっすら光った。しかしすぐに消えた。
女性が少し首を傾けた。
「……少し珍しい状態ですね」
「何かありましたか?」
「魔力はちゃんとあります。量も普通の人より少し多いくらいで。ただ、体と魔力が繋がっていないというか……魔力を使ったことが一度もない状態に近いです。これだと自分では魔法が使えないんですよ」
「なるほど...」
(異世界人というのも関係しているのか?...)
「稀にですが。よかったら手伝いましょうか。少し時間かかりますが」
「お願いします」
女性に背中に手を当ててもらった。しばらくそのままの状態が続いた。
突然、体の奥から何かが動いた感覚があった。ぞわりとした、不思議な感覚だった。
「繋がりましたよ。これで魔法の練習ができるようになります。最初はうまくいかないかもしれませんが、使っていれば慣れてきますよ!」
「ありがとうございます、練習してみます。」
次に魔力玉に再度手を当てると、今度は球体がしっかりと光った。その光が板状の証明書に移り、迅の顔と名前がじわりと浮き出てきた。
「これが身分証です。王都内はこれで動けます。正式なものが必要であれば後日また来てください」
「助かりました」
迅は身分証を受け取りながら、体の奥にある感覚を確認した。何かが変わった気がする。
(魔力、か)
料理に使えるかどうかはまだわからない。ただ、悪くない。
衛兵が軽く手を上げた。
「お疲れ様でした、では私はここで。王都での生活、うまくいくといいですね」
「ありがとうございました」
迅はギルドの中を改めて見渡した。壁に貼られた依頼書の中に、食材の買い付けや料理人募集の紙もある。この世界でも料理人の需要はあるようだ。
屋台を出すには食材と道具と場所が必要だ。食材は市場で揃えられる。道具と場所はリアに聞けばわかるだろう。
問題は資金だ。今手元に金はない。
迅は自分の服を見下ろした。黒のスウェットにジーパン。この世界では明らかに浮いている。目立つのは都合が悪い。それにこの素材はこの世界には珍しいはずだ。
(軽い資金にはなりそうかもな)
店を当たってみるか
繊維を扱う店を探して路地を歩いた。しばらくして、布や衣類を扱う店が並ぶ一角に出た。
一軒の店の前で足を止めた。他より品揃えが多く、客の出入りも多い。
中に入ると、すぐに奥から女性が出てきた。三十代ほどで、目が鋭い。品定めをする目だとすぐにわかった。
「いらっしゃい。何かお探しですか」
「売りたいものがあります」
「ほう」
女性の目が迅の服に止まった。一瞬で表情が変わった。
「……その服、どこで手に入れたんですか」
「遠い場所からです。この国では手に入らないと思います」
「触っていいですか」
迅は頷いた。女性がスウェットの袖を指でつまみ、引っ張り、裏側を確認した。次にジーパンの縫い目を丁寧に見た。その間、一言も話さなかった。
「……これは」
女性が顔を上げた。
「ぜひ売ってもらえませんか。この縫製、この素材は珍しい。うちで扱えるなら相当な値がつきます」
「いくらで」
「二着合わせて6000ゼニ出します」
迅は少し間を置いた。
「相場はわかりませんが、妥当な額ですか」
女性は少し頬を上げてから、真っ直ぐ迅を見た。
「正直に言います。うちが出せる上限です。この素材はここでしか手に入らないとなれば、買い手はいくらでもつきます。ふっかけるより長く付き合える方がいい、というのがうちの方針なので」
馬車代が800ゼニ。串焼きが100ゼニ。それを基準にすれば、かなりの額だ。
「わかりました。売ります」
「助かります。代わりの服はこちらで用意しますよ」
女性が奥から何着か持ってきた。この世界で一般的な麻の服だった。迅は一番動きやすそうなものを選んだ。
着替えを終えて店を出た。手元に6000ゼニ。
屋台を始めるには十分そうだ。
迅は次にやることを頭の中で整理しながら、リアの家へ向かって歩き始めた。
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