王都へ到着
しばらく森を歩き少し疲れてきた頃少し開けた場所に広い道ができており近くに寄ってみると馬車の停車場のようだった。
停車場は森を抜けてすぐの場所にあった。木造の簡単な屋根と、馬車が一台停まっているだけの小さな場所だった。
「ちょうどよかった。王都行きの馬車がいますよ」
「馬車か」
「歩くより全然早いですし、乗っていきましょうよ」
御者台には白髪の老人が座っていた。リアが声をかけると、顔をほころばせた。
「王都までお二人かい?」
「はい、お願いします」
迅が先に口を開いた。
「いくらだ」
「銀貨二枚だよ」
迅はリアを見た。リアがマジックバックから財布を出した。
「今は私が払いますよ」
「後で返す」
「いいですよ別に」
「返す」
リアは小さく笑いながら銀貨を払った。
馬車が動き出すと、老人が手綱を操りながら振り返った。
「お兄さん、この辺りでは見ない服装だね。遠くから来た方かい?」
「ええ、かなり遠い場所から来ました」
「旅人かね」
「まあそんなところです」
老人はそれ以上追わずに前を向いた。しばらくして、また口を開いた。
「王都は初めてかい?」
「はい初めてです」
「そうかい。活気のある良い街だよ。大陸中から人が集まってくる。中央広場の近くには大きな繁華街もある。一度見てみるといい」
「そうですか。参考になりました着いて準備ができたら覗いてみます」
しばらく走ると、木々の隙間から石造りの大きな門が見えてきた。
リアが窓から顔を出した。迅も外を見た。
門の前には数人の衛兵が立っている。行き交う人の数が一気に増えた。荷物を積んだ馬車、行商人、冒険者らしき装備の人間。
馬車が門の前で止まった。老人が振り返った。
「着いたよ。良い旅を」
「ありがとうございました」
門をくぐろうとしたところで、衛兵の一人が声をかけてきた。若い男で、表情は穏やかだった。
「お二人、身分証の確認をさせてもらえますか」
リアがすぐに冒険者証を取り出した。衛兵が確認して頷く。次に迅を見た。
「お連れの方は?」
「持っていないんです。遠くからきたもので」
衛兵は少し考える顔をしたが、咎めるような様子はなかった。
「遠方からですか?」
「はいかなり遠くから来ました。」
「でしたら冒険者ギルドで仮の身分証を発行してもらえますよ。手続きはそれほど難しくないです」
「ギルドはどこにありますか?」
「よかったら案内しますよ。ちょうど見回りのルートなので」
迅は頷いてからリアを見た。
「先に行っていてくれ。手続きが終わったら合流する」
「わかりました。じゃあ家の場所教えますね」
リアが道順を説明した。迅は一度聞いて頭に入れた
「夕方までには行く」
「わかりました。王都のこと色々教えますね、来たら!」
リアが手を振りながら人混みの中に消えていった。
衛兵と並んで街を歩き始めた。
「初めての王都ですか」
「ええ」
「どうですか、印象は」
「活気のある街ですね。人だかりも多いし歩きづらいくらいだ」
「そうでしょう。大陸でも一番賑やかな町だと思いますよ」
迅は答えながら、周囲を観察していた。
石畳の道。両側に並ぶ商店。焼いた肉の匂い、香草の香り、パンの匂いが混ざり合っている。
屋台が何軒か並んでいた。迅は目だけで中身を確認した。
野菜やフルーツが並んでいる八百屋のような場所、そしてパン屋か、他にも色々な種類の店があるようだ。
少し客が並んでいるようで人気がありそうな屋台の串焼き肉を迅は覗いた。
(……鳥、か。形状と筋繊維の走り方を見る限り、腿に近い部位だな)
(見たことのない鳥だが肉質は読めるな)
(皮目の引ききれていない脂、不均一なカット。……強火で一気に攻めすぎだ。そして火の入れ方も1分は長い。あれでは外側が硬くなるだけで、中の肉汁を閉じ込められない。他にも欠点が色々ありそうだ。もったいないな)
(この世界の料理、か。これだけじゃまだ判断できない。もっと見てからだ)
「どうしました? そこの屋台のお肉食べますか? 美味しいですよ!一本、銅貨三枚ですけど」
衛兵が足を止め、気さくに笑いかけてくる。
「……いえ、やめときます」
迅は短く答えて、再び前を向いた。
「王都に来た理由は何ですか?」
「店を出すつもりです」
「料理の店ですか?」
「ええ」
「それはいいですね。どのあたりで出すか決めてますか?」
「まだです。場所を見てから決める予定です」
「中央広場の近くが人の流れが多いですよ。参考までに」
「助かります」
迅は短く頷いた。
石畳の先に、大きな建物が見えてきた。
「あそこに見えるのがギルドです」
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