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天才料理人は異世界でも料理を続けるそうです  作者: 巨大林檎
第一章

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6/7

王都までの道のり③ サンドイッチ

 木の上に、丸くて薄緑色の実が鈴なりになっていた


 「カフの実だ! この辺りで見かけることはあるんですけど、なかなか取れる場所に生えてなくて」


 「あの木の実は食えるのか?」


 「食べられますよ!美味しいですよ!」


  リアが木を見上げ、迷わず幹に手をかけた。


 「私が取ってきます!」


リアはするすると器用に枝を登り、実に手を伸ばした


 「届きましたー!ジンさんも早く来てくださいよー!」


 「そんなに早く登ると木から落ちるぞ。俺はいいからそこから木の実を投げてくれ、キャッチする」


 「えー?もしかしてジンさん登るの怖いんですかー?」


 リアがにやにやしながら下にいるジンを見た。迅は無表情のまま、何も答えなかった


 迅は無言で、足元の木の幹を軽く足でゲシゲシと揺らし。木がわずかに揺れた。


 「わっ……!ちょ、冗談じゃないですかー!」


 リアがコアラのように木にしがみついた。しばらくそのまま固まってから、じとっとした目で下を見た。


 「……今の絶対わざとですよね」


 「揺れたな、落ちないように気をつけろ」


 「揺らしましたよね!?」


 迅は何も言わなかった。


 リアはしばらくむくれていたが、気を取り直して実を集め始めた。ある程度手元に集まったところで、下に向かって投げてくる。迅は無表情のまま、一つずつ手で受け取った。


 「そこの袋に入れてください」


 リアが小さな布袋を投げてきた。受け取って開けると、見た目より随分軽い。


 「入り切らないだろ?これ」


 「大丈夫です!それマジックバッグなので。五キロくらいまで入りますよ」


 「マジックバッグ?」


 「ジンさんマジックバックの事知らなかったんですか?ここら辺の人じゃなくても知ってそうですけど」


 「俺がいた場所にはなかったな」


 「そうだったんですね!これは魔道具です。見た目より容量があって。五キロくらいのサイズが一番流通してるんですよ」


 迅は袋を眺めた。そんなものまであるのか。これは便利だ


 リアが木から降りてきた頃には、袋の中にカフの実がかなりの量入っていた。


 「いっぱい取れましたね!せっかくだし少し食べましょうよ」


 「少しかじってみてもいいか?」


 迅はリアのどうぞー!と返事を聞くと、一つ手に取った。匂いを嗅ぐ。爽やかな柑橘系の香り。かじると、酸味が広がった。だが強すぎない。レモンの香りにキウイの甘みが混ざったような、面白い味だった。


 (加熱すると酸味が飛んで甘みが残りそうだ。ソースにできるか)


 迅は少し考えてから口を開いた。


 「少し歩いたしちょうどいい。何か作るか」


 「え、ここで料理するんですか?」


 「昨日のウサギの肉は余っているか」


 「少しあります!」


 「あったらなんだがパンとか持ってたりしないか?」


 「マジックバッグに入ってます!」


 迅は周囲を見渡した。足元に、シャキシャキとした葉の野草が生えている。リアにこの野草は食べれるかと確認し、指でちぎって口に含む。癖がない。使える。


 「昨日の魔法で焚き火を起こせるか」

 「ファイア!」


 肉を鍋に入れ、弱火でゆっくり時間をかけた。カフの実は半分に割って鍋に加え、煮込みながら木べらで潰していく。酸味が飛び、甘みと旨みだけが残っていく。


 じっくり観察して長年の経験と初めて扱う食材だが目視のタイミングでとろりとした完璧なソースになった頃、肉を取り出して手で裂いた。


 繊維に沿って割くと、昨日のウサギと同じように驚くほど滑らかにほぐれる。


 パンに野草を敷き、ほぐした肉を乗せ、ソースをかけて挟んだ。


 「はい」


 リアに差し出した。


 「即席だ。手持ちの食材でできるものにしたまでだ」


 リアは受け取り、一口かじった。


 次の瞬間、目が見開かれた。


 「……なんですかこれ!!」

 声が裏返った。


 「美味しい!なんで、なんでこんなに肉が柔らかいんですか!しかも肉汁が溢れてきます!しかもこのソース、カフの実ってこんな濃厚な味になるんですか!?」


 迅は自分の分を一口含んだ。


 中々にこの木の実はソースとして相性が良い。カフの実の甘みが肉の旨みを引き立てている。


 そして野草の食感が全体を締めている。即席にしては、まとまっている。


 「王都で出したら絶対流行りますよこれ! お肉の柔らかさが信じられない、どうやったらこんなになるんですか」


 「火の入れ方だ。昨日も言った」


 「同じやり方なのにまた全然違う……」


 リアはもう一口、また一口と食べ続けた。

 「ジンさんって、本当に何者なんですか」


 迅は答えなかった。

 ただ前を向いて、残りを食べた。


 王都まではもう少し歩きそうだ――

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