007 教会
翌日、俺たち三人組は朝から王都の教会に陣取っていた。
荘厳なステンドグラスから差し込む光を浴びながら長椅子に腰掛けているが、決して信仰心が厚くて熱心にお祈りしているわけではない。
目的はただ一つ。『モンスターと戦って死んだプレイヤーが、本当に復活するのか?』をこの目で確認するためだ。
事前に教会の神官に探りを入れたところ、「万が一命を落としても、神の奇跡によってこの神聖なる教会で復活を遂げます」と有難い説明を受けた。だが、何事も石橋を叩いて渡るおじさんたちは、実際に復活をその目で見るまでは、神官さんの言葉を鵜呑みにはできないのだ。
とはいえ、いつ死人が出るかも分からないまま待つのは退屈だ。暇を持て余した俺たちは、アイテムボックスから『魔導書』を取り出し、静かに読書に勤しんでいた。
『AWO』における魔法は、魔導書を読むことで、習得できるシステムになっている。古参プレイヤーである俺たちは、店売りの魔導書はとうの昔にすべて読み終えていた。
今読んでいるのは、クエストの報酬やダンジョンの宝箱、あるいはモンスターのレアドロップとして手に入れたものの、「後で読もう」とアイテムボックスの肥やしになっていた未読の魔導書たちだ。
「あ、俺この魔導書すでに読んでたわ。テツ、『トリプル・シールド』ダブってるけど要るか?」
「おっ、いいな。『フラッシュⅡ』と交換でいいか?」
「OK! シュウはなんか要るか?」
「風属性が手薄だから何か欲しいんだが……お、この『エア・ビッグボム』貰っていいか?」
神聖な祈りの場で、まるで休日のトレーディングカード交換会のようなノリで魔導書をトレードし、俺たちは着々と使える魔法のストックを増やしていった。
そして、昼を少し過ぎた頃――ついに『その時』が訪れた。
教会の奥、祭壇の前に描かれた巨大な魔法陣が、突如としてまばゆい光を放ったのだ。
俺たちが無言で立ち上がり、目を凝らすと、光が収まった陣の中心に、ボロボロに破損した装備を身につけた若いプレイヤーが倒れ込んでいた。
「ひっ、あぁぁあっ! 痛い、痛いぃぃっ! 喰われた、俺の腕がっ!」
若者は錯乱したように自分の腕や腹をベタベタと触り、やがて五体満足であることを確認すると、そのまま祭壇の床に突っ伏してボロボロと泣き始めた。どうやら街の外へ出てモンスターに挑み、生きたまま喰い殺されたらしい。
「…………どうやら、本当に復活するみたいだな」
一部始終を観察していたテツが、ひどく冷静な声で呟いた。
「あぁ。だが……」と、シュウが引きつった顔で泣き崩れる若者を見つめる。「復活するからセーフってわけじゃないぞ。死ぬ時の強烈な痛みや恐怖は、しっかり『リアル』に味わうってことだ。あんなの、俺は絶対にごめんだ」
「同感だ。安全圏からザコだけをチクチク狩るスタイルで行こう」
『死んでも生き返る』という事実と、『それでも絶対に死にたくない』という固い決意を胸に刻み、俺たちは静かに教会を後にした。
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7:00・12:00・18:00に投稿予定。




